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真夜中のドライブ、響け僕らの唄

大学3年の頃、大学を中退した友達と一緒に2人で過ごしたある夜の話。


彼とは、大学の初めの頃はあまり関わることはなかったんだけれど、3年の始めくらいに僕が弾き語りしていることがきっかけで、よく話すようになった。

お互いの好きな音楽の話に始まり、課題のことや僕の作っている曲の話なんかも一緒にした。


そして、やがて彼は大学を中退する。




色々ゴタゴタもあったりしたが、それでも連絡は取り合っていた。


連絡している中で、2人で曲を作ろうという話になった。

彼が作詞して、僕がそれにメロディをつける。

テーマは、夜のドライブにしよう。

確かそんなことを話した。


そして、

この曲ができたら2人で会って歌おうと約束した。


僕が楽器を持って行くからさ。どっかで焚き火でもしながら歌おうよ。

いいね!

というような感じで。



それから曲が完成するのに時間はかからなかった。


僕はできたばかりの曲と楽器を持って長距離バスに揺られ彼の元へ向かった。




彼の実家は山の近くにあった。


迎えに来てくれた彼は、小さい車に乗ってきた。


いい車だね。なんていう車?


ローバーのミニクーパーだよ。


なんか旅人っぽいね。


そんなことを言いながら荷物を後ろに積み、車に乗り込んだ。

そして、学校でのことや彼が中退した後どうしていたのかなんかを話しながら車で彼の実家に向かっている途中で、


そうだ。あの曲弾いてよ。


と運転しながら彼が言った。


僕は、
いいよ。まだうろ覚えだから間違えるかもしれないけどね。


と後ろに置いていたギターをとり、ポロポロと弾き始めた。

重たいハンドル 揺らめく街明かり
ぬるい外気温 ボディを撫でる
バイパス道路 70キロ飛ばし気味
終わりなき旅 カーステレオのミスチル 
午前0時 雨上がり 赤信号
「ごらんよあれを。」
光のリフレクションが綺麗すぎて

回り続けるよ 自転がもう止まればいいのに
動き続けるよ 足りない夜指で数えて 進む

うるさいエンジン ほぼ満月 月明かり
ポツリ道標 等間隔シルエット
走り続ける 信号ない田舎道
夢で見たような真っ暗闇 夜の海
夜はいつも僕らを許しくれる
「ねえ、歌おうよ。」
果てない夜の彼方 響いてく

走り続けるよ 明日には終わっちゃうよな
歌い続けるよ 朝を迎える勇気をください


森の中を照らすミニクーパーのヘッドライト。


揺れる車体と響くエンジン音。


この曲、実はこの車に乗りながら歌詞考えたんだ。

と彼が運転しながら言う。


不器用ながらも初めて一緒に作った曲。


狭い車内の中で、窮屈そうにギターを抱え僕らは何回も歌った。


月明かりに滲んだ空に溶けていく2人の声とギターの音。


時間なんて気にしないで大声で歌った…





それまでは自分の趣味のためだけに弾いていたギター。

それが、誰かと一緒に歌うことは素晴らしいことだと改めて感じた夜だった。


僕が今も弾き語りを続けている理由の原体験はここにある気がする。





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