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64. 覚書
覚書のこと。
1. サント・パンクラス駅にはけして近づけない、前を歩く人がいる。例えばスマホを見ながら歩くなどして、ぶつかりそうになって顔を上げると誰もいない。
2. 青い血を引く女に水鳥の卵を温めさせると、家に幸福を招く。女は石女が望ましく、卵は大きければ大きいほど良い。ただし、孵化したものは栗の木製の箱に入れ、何があっても外に出してはいけない。
3. 月明りに一晩晒した乳を、猫に与えるべからず。
4. 手のひらに印刷されたような数字を見つけたら、その数に気を付けて生活すること。日付、時刻、番地など。書体はヘルベチカ。多くが小指の下、手首との間に現れる。
5. 雨の夜に橋を渡る最中、鼻血が出てしまったら速やかに対岸へ渡り、けっして後ろを振り向かないこと(ただし、石橋を除く)。
6. 頭ばかりが大きく見えるその顔に、虚しく開いた三穴は闇である。
読んでくださってありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたらうれしいです。