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バッシングは嫉妬と羨望の裏返し?不倫が無くならない理由を2つの漫画から考えてみる(前編)『あなたがしてくれなくても』

もはや一大ジャンルとなった不倫漫画

いやー、もう別に誰がとかは言いませんが、連日平日真っ昼間から夜のニュース、ネットニュースやSNSトレンドにいたるまで、不倫の話が大盛り上がりですね。

ちなみに僕は肯定も否定も別にここで語るつもりはないですし、あくまでふと感じたことを垂れ流してるだけなんで議論したいとかも思ってはいませんが、個人的な感想としては「知らない人が不倫した話、なんでみんなそんなに好きなの?」と思うんですよね。

家族や有名人ってイメージが大事だから、出演している番組やスポンサーなど直接的にダメージを受ける人たちに対しては全力で謝罪と賠償もしないといけません。でも、それ以外の人にははっきり言ってなんの関係もないのに、まるで鬼の首を取ったかのように大バッシング祭を始める。

繰り返しますが、別にやった本人たちを養護するつもりなんて1ミリもありません。それでも、毎回繰り広げられるお祭り騒ぎを見ていると、みんなそんなに清廉潔白な生き方してるのかなぁ、なんて思っちゃうんですよ。

え?なんでそう思うのかって?

だって、世の中には不倫をテーマにした作品が溢れるほど存在していて、どれもびっくりするほど売れるんですもの(笑)。

映画やドラマ、音楽、演劇、文学、もちろん漫画にいたるまで、不倫を扱った作品が星の数ほどあるのは言わずもがな。じゃあ、なんでそんなに人気のジャンルなんだろうって考えれば、まあ普通は人気が出る作品ってそれだけ多くの人に強い共感を感じさせたり、憧れや夢(妄想?)を代わりに実現してくれるものだからですよね。つまり、不倫願望ってのがそれだけ広く深く強く存在してるからなんだろうなぁと思うワケです。

でも、一方でそれがバレた途端に世間に溢れるのは、「あーわかるわー」ではなくて「けしからん!」「不潔よ!」的な大バッシングなワケで、ということはやっちゃいけないとはわかっているけど、心の中では願望はある、ということなんじゃないかなと。

『あなたがしてくれなくても』が描く、不倫女性が本当に欲しいもの

別に誰もが悪いことをしているというスリルを求めて不倫に走るってことはないでしょうし、むしろそういう人って少数派なんじゃないかなと思います。

じゃあなんでみんなそんなに不倫するの?って考えてみた時に、ちょうど不倫をテーマにした二つの作品があまりにも真逆なことを僕に教えてくれたので、皆さんにも是非ご紹介をしたいと思います。

まず最初の作品は、ハルノ晴先生が描く『あなたがしてくれなくても』。

別に仲が悪いわけではないのにセックスレスに悩む夫婦を軸に、夫は他の女性と体を重ねたり、妻は同じくセックスレスに悩む別の男性に惹かれたり、それらを乗り越えながらまたお互いに夫婦関係を立て直そうと努力したり、でもなかなかうまくいかず……といったお話です。

不倫をテーマにしているというよりは夫婦関係とセックスレスの問題について、女性・男性両方の視点から苦しさ、悲しさ、喜びをとても繊細に描くことで強い共感を得ている名作です。

まだ連載継続中なのでこれからどういった展開が待っているかは分かりませんが、独身とは違う夫婦という関係になった時に生まれる歪みやすれ違いがどれだけの不安を生むのか。そして、人はそんな心の隙間を埋めるために癒やしや安らぎ、トキメキなんかを求めてしまうんだということがこの漫画を読むととてもよくわかります。

この漫画は圧倒的に女性からの支持が厚いです。ということは、多くの女性が求めているのは、まずは何よりも心の部分であって、それを満たす上でセックスという行為も重要な要素を占める、ということなのかなと予想できます。
※ここで男性・女性と表現しているのは、あくまで購買ユーザーの登録性別から見た予想です

夫婦という形が縛ってしまうもの

極端な話、独身同士の恋愛なら好きなら付き合う、好きじゃなくなったら別れる、付き合うまでいかなくても親友になる、体の相性が非常に合うからセックスだけはするなど、どんな関係でも自由です。

しかし、結婚して夫婦という関係になると、そういった自由がなくなってしまうのが一般的です。なんとか夫婦間でお互いの問題を解消しないといけなくなって、でもそれが叶わなくなった時に不倫という選択肢が出てきてしまうんだろうなと思うと、セックスレスや不倫をテーマにした作品がこれだけ多く生まれる理由もよくわかります。

『あなたがしてくれなくても』に登場する人たちは、心に空いた穴やそこに渦巻く不安から、してはいけないとわかっていてもそれを埋めてくれる人に惹かれ、苦しんでいるんだと思うんです。別に、誰も不倫をしたくてしているわけではないんですよね。

こと人間関係の中でも、恋愛関係で生まれる不安って、相手への想いが強ければ強いほど空いてしまう穴も大きくなってしまいますからね。

こうした苦しみは、結婚はしていなくても恋をした経験がある人なら、誰もが共感できるんじゃないでしょうか?

少なくとも僕はすっかりのめり込んでしまって、早く続きが読みたくて仕方ありません(笑)。

皆さんはどうですか?

もしまだ読んだことがないようでしたら、是非読んで感想を聞かせていただきたいです。

(後編へ続く)

WRITTEN by 南川 祐一郎
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