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校内SEX中の教室に足を踏み入れた教師はこう言った『ここは今から倫理です。』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/新里裕人

突然ですが、私はかつて某大学の哲学科を卒業しました。

何故「哲学科」なのかというと、付属高校からの繰り上がりの際、(点数的に)他の選択肢がなかったからです。

成り行き的に通いはじめた私に向学のモチベーションがあるわけもなく「哲学」関連の授業についても単位を取るためにおざなりに出席していた記憶しかありません。

当時の私にとって倫理や哲学は「とらえどころのない」学問だったように思います。

『ここは今から倫理です。』は高校の倫理授業を担当する高柳先生を主人公にした漫画です。

※こちらから1話試し読みできます
http://www.s-manga.net/book/978-4-08-890791-8.html

彼は授業を始める前にこんな挨拶をします。

――倫理は―― 学ばなくても将来 困る事はほぼない学問です。
地理や歴史の様に生活する上で触れる事は多くないし
数学の様な汎用性も
英語の様な実用性もありません
この授業で得た知識が役に立つ仕事は ほぼ無い
この知識が
よく役に立つ場面があるとすれば
死が近づいた時とか

……いや、引くよこの挨拶!!

作者が何を意図したかわからないけれど、主人公の高柳には不思議な存在感があります。

端正な顔立ちながら、死んだように覇気のない眼。

無表情、そして立ちポーズは奇妙に色っぽい。(腰が)

そんな彼が、様々な悩みを抱えた生徒たちと交流しながら「倫理」を通じて、それらを解決していくわけです。

一話では目的もなく男遊びに耽るヤンキー少女に教養への興味を与え

二話では他人を見下す少女と男に裏切られて絶望した少女に希望を

三話では教師に過度な理想を抱く少年に新たな視点を気づかせます

この漫画を読んだからといって哲学的な真理が見えてくるわけではありませんが、学生時代に通過してきた道徳や倫理といった「とりとめのない」学問を思い起こすきっかけにはなると思います。

何よりこの主人公がかもし出す不思議な魅力に触れて欲しい。

また、倫理の時間に会いましょう。