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韓流ドラマ好き必読。東村アキコの描く、20年越しの両思いと衝撃展開の恋愛漫画『私のことを憶えていますか』

【レビュアー/こやま淳子

この展開は、韓流? 東村アキコ流?

子どもの頃、自分を好きでいてくれた人と、20年ぶりに再会したとき、相手との「格差」を感じてしまったら?

これは、そんな恐ろしいテーマの話である。

小学校のとき告白され、両想いだと知った途端、そのまま引っ越してしまった「こうちゃん」。その後、30歳になったヒロイン・遙は、人気芸能人・SORAが、こうちゃんにそっくりだということに気づく。そのとき遙は、前髪を文房具クリップで止めるような非おしゃれ女子。仕事は毎晩徹夜続きで、芸能人にとってにっくき存在であるに違いない、ゴシップライターになっていた。

最初1巻が出た頃は、「うーん、変わった設定の話だな」くらいの感想だったが、気づけば6巻まで出ていたので、久しぶりに読んでみたら、ものすごくおもしろい展開になっていた。

はたしてSORAはこうちゃんなのか? だとしても遥のことを憶えているのか? なぜあのときこうちゃんは引っ越したのか? 恋愛ストーリーにミステリー要素も入って、ついつい先が気になってしまう。なんだろう、この感じ。

あ、韓流ドラマだ。

ありえない展開もあるのに、先が気になり、ぐいぐい惹きつけられてしまう感じは、韓流ドラマのそれに近い。

それは、この作品が日韓同時配信していたり、作者の東村アキコ先生が最近韓流ドラマにハマっていたということもあるのだろうか。

ドキドキとグサグサが入り乱れる人生訓ラブストーリー

しかしこの物語の核心は、やはり東村アキコ先生ならではの心にグサグサくる「人生訓」が詰まっているところだろう。恋愛に自信が持てないことと、仕事に誇りを持てないことはつながっている。昔、正義感にあふれていた少女は、いまは会社の方針に意見も言えない大人になってしまった。

私は あなたとは
あまりにも釣り合わない人間になってしまった
それなりに頑張ってきたし
努力もしてきた
でも今の世の中それじゃ
足りないんだろう
高校の担任の先生が言ってた
大事な時に日常が出るって 
大人になっても大事な日はこうして突然やってきて
本当の私があぶり出される

ハッとするようなフレーズが散りばめられていて、読みながら自分もグサグサする。と同時に上述したような「そんなバカな!」なドキドキ展開も満載なところが、さすがは東村アキコ先生。ドキドキとグサグサが交互にやってきて、ページを次々めくってしまう。

幼い頃の淡い想いと、現実とのギャップ。遙、SORA、猫作の三角関係(?)を中心に、わちゃわちゃと味わい深いキャラが出てきて引っ掻きまわし(特に会社の先輩のずんこさんがツボにハマる濃さ)、一方で韓流チックなミステリー展開もじわじわと進行し、どうにもこうにも先が読めない。気づけば次の巻が早く出ることを待ち侘びてしまう日々なのである。