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日本昔ばなしは異常犯罪の記録!?現代の妖怪ハンター『てっぺんぐらりん~日本昔ばなし犯罪捜査~』

始まりは、1件の猟奇殺人事件でした。20歳の女子大生が殺され、バラバラに切断された身体の部位が部屋のあちこちに隠されていたのです。

新人刑事の桃生(ものう)は、立て続けに起こる非人道的な事件に違和感を感じ始めます。真相解明のヒントとして、桃生が藁をもすがる思いで訪ねたのは、「日本昔ばなし」を専攻する大学教授・太郎。彼は、「日本昔ばなし」が異常犯罪の記録であり、相次ぐ凄惨な事件の犯人は「人ならざる者たち」であると言い切ります。

こうして、新米刑事と、異端の大学教授のコンビは「日本昔ばなし」を手掛かりに、プロファイル不可能な異常犯罪を解決していきます。

日本昔ばなし……

皆さんの中で「日本昔ばなし」(編集部注:アニメの『まんが日本昔ばなし』ではなく、日本の昔話のことです。)を知らない方は殆どいないと思います。日本国民は「日本昔ばなし」を、童話やアニメなど様々なメディアで、幼い頃から無意識に刷り込まれてきました。一般に「子供向け」というイメージが定着していますが……ちょっと待ってください!!!

意外に残酷な話が多い、日本昔ばなし

「舌切り雀」とか「かちかち山」とか、残酷な描写が多く、有名な「浦島太郎」に関しても、子供から亀を救った太郎の顛末が老人とか、救いがなさすぎる!!

Wikiで「昔話」を調べてみると……

「むかし」という確かではない時や「あるところに」という不明な場所を発端句として用い、本当にあったかどうかは知らないけれどという心持ちで語り継がれる話。そのため、固有名詞を示さず、描写も最小限度にとどめ、話の信憑性に関する責任を回避した形で語られる。時代や場所をはっきり示さず、登場人物の名前も「爺」「婆」などのように性別や年齢などの特徴をもとにした普通名詞が多い。「桃太郎」も「桃から生まれた長男」の意味しか持たない。(Wikipediaより)

この「話の信憑性に関する責任を回避した形で語られる」という言い回しが良いですね。

少し前に「グリム童話」の残酷性が話題になりましたが、不特定の口伝によって受け継がれた伝承・民話の中には、何か不思議なリアリティがあります。

諸星大二郎氏や大塚英志氏の系譜を継ぐ作品

民話や伝承に端を発する異常な事件を、知識を武器に解決する作品の数々。興味を持った方は、ぜひこちらも読んでみて下さい。もしくはこれらの作品が好きな方に本書『てっぺんぐらりん~日本昔ばなし犯罪捜査~』はおすすめです!

『妖怪ハンター』(諸星大二郎/集英社)


『北神伝綺』 (大塚 英志、森 美夏/角川書店)


『宗像教授異考録』 (星野之宣/小学館)

最後にタイトルの「てっぺんぐらりん」ですが、昔ばなしの結句(けっく)として、「とどのつまり、あげくのはて、結局」のように文章の結びに使われる言葉だそうです。

……てっぺんぐらりん。

WRITTEN by 新里 裕人
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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