大切な人がいるあなたに読んでほしい、ゲイカップル・シロさんとケンジのパートナーとの向き合い方『きのう何食べた?』
【レビュアー/本村もも】
こんにちは。ついに2021年11月3日に『きのう何食べた?』の映画が公開されましたね! 大きなスクリーンでシロさん&ケンジカップルが拝めるのは幸せでしかありません! ということで、今日は『きのう何食べた?』のドラマと原作の魅力をご紹介したいと思います。
ファンの期待に本気で応えたテレビ東京
『きのう何食べた?』は弁護士のシロさんこと筧史朗と、美容師のケンジこと矢吹賢二カップルの日常を、シロさんの手料理(たまにケンジの手料理)を通じて描く大人気の漫画です。
ファンの間では長年実写ドラマ化が熱望されていた作品で、ネットではさまざまな妄想キャスティングが展開されていました。
そして2019年、ついにドラマ化が決まりキャスティングが発表された際、シロさんが西島秀俊さんというイメージが湧きましたが、正直内野聖陽さんのケンジは、「ちょっとワイルドすぎないか?」と私は思っていました。
たぶん同じことを思ったファンの方も多かったのではと思いますが、その心配は見事に覆されました。
原作のケンジの醸し出すフェミニンな雰囲気を、ヘタをするとただのオネエになってしまうところを、表情・動き・話し方、すべてを使ってケンジを表現し、ゴツゴツのはずの内野さんが、とても柔らかい線に見える。原作を読み込んで、入念な打ち合わせをして、役作りに臨んでくださったことが伝わりました。いまでは内野聖陽さん以外のケンジは考えられません。
さらにメイン以外のキャスティングについても、テレビ東京の深夜枠とは思えない豪華キャスティングによって、ものすごい原作再現がなされています。
見た目が似ている俳優さんはもちろん、ケンジのように俳優さんの元のイメージだけだとピンとこない俳優さんも、しっかり原作を研究し応えてくれている。(小日向さん役の山本耕史さんは、誰も予想しなかったキャスティングだと思いますが最高でした。)
製作側の原作ファンの期待に本気で応える気概を感じ、ドラマは全編通して「ありがとう」という気持ちでいっぱいになりながら視聴していました。
シロさんとケンジとともに時の流れをあじわう
「ドラマは見たことあるけど、原作はまだ」という方に向けて、原作の魅力も少しお話ししたいと思います。
原作の中では、ほぼリアルタイムで時が流れるため、連載当初は40代前半だった二人も、現在は50代半ばに。年齢とともに悩みが変わりながらも、二人の関係性が成熟していく様子が、繊細に描かれています。
『きのう何食べた?』は、ゲイのカップルならではの悩みも多く題材にされています。たとえば、弁護士であるシロさんは、同性愛者であることを職場に隠していること、親に同性愛を理解をしてもらいたいけれど強要もしたくないこと、子どもを持てないこと、正式な形での結婚ができないこと。
決して小さくない様々な悩みに、二人は真剣に向き合いながらも、お互いの気持ちや、周りの人の気持ちを大切にしながら、ときには時間の流れに任せるという選択をして、毎日美味しい料理を食べながら日常を過ごしていきます。
そして物語が流れていくの中で、あるときふと、またその問題に向き合うといつのまにか問題が小さくなっていたりする。
リアルタイムで新刊を買って読んでいる読者からすると、同じ時の流れを過ごしながら、二人の変化を感じられる。シロさんとケンジと同じ時を過ごすことで、さらに二人を好きになる。
二人の関係性が成熟していくことで、乗り越えられない壁がどんどんなくなり、最強カップルになりつつあるシロさんとケンジによって、最近の『きのう何食べた?』は巻を増すごとに読み終わった後の幸福感がUPしていて、目が離せません。
『きのう何食べた?』はゲイのカップルに限らない、人生でどうにもならないこととの向き合い方、パートナーとの向き合い方を教えてくれる、大切な人に読んで欲しい一冊だと思います。