5/9 台所の錬金術師

 昨日、がんばって掃除機のフィルターを掃除したのに、一晩あけて今日、また掃除機の調子が悪い。また動いたり止まったり動いたり止まったりする。原因はフィルターじゃなかったってことなのか。だとしたら、昨日のフィルター掃除後、一瞬調子よく使えていたのは逆になんだったのかと。ごほうび? 仕方がないので、あとでちゃんと説明書を読もうと思う。やれやれ。

 昨日の夜、旦那さんと「明日の夕飯、何食べたい?」という会話をしていたら、最近食べた夕飯メニューの振り返りになって。旦那さんに「あれはひさしぶりに失敗作だった」と言われたメニューの話になった。

 言い訳だけれども、それをつくった日は、ちょっと情緒不安定だったのもあって、頭が回っていなかった。
 肉料理の付け合わせに野菜の副菜を添えようと思って、旦那さんが以前つくったときに気に入ってくれた、玉ねぎを炒めたのに醤油で味付けして削り節で和えたのをつくろうとした。途中で、ちょっとアレンジしようと思いついて、「とろけたチーズが絡まっていたらおいしそうだ」と、チーズをひとつかみ投入した。自分の頭の中では、チーズが溶けて全体に絡む予定だったのに、フライパンの中では、チーズが溶け伸びることはなく、いくつかのチーズのだんごができあがった。どうにもリカバリーできず、そのまま醤油と削り節を入れてかき混ぜたところ、チーズは醤油を吸った削り節の衣をまとって、謎の茶色い(むしろ黒い)かたまりに仕上がった。『玉ねぎ炒めと謎のかたまり和え』が完成した。見た目からしておかしくて、情緒不安定なのもあって、フライパンの前で泣きそうだった。

 旦那さんが帰ってきたので「夕飯失敗した……」と申告するも、「大丈夫だよ」と励ましてくれた。しかし、いざ料理を目の前にすると、そのかたまりを箸にとって「これ何?」と聞かれた。「……食べてみて」と促す。一口食べた旦那さんは「……鶏肉?」と。大はずれだ。チーズが鶏肉に化けた……そんなわけがない。正体を明かすと、謎が解けて安心したのか、「大丈夫だよ」と全部きれいにたいらげてくれた。

 のに。昨日の夜の時点で「あれは失敗作だった」と言って大笑いしていた。「全然正体がわからなかった」「鰹節のかたまりを食べてるみたいな味だった」とも言っていた。その場では、わたしがわかりやすくへこんでいたから笑い話にはしなかったのか、と思うと、優しい。けれど、申し訳ないことをした。のと、ちょっと腹立つ、ような気もする。でも、その場で笑われていたらそれはそれで喧嘩になるか泣くかしていたかもなぁ……。

 あと、わたしとしては料理はちょこちょこ失敗しているつもりだったのだけれど(味が薄いことが多い)、それは旦那さんにとっては失敗にカウントされていないのだなぁ、ということがわかった。たいていのものはなんでもおいしそうに食べてくれる旦那さんだけれど、そんな旦那さんだからこそ、もっと頑張ってちゃんとおいしいものをつくってだそうと思った。

 今日は曇りで、暑くもなく寒くもなくちょうどよい気候だった。過ごしやすい。もう花粉も感じない。こういう気候が続けば私としては大喜びだ。

 帰り道、ふいにどこからか学校のプールみたいな匂いがした。気持ちがいっきに夏の入口まで持っていかれた。もう、きっと、すぐ暑くなるんだろうな。

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