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つくものがたり

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ひとつひとつ、積み重ねなにとする
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2022年9月の記事一覧

14. あるいはマッシュルーム

 俺んち、カーチャンがあんまり料理がうまくなかったからか知らんけど、イギリスに来て初めて…

tmk
1年前
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13. タイバーン録

 ロンドンで最も有名な公園の一つ、ハイドパークの北東角には、マーブルアーチという建造物が…

tmk
1年前
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12. 仮喪主

 わたしが大学時代に住んでいた所では、孤独死が多かった。  それ自体は異常なことでもなん…

tmk
1年前
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11. サイダーの客

 エッジウェアロードにあるパブに、時々行く。  読めないアラブ文字看板を並べる商店街の、…

tmk
1年前
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10. 鳥避け

 五年くらい前の話。  あるソーシャルネットワークを介して、鳥避けの試供品を使ってみてく…

tmk
1年前
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09. 伯爵家の男子

 貴族というものは昔ながらのしきたりやら慣習やらに囚われがちで、独自の掟のようなものを持…

tmk
1年前
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08. クレッシェント・クローズの魔女

 クレッシェント・クローズ六十七番地の三階には、魔女が住んでいる。  このひとが(一応昔はヒトだったのでそう呼ぶが)、見る者によって姿が変わる。  たいていの人間はこのひとを老女だと思っているが、ある人は若い男性と認識し、絶世の美女だと思って求婚する人もいたそうだ。わたしには動物の頭に見える。大英博物館への遠足で習った、エジプトの猫だか犬だかわからない神さまみたいな。  魔女ではあるが、悪いことはしない。  少なくとも、わたしは悪事を働く彼女を見たことがない。一度、生魚とナッ

07. 芋虫猫

 芋虫猫というものがある。  その名の通り猫なのだが、胴が通常の三倍くらいあって、足が六…

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1年前
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06. 帽子のジンクス

 僕の大叔父には、帽子の話を振ってはいけないという不文律がある。  この人が四人姉弟の末…

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1年前
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05. 雨が降らない通り

 テームズ南西バターシーの近くには、十五年間雨が降らない通りがある。  ここにはかつて、…

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1年前
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04. あざ

 その少女には字があった。  一つ一つは小さな赤い斑だが、全身にそれが広がっていた。生ま…

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1年前
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03. 細道の小石

 西ロンドンにあるホーランドパークは、リージェンツパークやハイドパークほどの規模はないが…

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1年前
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02. クラウディメルの呪い

 わたしには夭折したいとこがいるのだが、これが生まれついてクラウディメルの呪いを受けてい…

tmk
1年前
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01. 憑きものに関する近年の変化と問題

 『憑きもの』に重点をおいて研究する者を、昨今ではほとんど見かけなくなった。  憑きもの、というと多くの日本人は管狐や犬神をまず想像するだろうが、世界各国で事例は多く、また原因となるものも様々である。  実際のところ、憑きものとは超自然的ななにかが人や家に乗り移ることだから、最小で一つの「器」に憑く「もの」(器になる資質があるのならばそこにも魂が宿っているはずではあるが、その有無は現象そのものにほぼ関係しないので、この場合それを数える必要はない)があればそれで成立するのだから