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『群盗』四幕一場

第四幕
第一場


モーアの居城を囲む田園地帯。
盗賊モーア。コジンスキーは離れたところにいる。

モーア   先に行って、俺の訪問を伝えてくれ。段取りは覚えてるな?

コジンスキー   団長はメックレンブルクのブラント伯、私はお仕えする馬丁で――ご心配には及びません、役割をしっかり演じます。それでは! (退場する)

モーア   ただいま、故郷の土よ! (大地に口付ける) 故郷の空! 故郷の太陽! ――田畑、小鳥たち、小川、森よ! みんな、みんな、ただいま! ――故郷の山から吹く風は、どうしてこんなに心地よいのだろう! 芳しい歓喜の声が、哀れな追放者を包み込んでくれる! エリジウムの園よ! 詩の世界よ! 待て、モーア! お前の足は聖なる神殿を進んでいるのだ。
(城へ近づく)見ろ! 中庭にツバメの巣がある――あの庭木戸も! ――それに、この生垣の角だ、お前はいつもここに隠れて、鬼をからかっていた――あの谷間の草原も変わらない。お前は英雄アレキサンダーだ、マケドニア軍を率いてバルベラの戦いへ! すぐ近くには草の茂る丘、そこからペルシャの総督を投げ落とし――勝利の旗が揚々とはためいたものだ! (笑う)黄金の少年時代がこの惨めな魂に蘇る――向こう側で、お前はあんなに幸福だった、雲ひとつなく、全く晴れ渡っていた――ああ――今あそこに転がるのは、計画の残骸だ! この地を、お前は、立派に、堂々と、賞賛される男として歩くはずだった――この地で、お前は、アマーリアの花のような子ども達の中に、お前自身の少年時代を見出し、もう一度、人間の一生を生きるはずだった――この地で! この地で、民はお前を崇拝しただろう――だが、微笑んだのは邪悪な敵だった! (激昂する)どうしてテメエはここまで来た? 囚人みてえな、こんな気持ちになるためか? 鳴り響く鉄の鎖に自由の夢から追い立てられるためか? ――違えだろ――俺は、惨めな暮らしに戻ればいい! 囚人は光を忘れた、そうだ、自由への夢って奴が、稲妻みてえに頭の上を飛んで夜へ消えちまった。残ったのは濃くなっていく闇だけじゃねえか。――さようなら、故郷の谷よ! 昔、お前たちは幼いカールを見た、幼いカールは幸せな少年だった――今お前たちに見えているのは大人の男だ、そして、絶望した男だ。(素早く踵を返し領地の境まで歩いていく。突然、哀愁をたたえて居城の方を見る)会わなくていいのか? 一目見ることもなく? ――アマーリアと俺を隔てるのは壁一枚――そうだ! 俺はあの人に会わなくちゃならない――父上にも――たとえこの身が粉々に砕かれようと! (引き返す)父上! 父上! あなたの元に息子が帰ってきました、黒く燻された血が! 俺を見ないでくれ、残酷に震える眼光! 虚な死人の眼差しよ! 今だけは俺を自由にしてくれ! ――アマーリア! 父上! あなたのカールはここにいます! (素早く城へ向かっていく)一日が目覚めるなら、俺を苦しめればいい、夜がまとい付こうとも、俺を離さないでくれ――ひどい悪夢で俺を苛むがいい! このたった一つの歓喜に、毒を盛るのだけはやめろ! (門の前に立つ)何だ、この感じは? どうした、モーア? テメエ、男だろ! ――死ぬのか、身体が震える――恐怖の予感か――(入っていく)

ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!