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物語

8
中途半端な話
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2023年5月の記事一覧

彼にとっての設計図

彼は昼に起きてそこから、
やらなきゃいけないことが山ほどとあるけど、
今日もギターばっかりやってしまっていた。

彼はどうしても届けたいと思ったから。
でも今日は納得のいくものができなかったらしい。

結局何も生まれずにおわった。

きっとその日、
惰性で浸かった湯船で自分に言い聞かせていただろう。

お前はミュージシャンでもないのに。

でもギターを抱えて歌うことは彼なりの、
一種の感情表現だっ

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寒いねっていえること

今日も散歩に、空気を感じに、空を見に、宇宙に近づきに行こうということだ。

自分のポケットに入れたカイロをお花が咲いたみたいに開かれた手に渡した。

昨日と同じ噴水の横のベンチに腰を下ろした。
水は出ていない、音もしない噴水。

しばらくの間座りながら
昨日と同じように空を見上げながら、
空間に抱かれた。

たまにする取り留めもない会話も愛おしく、
そして沈黙、静寂が何よりも私は愛おしく感じる。

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自由、責任。愛、世界。

僕は思った。
自身の生の自由、世界への愛と責任感が君をしばりつけているのではないかって。

しばりつけているというよりも、君はきっと両方から今、手を引っ張られている。人気者かな。

他の人からその程度かと思われるのは、きっと君にとってはただのその人たちから浮かぶ感情ではなくて、自分が背負うと覚悟した世界への代弁の声だと受け取ってしまうから、だから自分のことも嫌いになってしまうのではないか。

そし

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