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【男子校あるある】授業中に少女漫画読むの流行ったよね?『彼氏彼女の事情』

これは男子校あるあるかなって思うんですが、何故か男子校では授業中に少女漫画を回し読みするのが一時期流行りますよね

最初はジャンプやマガジンの回し読みから始まって、『疾風伝説 特攻の拓』とか『ろくでなしブルース』と言ったいかにも男子校が好きそうな漫画が一通り流行って、その後に何故か必ず来る少女漫画ブーム。

だ・け・ど気になる『ママレードボーイ』やステキに無敵なリラックス『こどものおもちゃ』などの少女漫画、男子校のみなさんは勿論読みましたよね!?(調べてみて分かったんですが、「ウルトラリラックス」って石野卓球が作詞作曲していたんですね!)

男子校出身者に少女漫画好きが多いのはこの授業中に読んだ漫画は何故か3倍増しで面白いと言う思い出補正が入っているからだと思います。初めて触れる甘いドキドキ。ただ『ママレードボーイ』の設定は今考えるといくらなんでも無理ありますね。ダブル離婚&ダブル再婚って「昼顔」も真っ青の展開ですよ。

話を戻すと、王道漫画→少女漫画→王道漫画のループ&ループこそが男子高校生の日常なのですが、今回はその中でもひときわ輝きを放つ名作中の名作『彼氏彼女の事情』を紹介したいと思います。

はじめましての人もそうでない人もこんにちは!

少女漫画大好きっこ35歳、ナンバーナインの小林です。

王道にして異端な作品

恋愛漫画と言う性質上、長くても10巻前後で終わる事の多い少女漫画の中で『彼氏彼女の事情』は全21巻と言う異例の長編作品になっています。

これはこの作品が少女漫画の王道である「ラブコメ」に重きを置いた話と少女漫画の中では異端となる「心の闇」に重きを置いた話の2部構成になっているからです。1~9巻くらいまではまさに少女漫画の王道であるラブコメが楽しめます。

仮面優等生の宮沢雪野と完璧人間の有馬総一郎。そして周りを固める個性豊かなキャラクター達の文字通り彼氏彼女の事情が楽しめます。このラブコメパートはラブコメパートで非常に面白いのですが、『彼氏彼女の事情』がその本領を発揮するのは10巻以降に延々と続く完璧人間、有馬総一郎の心の闇なのです。

9巻までのラブコメがほのぼのしていた分、それまで微笑ましく宮沢と有馬のバカップルを見守ってきた分、その反動にやられます。普段完璧人間として優等生を演じていたからこそ、いや宮沢と付き合った事で完璧人間以上の完璧超人(パーフェクト超人)となってしまったが故に生まれた大きな闇。この「心の闇」を最後までしっかりと描ききり、見事なまでのハッピーエンドで終わらせた『彼氏彼女の事情』はまさに後世に語り継ぐ少女漫画の名作中の名作なのです!!

実際に上演する演劇部もあるほどの完成度である劇中劇「鋼の雪」

『彼氏彼女の事情』は前述の通りラブコメパートと心の闇パートの2部構成にハッキリと分かれています。この「ラブコメ」と「心の闇」を隔てる分水嶺になっているのが作中で宮沢が文化祭で演じた「鋼の雪」と言う劇中劇なのです。

若き天才科学者と古いアンドロイド、そして突如現れた最新型の完璧なアンドロイドの3人が織り出す救済の物語。

「創造物より劣る創造主」

「完璧につくられたが故の苦しみ」

自分は何のために存在するのか?

単行本丸々1巻分を使って表現したこの劇中劇があったからこそ、『彼氏彼女の事情』の異なる2部構成は見事にバトンタッチが出来たのだと思います。

この「鋼の雪」という劇中劇だけでも非常に完成度が高いので、まだ『彼氏彼女の事情』を読んだ事がない人は読み切り感覚でまず読んでみるのも良いかもしれません。(単行本9巻に収録されています。)

最後に

もし仮に、漫画や小説、映画などのエンターテイメント作品に教育的な要素を見出すとするならば、その時に出会わなくてはいけない作品があると僕は考えています。

参考レビュー:人生を変えた魂の一冊 『G戦場ヘヴンズドア』を読んで起業した社長の告白。

授業中に読んだ漫画は何故か3倍増しで面白い。それはその時、そう、授業中に読まなくてはいけない作品だったんです!最近は消費される漫画が増えていますが、僕は『彼氏彼女の事情』の様な「その時」を限定する、時間つぶしに読むのではなく、作品を読むために時間を作る必要がある作品が大好きです。

大切な事は全て漫画から教わりました。

時にはゆっくり漫画を読む時間を増やしてみませんか?

WRITTEN by 小林 琢磨
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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