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「秘密です」の威力

人間の持っている能力って、本当にいろいろありますけども。そのなかでも、わたしがひたすらに愛しいと感じる能力は「想像力」です。人間の想像力ってすごいですよね。文字の世界には、顕著にその想像力があらわれているとも思います。

数年前まで、わたしは訊かれたことに対して、一生懸命に全力で、話せること全部話すタイプの人間でした。訊かれたことは答えねばならない。それが誠実さである。……と思っていて。

たとえば「あおちゃん今まで何人彼氏いたの?」っていう質問。あるあるですよね。限りなく個人的で、センシティブな部分に触れる質問なのに、結構こういう質問って「定番」な気がします。そういう質問にもいちいち真面目に、なんの装飾もせず、本当の数字を答えていました。

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わたしはずっと、「真面目で誠実である」ことが正しく、あるべき姿だと無意識に思っていたから、そうやってすべてありのままに答えていたんです。というか、答えなかったら相手に嫌われちゃうんじゃないかしら、と思っていました。

でも、あるとき、本当にあんまり答えたくないような質問をされた。「なんでこんなにセンシティブなことを、軽い感じで質問してくるんだろう。しかも、その軽い気持ちでされた質問を、わたしはなんで馬鹿正直に答えているんだろう」って、ものすごく疑問に感じたんです。

ふと、別に答えなくてもいいんじゃないかしらって思いました。
そういえば、わたしの友達に、合コンで毎回男性を総ざらいにしていった伝説のモテ女子(既婚)がいるんですが、その子、都合の悪い質問が来ると答えないんですよね。
なのに、嫌われるどころかモテている。笑

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それからわたしは結構、プライベートな質問に対してはにっこりしながら「秘密です」とか「忘れちゃいました」みたいな返事もするようになったんですが、これってコミュニケーションにおいてものすごく面白い働きをするんだなっていうことがだんだんわかってきました。

人間、隠されると、その部分を想像します。
そして、その想像の方向性って、「相手に抱いている感情による」んですよね。

たとえば、「あおちゃんは今まで何人彼氏いたの?」という質問に「秘密です」って返すと。
わたしに好意を持ってくれている人は「いいように」想像する。あおちゃんはきっとモテてきたんだろうな、彼氏も多かったかも。とか。真面目な子だから実は少ないかもしれない、とか。
わたしのことあんまり好きじゃない人は「悪いように」想像する。あおこは大人しそうにみえて実は男好きなんじゃないか、めちゃくちゃ多かったりして、とか。あおこはモテなさそうだから、実は年齢=彼氏いない歴じゃないか、とか。
わたしにそもそも大した興味のない人は、別に想像しない。

数の多寡が問題なのではなくて、「わたしに寄せるイメージ」の問題ですね。わたしに好意を持ってくれている人に想像の余地を持たせると、本当にいいようにしか想像しない。わたしは自分を切り売りしてプライベートを話す必要もないし、相手はわたしのことをたくさん想像して、勝手にもっといいイメージを持ってくれるし、もっともっとわたしのこと気になるんです。

すごい。
そうか、馬鹿正直になんでも答えるって、逆につまらないんだなぁと思いました。人間って、想像力を使うの楽しいんですよ。想像するのって、楽しいの。みんな。
たぶん誰しも、あんまり相手の情報がないまま「好き」が膨らんでいった経験あると思うんですよ。それで、相手はなにしてるんだろうとか、何考えてるんだろうとか、どんどん想像が膨らんで、もっともっと気になって好きになっていっちゃう。少ない情報からどんどん想像して、好きになっていっちゃう。
コミュニケーションにおいて、想像の余地を残してあげることは、自分にとってもメリットしかないし、相手にとっても純粋に楽しいことなんだなぁと思います。

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まあ、わたしのことをあんまりよく思っていない人に「秘密です」って言うと、どんな悪い想像をされるかわかりませんけど笑、でもいいんです。わたしのこと嫌いな人は、放っておけば。いつか真実を知ったときに逆にギャップが生まれて「あれ、思っていたよりも実はいい人じゃね?」って思われるかもしれませんし。
というか、それこそわたしのこと嫌っている人に、わたしのセンシティブな情報を話す義理もないですしね。笑

嫌われちゃうのが怖いな、という気持ちから抜け出してコミュニケーションが取れるようになると、楽しい。純粋に会話が楽しめるようになります。
嫌われたっていいんですよ。だって、他には好いてくれる人が絶対いますから。世界中のすべてから嫌われっぱなしってことはないです、絶対。これは断言しちゃう。

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だからね、あんまり答えたくないなっていう質問には、遠慮なく「秘密です」「それは内緒です」っていうの、本当にオススメします。ちょっと勇気を出して、秘密にしてみてください。

あ、でもくれぐれも、にっこり笑って言うのを忘れないようにしなきゃダメですね。深刻そうに言うと、相手も困っちゃいますからね。

最後まで読んで下さって、本当にありがとうございました! 意識低めなので、いただいたサポートは書籍代などにはならず、おいしいケーキや紅茶に消えると思います……(*´ω`*)♡