見出し画像

聖杯戦争なきFateの新天地『氷室の天地 Fate/school life』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/澤村晋作】

目がなぜ真っ直ぐ前を向いているかご存じですか?

はい、もちろん眼鏡がかけやすいからですね。

そこで頷いているメガネストの皆様に昨年放送された『Fate/Grand Order』の年末特番の中でアニメ化もされた『氷室の天地 Fate/school life』を紹介したいと思います。

本書は、PCゲーム『Fate/stay night』より派生して誕生した作品です。

『Fate』の骨子は、現代に召喚された歴史上の英霊たちと共に、万能の願望器である聖杯を巡って殺し合う、いわゆる聖杯戦争を舞台にした魔術師たちの戦いです。ですが本作は聖杯戦争とはあんまり関係ありません。

ではどういう話かと言いますと『Fate/stay night』本編にほんの一瞬登場した三人娘たちのスクールライフをコメディタッチで描く物語です。

その三人娘を紹介するぜ!

メガネの知性派うっかりキャラ、「穂群原の呉学人」氷室鐘!
ブレーキの壊れた暴走機関車、「穂群の黒豹」蒔寺楓!
昭和は彼女が完成させた! 「みんなのお母さん」三枝由紀香!
文武両道でクールビューティ、「完武」美綴綾子!
『Fate/Prototype』主人公、「まさかのときのスペイン宗教裁判!」沙条綾香!

え? 三人以上いる?

大丈夫。本作中でも四天王が五人出ますし。

むしろ、『Fate/stay night』のヒロインの一人、遠坂凛を含めてもOKです。

今回は、その中でも主人公の氷室鐘について、ピックアップしてご紹介。彼女は、穂群原高校に通う、メガネが似合うごく普通の女子高生です。ごく普通というのは魔術の世界を知らない一般人という意味で、性格はなかなか個性的です。あとメガネが素敵。

古風な口調に冷静な思考に深い知識にシックなメガネと、軍師ポジションを自認するにふさわしい風格なのですが、その思い込みの激しさと、大事な場面でのうっかりミスで、必勝を期した策は思いもよらぬ方向へ転がっていき、抱腹絶倒のハチャメチャを巻き起こしてくれます。

そんな氷室を筆頭に個性豊かな少女たちが、時にアナログゲームに興じたり、時にドラム缶に入って川を流されたり、時に長野に旅行に行ってみたり、時にマグロを投げてワカメに当てたり、時に市民マラソン大会に出てみたり時に高い女子力を目にして灰になるなど、命のやりとりでおなじみの聖杯戦争とは異なる和気あいあいとした日常が描かれます。

英霊≒偉人

さて、そんな本作ですが、基本的に英霊は登場しません。ですが、代わりに偉人が登場します。

この偉人達は「僕の考えた最強偉人大募集」という読者投稿企画から選ばれているのですが、最強かどうかよりインパクトに振り切った偉人もカンブリア大爆発の如く参戦しています。

そんな中で、「ほんとに最強なんじゃないか」と言われているのがプラトンです。

哲学者として教科書にも出ているほどの偉人がなぜ最強なのかは、その目で確かめて欲しい……!!

このように「魔術師+英霊」の『Fate』シリーズとは一味違う「女子高生+偉人+メガネ」の本作は、『Fate』シリーズのファンはもちろん、全然知らなくても大丈夫ですので、ぜひぜひ、みなさん読んで頂きたい作品です。

読み終わった頃には、今度出る氷室モデルのメガネをきっと身にまとっているかと思います。みんなで一緒にひむろめいていきましょう!

なお、紹介は以上となりますが、以下は本書をすでに読まれた方向けの
個人的な告白となります。

告白と言いますか、自白です。

『氷室の天地 Fate/school life』11巻をすでに持っている、もしくは新たにご購入いただけた方は#132「世界偉人伝説!」をご覧ください。「有名になりたいから」という理由だけで歴史的やらかしをしたヘロストラトスのところです。

「この偉人は澤村さん(福岡県)の投稿を採用させていただきました」と書いてありますね。

送ったのが僕ですまない……。

「第三回・僕の考えた最強偉人大募集」では募集告知には「ゲーム上での能力・使い勝手を意識した性能も明記されていれば有利かも」という説明があったため、

「たまたまワイの得意分野やん!」

とサイコパス的な思考で応募したものです。

実際、送るかどうかギリギリまで迷いましたが、過去の採用者に、「成田良悟」、「桜井光」といった先生何やってるんですかシリーズを見つけたので送ることにしました。

そんなわけで、各分野のプロたちまでも参加したくてしょうがなくなるくらい、楽しい漫画です。「僕の考えた最強偉人大募集」が再び発表された暁には、みんなで応募して、僕と共犯者になりましょう!


この記事が参加している募集

読書感想文