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街の映画館

子どもの頃から通っていたお気に入りの映画館があった。
いちばん身近な(近いと言っても隣の市まで出なければいけなかった)映画館がその映画館だった。

小さい頃は親に車で連れて行ってもらい、
中学生になると友達と一緒に電車に乗り、
高校生になるとその市にある高校に通っていたので学校や部活動帰りに、
新作の映画が公開される度に観に行った。

「街の映画館」としてみんなに親しまれていたのだが、
突然閉館したのがわたしが高校3年生のときだった。
どうも売り上げが落ち込んでいたらしい。ショックだった。

あれからもう何年も経つが、時々その映画館のことを思い出す。特に思い出に残っているのが高校2年生のときのことだ。

高校2年生になった春。1年生の時に同じクラスで仲良くなった女子4人で「名探偵コナン」の映画を学校帰りに観に行った。
それぞれ別の部活動に入っていたので、部活終わりの夜7時に集合して観に行くことにした。

部活動が終わった瞬間にダッシュをして、集合場所で落ち合った。
街中にある映画館を目指し、女子高生4人で夜の街を自転車で走り抜ける。
いつもは通らない、居酒屋が軒を連ねる細い路地裏を進む。街灯とお店の看板のネオンがキラキラ輝いていて、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」の主人公の千尋が迷い込んだ知らない街のように感じた。
みんなで「いま何時ー!?間に合うー?!」とかなんとか、わいわいしゃべりながら(叫びながら)走ったゴールの映画館までの道のりはなんだか楽しかった。

その映画館ではお菓子が持ち込みOKだったので、近くのコンビニでポップコーンと野菜ビスケットを買ってみんなで分けて食べながら鑑賞した。
平日の夜ということもあり、中は人もまばらで、ど真ん中の席に4人一列に並びほぼ貸し切りのような状態だった。
映画の内容はもちろん面白かったけれど、何より映画館という空間、独特な雰囲気の中を友達と一緒に過ごせる時間がうれしくて楽しくて、この日をこの一瞬を絶対忘れないようにしようと強く思った。

今で言うエモい、だ。本当にエモかった。

思い出は尽きない。
もうその映画館はないけれど、
わたしたちの青春の場所はいつまでもずっと心に残っている。

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映画館の思い出

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