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猫のせいで人類絶滅!? 天国のような地獄を前に、猫好きの真価が問われる問題作『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』

【レビュアー/新里裕人

猫大好きにもかかわらず、事情により猫を飼えない人は全世界に大勢いる事と思います。

そういった人たちは、私のようにYoutubeの猫動画を観たり、猫エッセイや猫漫画を読んだりしながら日々満たされない猫への愛を補完しているわけです。

この前、『八日目の蝉』等で有名な作家、角田光代先生の猫エッセイを読んでたら「寝ている飼い猫のおなかや背中から、何か異様な快楽物質が放たれていて、そこに顔を押し付けるとホワーっとなる」みたいな事が書かれていて、猫の魅力は確実に人間の何かをダメにしていくんだなあと改めて感じました……いや、いい意味で。

さて、本作はそんな猫の魅力によって絶滅の危機を迎える人間たちの極限状態を描くパニックホラーです。

きっかけは某猫食品精製会社で起きた爆発事故。

ここから、あるウイルスに感染した猫たちが脱走します。

そのウイルスとは……「接触した人間を猫に変える」という恐ろしいものだったのです!!

ウイルスは瞬く間に人々に感染し、世界的なパンデミックが発生します。

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『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』(ホークマン/メカルーツ/マッグガーデン)より引用

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『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』(ホークマン/メカルーツ/マッグガーデン)より引用

あああ……何と恐ろしい!!

タイトルでわかる通り、本作は有名な某ゾンビ映画のパロディなので、主人公たちは襲い来る猫の大群をかわし、次々と仲間が犠牲になりながら脱出する、パニックホラー展開をたどるわけですが、

その一方で

・骨格がないかのような柔軟さで狭い穴からずるりと入ってくる様子
・外から窓をひっかく「入れて」のサイン
・水を嫌う猫の性質を利用した猫の撃退

 等々…ちょいちょいと猫好きが反応するネタが織り込まれているのが楽しいです。

その後も、進撃する猫の大群を食い止めるため、暴徒鎮圧用の武装に身を固めた特殊部隊が繰り出されます。

彼らは水の入ったペットボトルを並べたり、猫よけのとげとげシート(プラ製)を敷き詰めたりしますが、簡単に突破され(これも猫あるある)次々と猫にされていきます。

この作品の素晴らしいのは、登場人物の中にただ一人も猫に対して「車でひき殺す」とか「銃で撃ち殺す」といった行動を取らない点です。

まず前提として猫は可愛い。

傷つけることなど思いもよらない、という作者たちのネコ愛が世界観全てにいきわたっているわけです。

(マスク越しに)顔に飛びつかれた猫を、丁寧に引きはがしそっと地面に置く主人公も好きですね。

もうわかったと思いますが、本作はパニックホラーの文法で描かれた「ネコ大好き」漫画です!

ネコ好きの方は本書を読んで、自分が本当に猫が好きなのか?猫になりたいのか?

一度考えていただくのも良いかもしれません。