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ホテルのロイヤリティ・プログラムについて

みなさんはホテルのロイヤリティプログラムは知っていますか?もしくはもう入会されていますか?

航空会社の顧客囲い込みの仕組みとしてFFP(Frequent Flyers Program)というロイヤリティ・プログラムあるようにホテルにおいてもロイヤリティプログラムがあります。FSP(Frequent Stayers Program)とも言われていて、無料で入会できます。

ホテルのロイヤリティプログラムは、ビジネスやホテルを頻繁に利用する人々を対象に、特定のホテルブランドやグループを利用してもらえるように各ホテルグループ/チェーンが作り上げているプログラムで、ホテルのマーケティング戦略のひとつです。

顧客に製品やサービスを繰り返し購入してもらうには、明確な動機付けが必要です。顧客のロイヤルティを育むために、リピーターの顧客に対して特別な割引を行っている企業もあります。

ホテルはこのロイヤリティプログラムを通じて、ゲストの体験を向上させることができるとともに、他のホテルグループのよりも自社ホテルのブランドを選好してもらうための差別化を計っています。

また顧客と長期的な関係を築き、リピート率、CLV(顧客生涯価値)の向上させようとしています。


ロイヤリティ・プログラムの定義

アカデミックな視点から、一般的なロイヤリティ・プログラムの定義を見てみると、以下のようです。

ロイヤリティ・プログラム(LP)とは,有形(割引,クーポン,お祝いカードやギフトなど),または,無形(会員ランクによるサービスレベルの違い,ステータス,情報,専用サポート窓口対応など)の報酬(インセンティブ)を通じて,顧客に経済的・心理的(感情的)・社会的な価値やベネフィットを提供し,ブランドや企業に対する消費者の態度や行動に正(プラス)の影響を与え,高い収益性を持つ(ロイヤルティの高い)顧客との長期的な関係を築き,長期的に企業の業績を向上させるためのマーケティング施策であり,投資である。

- Henderson, C. M., Beck, J. T., & Palmatier, R W.(2011). Review of the theoretical underpinnings of loyalty programs, Journal of Consumer Psychology, 21(3), 256-76. doi: 10.1016/j.jcps.2011.02.007.
- Chaudhuri, M., Voorhees, C. M., & Beck, J. M.(2019). The effects of loyalty program introduction and design on short- and long-term sales and gross profits. Journal of the Academy of Marketing Science, 47(4), 640-58. doi: 10.1007/s11747-019-00652-y.
- Chen, Y., Mandler, T., & Meyer-Waarden, L.(2021). Three decades of research on loyalty programs: a literature review and future research agenda. Journal of Business Research, 124(November 2020), 179-97. doi: 10.1016/j.jbusres.2020.11.057.
- Kim, J. J., Steinhoff, L., & Palmatier, R. W.(2021). An emerging theory of loyalty program dynamics, Journalof the Academy of Marketing Science, 49(1), 71-95. doi: 10.1007/s11747-020-00719-1.

Accentureによると、90%以上の企業が何らかのロイヤルティプログラムを導入していると言われています。

ロイヤリティ・プログラムの種類

ロイヤリティ・プログラムと言っても以下のように様々な種類があります。

1 ポイントプログラム

ロイヤルティプログラムの中で、最も一般的なのがこのポイントプログラムです。ポイントは貯めるのも交換するのも簡単なので、使い勝手が良いのが特長です。ポイントは次回購入時の支払い額の一部に充てられるほか、割引や景品交換に利用できる場合もあります。

ポイントプログラムは非常に多くの企業が導入しているため、顧客にとって馴染みやすく、仕組みを理解しているので、使い方に迷うことがありません。

2 会員ランクプログラム

会員ランクプログラムの基本の考え方は通常のポイントプログラムと同じで、顧客は購入のたびにポイントをためていきます。会員ランクプログラムには、ロールプレイングゲームのような要素があるのが特徴です。一定の購入額を超えると、顧客のランクがレベルアップし、さらに良いメリットや特典が得られるという仕組みです。

会員ランクプログラムは、会員ランクの低い顧客のモチベーションを上げ、もっと購入額を増やしてレベルアップしようという気持ちを高めることができます。特典に特別感があるほど、顧客への期待感も高まります。

3 ミッション主導型プログラム

企業が強い社会的なミッションを持つ場合には、そのミッションや意義に沿ったロイヤリティプログラムを構築し、自社の企業価値と社会価値を両立させると、顧客の支持を得やすくなり、リピート購入を促すことができます。

4 購入額ベースプログラム

購入額ベースプログラムは、購入額の多い顧客への返礼として最適です。とりわけ航空業界では、ポイントプログラムから購入額ベースプログラムへの移行が目立っています。フライトを頻繁に利用し、より割高な航空券を購入してくれる顧客を優遇でます。

5 ゲーミングプログラム

ゲーミングプログラムの特長は、買い物というありふれた行為にエンターテインメントの要素を取り入れているところです。この種類のプログラムには、ルーレットのような簡単なゲームが組み込まれており、顧客はルーレットを回して賞品を獲得します。賞品は、顧客が製品やサービスを購入した際に提供される割引や無料の景品が多いです。

6 無料特典プログラム

無料特典プログラムでは、優良顧客に製品やサービスを無償で提供します。多くの無料特典プログラムでは、購入者はポイントを無料の食品や無料の化粧品サンプルなどと交換できます。

7 サブスクリプションプログラム

プレミアムロイヤルティプログラムとも呼ばれるサブスクリプションプログラムは、顧客が定期購入を申し込んで製品やサービスの料金を前払いし、その見返りとして報酬を受け取るものです。これらの報酬は、次回以降の購入時に交換または使用できます。

8 コミュニティプログラム

コミュニティロイヤルティプログラムは、顧客エンゲージメントを促進し、既存のロイヤルティプログラムから発展させることができます。たとえば、Sephoraというの化粧品や香水を販売する国際的なブランドでは、ロイヤルティプログラム内にオンラインクラブやグループの仕組みを導入しました。この種類のプログラムを導入しているブランドでは、顧客が質問を投稿したり、製品を着用した写真を共有したり、互いに交流したりすることができます。

9 友人紹介プログラム

友人紹介プログラムは、友人や家族を紹介してくれた顧客に特典を提供します。この種のプログラムは、優良顧客をブランドの熱心なファンへと転換させるのに効果的です。

友人紹介プログラムでは、顧客が貴社のために仕事をしてくれるため、貴社の顧客獲得コストを削減できるかもしれません。

10 有料プログラム

有料プログラムでは、顧客はロイヤルティ特典のために料金を支払うことを求められ、参加することで即座に継続的な特典を獲得します。たとえば、顧客が月額1,000円の会員に登録すれば、毎月5%割引で買い物ができるようになるような会員特典は、有料プログラムの1つです。

11 キャッシュバックプログラム

キャッシュバックプログラムでは、顧客の支出額から一定の金額を払い戻します。このタイプのプログラムは、金融業界でよく用いられます。

ホテルのロイヤリティ・プログラムの会員特典は何がある?

さて、またホテルのロイヤリティ・プログラムに話を戻します。

外資系ホテルチェーンのロイヤリティ・プログラムの種類ははポイントプログラム、会員ランクプログラム、購入額ベースプログラムの合わせ技であるように思います。

ホテルのロイヤリティ・プログラムは実際にどのような特典があるのでしょうか。

プログラムの会員レベルで特典が大いに変わってきますが、例えば以下のような特典が提供されるかと思います。

  • ポイントでの宿泊/無料宿泊

  • 複数泊のうち1泊目が無料

  • メンバー割引料金

  • お部屋のアップグレード

  • 無料のミニバー

  • ウェルカムアメニティ

  • 無料の朝食

  • ラウンジへのアクセス

  • 無料のWi-Fi

  • レイトチェックアウト

  • アーリーチェックイン

無料で入会できるのに、このような特典が提供されるというのは、頻繁にホテルを利用されるゲストにとってはやはりとてもお得です。

ホテルのロイヤリティプログラムはどんなものがある?

よく見かけるホテルのロイヤリティ・プログラムについてあげてみます。外資系ホテルチェーン、日本系ホテルチェーン、独立系で分けてみました。

外資系ホテルチェーン

  • Marriott Bonvoy | Marriott International

  • Hilton Honors | Hilton

  • World of Hyatt | Hyatt

  • IHG One Rewards | IHG

  • Accor Live Limitless | Accor

  • Fan of MO | Mandarin Oriental

  • Choice Privileges | Choice

  • Best Western Rewards | Best Western

  • Golden Circle | Shangri-La

  • など

日本系ホテルチェーン

  • OneHarmony | オークラニッコー

  • インペリアルクラブ | 帝国ホテル

  • ニューオータニクラブ | ホテルニューオータニ

  • SEIBU PRINCE CLUB | プリンスホテル

  • MGH Rewards Club | 三井ガーデンホテルズ

  • ザ・クラブ・ロイヤルパークホテルズ | ロイヤルパークホテルズ

  • ヴィラフォンテーヌメンバーズ | 住友不動産ヴィラフォンテーヌ

  • コンフォートメンバーズ | 東急ホテルズ

  • ソラーレポイント会員 | ソラーレホテル

  • アパホテル会員 | アパホテル

  • など

独立系

  • I Prefer | Prefered Hotel Group

  • Leader's Club | The Leading Hotel of the World

  • INVITED | Small Hotel of the World

まとめ

さらっとホテルのロイヤリティプログラムを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。意外と知られていないことが多いと思います。

どのロイヤリティプログラムも得意不得意がありますので、利用特性に合わせて選択するのが良いと思います。ホテルをよく利用される方はぜひ活用されてみてはいかがでしょうか。

次回はいくつかのホテルのロイヤリティ・プログラムに焦点をあてて見てみたいと思います。
ご拝読いただきありがとうございました。

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