演劇と漫才と仲本工事さん

中間ほど難しいことはない。
感情のグラデーションの真ん中あたりの気持ちとか。お笑い的に言うとボケでもツッコミでもないポジションとか。
 
例えばコントを演じる時に、ボケ役の変な人やそれを怒るツッコミ役というのは勿論技術的にだけでなくセンスやキャラクターの難しさもあるんですが、その間にいる戸惑ったり、大ボケほどでもないポジションというのは実はとても高度な技術やセンスが必要になる。
 
先日、養成所生の新人さんの公演の演出をしましたが、その時も台本を読んだときに新人の方々は初見の時はその中間の難しさ役割に気づかない事が多いし、稽古を重ねるとその難しさに驚いている様子でした。
 
この一見、目立たないように見えるポジションですが、この役割を担うキャラが居ないとコメディというのは成立しにくい。
 
このポジションのプロフェッショナルで最も著名な方ではないかと思うのが、先日亡くなられた仲本工事さんではないかと僕は思っています。
 
子供の頃はドリフを見た時に志村さん加藤さんばからに夢中になるのだけど、芸人になり作家になりコメディの演出なんかをすると、仲本さんの大事さや技術の高度さ舌を巻くようになった。
 
そんな目線で今一度、ドリフの映像なんかを見ると、ツウ目線でサッカーのプレイを楽しむような見方も出来るのでは無いかと思います。あんまりお勧めのコントの見方ではありませんが(笑)
 
ちなみにの話ですが、僕は仲本工事さんにお会いしたことはないけど思い出深い事があって。
 
十代の頃に組んでいたコンビ時代に仲本さんを題材にした漫才で賞を頂いた事がある。
ざっくりネタの内容をいうと『仲本工事に似てるって言われても嬉しいかガッカリか微妙』という、今思うと大変失礼なくだりで。
 
その時の審査委員長だった新野新先生は、他のコンビが芸能人や流行のCMなんかを題材に使ったネタは、それを知っている人しか笑えないからダメだという評価だったのだけど、僕らのネタに関してはドリフは別格という評価でした。
 
今になって改めて思うのは、学校のあるあるネタと同じくらいの知名度と認知されるドリフの偉大さを思い知ります。
 
いつかこのエピソードをご本人に話したいと思っていただけに、今回の訃報は重ねてショックでした。
 
自分もいつかそれほどの知名度がある作品に関われるように。そして、早くもっと大きな仕事をして、躊躇なんてせず会いたい人に会わなければ、なんてつくづく思います。
 

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