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愛と死は隣り合わせ

今日の日記は、のっけから哲学界のスーパースターであるジャック・デリダ(Jacques Derrida, 1930年- 2004年)に登場してもらいましょう。デリダは 脱構築、差延、散種、男根ロゴス中心主義、エクリチュールなどなどさまざまなキーワードをわたしたちに残した哲学者です。その彼のインタビューがYoutubeに残っています。画像をクリックするとYoutubeに飛ぶので、冒頭部分だけ見てみてください。

amour(アムール)はフランス語で「愛」「恋」を意味する男性名詞です。

「愛」という概念自体を指す場合はl’amour(ラムール)と言います。

la mort(ラ モール)は「死」を意味します。

彼はこのインタビューの冒頭でl’amourとla mort、つまり「愛」と「死」を聞き間違えるのです。「えー、ただの聞き間違いじゃん?おじいちゃんだし。」と思うかもしれませんが、それは私は違うと思うのです。精神分析から見ると聞き間違いや言い間違いが起きる時には無意識において、並列の価値を持つからです。デリダの頭の中では「愛」と「死」が同列の価値をもっていると考えられ、それによる聞き間違いが起きたのだと私は考えています。それも何度も聞き返すでしょう?彼の混乱が手に取るように見えます。「愛」か「死」か、分からなくなってしまう。

最終的には「愛」について聞かれていると分かるのですが、それでも答えは「分からない、答えられない」という返答をしています。それだけ愛は複雑で、かつ死と隣り合わせであることが分かります。

彼にとって「愛」とは他人との融合を意味するのではないかとここから推察されます。他者を受け入れ、自己が解体していく。そのとき、人は「愛」と同時に「死」を感じ取る。そんなことを思ってしまうのです。現にデリダにとって、「愛は、死が私たちを分かつまで存在する」のであり、デリダは、デカルトの「われ思う、ゆえにわれあり」を書き直して、「私は喪に服する、それ故に私は存在する」と言います。死のゆえに愛があり、死のゆえにわれわれの存在があると言うのです

聞き間違いから、精神分析、そしてデリダの思想にまで入り込んでしまいました。あぁ、面倒くさい話になってしまいました。話を簡単なところに戻しましょう。愛とは与え、受け入れるものであるとしたら、そこには他者が必要です。その他者を受け入れることこそ自己の静かなる死であり、愛なのではないかという話でしたね。本当はここで新たなキーワード「歓待」という言葉を使いたいところですが、グッと我慢しましょう。話が余計に広がってしまうから。これはフランス語だけの問題なのでしょうか。

そうではなく、日本語においても「愛憎劇」とあるようにポジティブとネガティブな言葉が組み合わさったものがあります。フロイトの用語の中にも「drive」という用語があり、「欲動」と訳されます。これは「生の欲動」であると同時に生の先にある「死への欲動」でもあります。愛があるところ、もしくは生があるところには常に「死」が隣り合っていると考えられないでしょうか。

いかん、いかん。verdeさんの妄想列車に私もライドオンしてしまったようです。先日の日記のなかでフランス語の愛についてのフレーズがあったら教えてねー、という話だったので調べてみました。いろいろ表現がありました。今回はプチ・フランス語講座はお休みということだったので、その代わりに調べた表現を残しておきます。軽ーい気持ちで発音してみてください。それでは〜。


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Je t’aime à mourir.
(ジュ テーム ア ムリール)
「きみを死ぬほど愛してる」

Je t’aime à la folie.
(ジュ テーム ア ラ フォリ)
「狂おしいほどに愛してる」

Je t’aime pour toujours.
(ジュ テーム プール トゥジュール)
「永遠に愛してる」

Je suis à toi.
(ジュ スュイザ トワ)
「僕はきみのものだよ」

Embrasse-moi.
(オンブラッスモワ)
「抱きしめて(キスして)」

Regarde-moi.
(ルギャルドモワ)
「私を見て」

Ta voix me manque.
(タ ヴォワ ム モンク)
「きみの声が恋しい」

Je suis fou de toi.
(ジュ スュイ フー ドゥ トワ)
「きみに夢中だ」

Tu me fais craquer.
(チュ ム フェ クラケ)
「きみに夢中だ」

Je suis heureux avec toi.
(ジュ  スュイズールー アヴェック トワ)
「きみといると幸せ」

Je suis amoureux de toi.
(ジュ スュイザムルー ドゥ トワ)
「僕はきみに恋してる」

Tu es mon trésor.
(チュ エ モン トレゾール)
「きみは僕の宝物」

Tu as de très beaux yeux.
(チュ ア ドゥ トレ ボー ズュー)
「きみの瞳はとてもきれいだ」
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JAZZとヒップホップがうまく融合した、愛を歌った曲でも最後にどうぞ。

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