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地方こそ、宅地も農地も、不動産需給の調整を支える政策の実行を

移住定住希望者の不動産需要に応える施策とは

 「賃貸に住んでいたが地域に新居を建てて住み続けたい」「ここに住みたいと思って探し続けているが見つからない」という声が寄せられます。また、就農移住を希望し、農業技術の取得など準備を進めても、農地も住居もなかなか見つからない、との声も聞きます。

 公共資産ではない不動産は私的資産であり、その取引に公的な介入は望ましくない、民間市場の需給調整に委ねるべき、というのが公の基本原則とは理解していますが、もどかしさがいつも残っています。なぜなら移住定住には、職と住が欠かせないからです。

甲州市は、農業が盛んな地域であり、果樹が支えであるワイン醸造などの加工業も特長であることから、職を求めての移住者には、果樹農地のスムーズな継承が重要で、住居の確保も必須です。

 空き家や空き地、後継者不在の農地、遊休農地などを、所有者の意向に配慮しつつ有効に活用するためにどんな施策が採れるか、市政横断的に探るべきではないかと考えます。

立派なぶどう畑も後継者がいないと…

人・農地プランから地域計画へ名称変更、目標地図作成が義務化 

これまで、地域での話し合いで、人・農地プランが作成されてきましたが、さらに農地が利用されやすくなるよう、農地の集約化などの取り組みを加速化することが喫緊の課題との考えから①地域の目指す将来の農地利用の姿を明確にする法定化した地域計画(人・農地プランを名称変更)を定める②計画の実現へ地域内外から農地の受け手を幅広く確保しつつ農地バンクなどを活用して農地の集約化などを進める、として改正関連法が2023年4月に施行されました。

新たに「目標地図」の作成が義務づけられ、高齢などで耕作ができなくなった際に、次の耕作者へスムーズに引き継がれるよう、10年後の農地利用の将来図を示すこととなりました(イメージ図参照)。

農地集約等の目標地図策定が義務付け

法改正が物語る、活かされない空き家が増加する現状 

増加する空き家の解消を目指し、2015年「空き家対策特別措置法」が施行されました。法により「特定空き家」【別枠参照】に指定されると、建物付き宅地減額の特例が適用されず、固定資産税が最大6倍課税となることとなりました。

2022年の段階で「特定空き家」指定は全国で約2万件。一方で、市町村が把握している、管理が行き届いていないと考えられる空き家は約50万件と言われています。

この現状を受け、この3月には空き家対策特別措置法が改正されました。

法改正では、固定資産税の減額措置が適用されなくなる「空き家」の対象範囲が広がり、新たな区分として、放置すれば特定空き家になるおそれがある「管理不全空き家」が設定されました。具体的な判断基準はまだありませんが、現在の見解は、窓が割れていたり雑草が生い茂ったりしていて、そのまま放置すると特定空き家になるおそれがある家が想定されています。

管理不全空き家は、行政から指導を受けたら、改善が求められ、改善されない場合は固定資産税の減額措置の対象外となります。つまり、固定資産税が6倍になる対象の空き家が増えるということです。市では法改正を受け空き家対策関連の条例改正を進め、取り組みを強化する考えです

「特定空き家」「管理不全空き家」が設定される現実は、いかに活かされていない空き家が多いかを物語っています。

不動産需給調整を支援する施策を

このリポートで言及した農地の「地域計画」や空き家対策の推進に加え、取引の意思がある物件を登録する「空き家バンク」や、空き家の活用や解体を支援する国や県の支援事業、税制上の優遇や強化など、公的機関ができる取り組みや、民間の動きをみると、最近では不動産を欲する側の情報を具体的に伝える「さかさま不動産」の取り組みもあります。また、不動産需要のサンプリング調査によって傾向を掴み、実態を踏まえた地域のまちづくりを進めることも大事なことだと考えます。

連携の行政施策、地域実態を把握したまちづくりの推進などで、不動産需給の調整を支えるべきです。

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