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#148 『いつも不安の中に身を置いていく』

本日は、日本画家の堀文子さんの「いつも不安の中に身を置いていく」についてのお話です。女子美術専門学校(現・女子美術大学)師範科日本画部卒業し、昭和14年に新美術人協会第2回展に初入選。以後、昭和27年には第2回上村松園賞受賞と日本画家として輝かしい実績を残してきた堀さん。

旅好きでも知られており、昭和62年から5年間イタリアに住み、その後、アマゾン、メキシコ、マヤ、ヒマラヤと精力的に旅を続けています。残念ながら、2019年2月に亡くなってしまいましたが、堀さんが残してきた言葉や考え方は今を生きる私たちが受け継いでいくべきものであると感じました。


今回のお話は、堀さんがいつも大事していた心構えが語られているのですが、なかなかそう思えるに至るには強い心がないといけないと思いました。欲を持たないことだったり、何事も初心の気持ちで接することだったり、強い意志がないと、堀さんのような人間性やスタンスには至らないと思います。

いつも未知の谷に飛び込むこと。不安の中に身を置いて、昨日をぶち壊していくということです。ですから学ぶよりも「壊す」。

"女子美術専門学校を出てから間もなく、出品した絵が賞を受けて騒がれた時期もありました。その時に、自分が若い女だから騒ぐので、こんな言葉に乗っていたら大変だ。ある時期を過ぎたら誰も振り向かなくなるという自覚がありました。大抵は若い時ちやほやされて、ダメにされるんです。自分を堕落させるのもよくするのも自分なんだ、と考えていますからね。誰かにすがっていたら、その人の言うなりじゃないですか。人それぞれ姿形が違うように、運命も皆違うのですから、誰もしないことを開拓しなければダメだと思っています。"
"ですから安全な道はなるべく通らない。不安な道や未知の道を通っていくとか、獣道を選ぶとか。大通りはつまらないと思っている人間で、それがいまでも続いています。そういう性質ですから、画家としては食べることができませんので、絵本を描いたりして生業を繋いできた。ただ、それもやってるうちにちやほやされて、児童の教育委員会などに出されることになってきました。だから「これはいけない」と思って絵本の仕事はやめました。そうやって、どこへ行ってもちやほやされないように、上手にその道を避けて生きてきたわけです。"
"絵は他の人から学ぶことはできない。ただ、自分のだらしなさが直に表れます。ですから自分がいつも未知の谷に飛び込むこと。不安の中に身を置いて、昨日をぶち壊していくということです。ですから学ぶよりも「壊す」というのが私のやり方です。そして、過ぎたことを忘れることです。...人は「もう一度あの絵を描いてください」と言いますが、慣れると確かに上手く見えますが、それはコピーです。描いた本人には気が抜けていて、魂が入っていないのが分かる。同じ感動は繰り返せないということです。"
"もしかしたら私の中に、まだ芽を吹かないものがあるかもしれない、ひょっとしたら、まだ思いがけないものが潜んでやしないかと、いまだにそんなことを考えています。そのためにはいつも自分を空っぽにしておかないと新しい水は入ってこないんです。私に勉強の仕方があるとすれば、いつも自分を空っぽにしておくということです。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/05/28『いつも不安の中に身を置いていく』
堀文子 日本画家
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※Image by Free-Photos from Pixabay