見出し画像

#341 『大事な時に偶然でもいいから現場にいる』

本日は、榊原記念病院副院長の高橋幸宏さんの「大事な時に偶然でもいいから現場にいる」についてのお話です。

"卒業後、東京の代々木にあった榊原記念病院(現在は東京都府中市)への入職を希望しましたが、新米はいらないと断られ、2年間、熊本の日赤病院で初期研修を積んだ後、1983年、榊原記念病院に研修医として採用されました。榊原記念病院は心臓外科の世界的権威・榊原仟先生が設立された病院です。先生は既に亡くなっていましたが、榊原イズムは院内にしっかりと根づいていました。"
"決して依頼患者を断らないのが榊原イズムです。最も驚いたのは、患者の急変があると、昼夜を問わず医師だけでなく検査技師や放射線技師が多人数すっ飛んでくることでした。その対応の早さを見て「さすがだ」と思いましたね。当時は見るもの、聞くもの、触るものすべてが新鮮で、先輩方の手術でも何でも見逃しては損と考えるようになっていたんです。"
"それとも関連することなんですが、僕はひと月で25回という病院史上最多の当直回数記録を持っています。それに外科の正職員になるまでの5年間のうち約2年半は病院に泊まり込む「ICU(集中治療室)の夜の帝王」との異名を持っていました。まぁ、労働条件にうるさいいまでは許されないことでしょうけど。"
"いま振り返っても、この5年間の体験は本当に大事だったと思います。それは医師として最初に覚えなくてはならないことの習得です。まだ本格的な手術ができるわけではありませんから、緊急搬送された患者さんに医師や看護師、検査技師などのスタッフがどう対応していくか、仕事の流れはどのようになっているのかをつぶさに観察しました。特に大切なのは偉い先生がいない夜間です。夜間は新米医師と看護師、検査技師だけで診ていくので、ICUをどのようにマネジメントするかはとても重要になってくるのです。"
"急変した患者さんに皆で対処していると、スタッフ間に家族的な信頼関係が生まれ、助け合う仲間となっていきます。この体験を通して「大事な時に偶然でもいいから現場にいる」ことの大切さを実感しました。その頃は多少の犠牲を払ってでも生きた医療を身につけたいという思いがあったと思います。四六時中働く中で十分に考えて工夫し、仲間と笑い合える時間があったからこそ、いまでは楽しい思い出として残っているのだと思います。"


============
書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/12/07 『大事な時に偶然でもいいから現場にいる』
高橋幸宏 榊原記念病院副院長
============

※サムネイル画像:https://pixabay.com/ja/photos/%e5%bb%ba%e7%89%a9-%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%95%e3%82%a7%e3%83%83%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%8a%e3%83%ab-%e5%be%93%e6%a5%ad%e5%93%a1-2762342/ より