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実は私も参加してきました。ドエム人間しか参加しないアイアンマンレースの過酷すぎる物語『10月の満月に一番近い土曜日』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

ご存知の方もいると思うが、私はここ2,3年ほどトライアスロンをしている。

長野県への長期出張で体重が大幅に減ったのでそれを維持する目的の一つでレースがあったほうが目標ができていいのでレースに参加している。

安直な理由なのだが既に6回もレースに出場していて、ついにアイアンマンレースという完走する事も困難なレースに出場することになってしまった。

現在のようなスタイルのトライアスロンの発祥の地はハワイ島のコナと言われている。

体力自慢のハワイのアメリカ海兵隊員が始めたものらしい。なんでも遠泳と長距離自転車ロードレースとフルマラソンのどれが一番過酷かを議論していたら「だったら全部一緒にやればいいじゃないか」ってことで始まったということだ。なんともザックリとしたはじまり方だ。

そう、私がやっていたトライアスロンというのはトライアスロンの世界ではショート、あるいはオリンピックディスタンスというカテゴリの競技で、アイアンマンは距離がとても長いのである。

そんなトライアスロンの日本での草創期に描かれた漫画がこの『10月の満月に一番近い土曜日』である。

1994年初版発行で、実はこの漫画、連載中に読んだ記憶がおぼろげながらあった。改めて読んでみたのだが当時はまだウェットスーツで泳ぐのもメジャーではなかったようだ。そんな描写が出てくる。

今では世界40箇所以上で行われ、世界ランク上位者以外は、抽選か高額の寄付、あるいは特別な理由がないと参加できないのが世界最高峰のハワイ島コナのアイアンマンレースだが、当時はわりかし参加基準も緩かったようだ。

実際のアイアンマンレースは、壮絶な人生ドラマの集大成で、中には脳性麻痺の息子のためにゴムボートで曳航し、特注の車椅子付きロードレーサー、そして最後は車椅子を引っ張る初老のお父さんなど、見ていて思わず涙ぐむようなエピソードもある。

そんなアイアンマンレースは、世界一過酷なレースで、この作品でも、そこで起こる様々な人間ドラマが描かれ、感動のドラマが目白押し。読んだらアイアンマンレースに挑戦したくなるだろう(ん?ならない?)。

私も初挑戦のレース、途中で腰や首が我慢できないくらい痛くなったり二回も吐いたが、なんとか14時間20分で完走した。トライアスロンを描いた漫画は残念ながらこれくらいしかないのだが、これから盛り上がってくることを期待したい。