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【エモーショナルな夜に】 Jリーグ第22節 大分トリニータvs.浦和レッズ

エモーショナルな勝利だった。
夏のナイトゲームというノスタルジックな雰囲気と9000人の観客が醸し出すアットホームな空気と「大分よりの使者」が響く昭和電工ドームはとにかくエモーショナルだった。

大分トリニータは、ここまで4試合勝ちがなく、浦和との大一番ともいえるゲームでホームでサポーターに勝ち点3を届けた。また、その戦いぶりはいままでのそれとは違い、どこか振り切ったかのようにも思え、観ている人をワクワクさせるナイスなゲームだった。

試合結果

大分トリニータ1-0浦和レッズ
【得点者】
12’町田
【選手交代】
大分トリニータ
70’小林成→伊佐
79’長沢→渡邊
79’下田→羽田
85’町田→藤本
85’上夷→刀根

浦和レッズ
45’柴戸→杉本
78’汰木→関根
78’ユンカー→興梠
93’伊藤→金子

スタメン

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スタメンは上図の通り。
大分は、前節から1人入れ替え。前節出場停止だった三竿が戻り、右のCBには前節三竿のポジションを務めた上夷が入る形。
対する浦和も前節から1人入れ替え。CBのトーマンデンに変えて岩波をスタメンで起用した。

アップデート

大分は、まずは鹿島戦からみせたアグレッシブな守備をベースに浦和に対し、守備から主導権を握りにいくような入りを見せた。基本は5-4-1でリトリートしながら、スペースを消し、狙われがちなDFとMFのライン間に対してもしっかりと全員でカバーし合いながらケアできていたように思える。特に、小泉、ユンカーに対してはかなり厳しくいっていて。ボールが渡ればやばい2人には徹底していて、ユンカーを封じたエンリケはもうJトップクラスと言ってもいいのではないだろうか。
そして、生ユンカーは遠目から見ても、立ち姿が美しく、王子様のようだった。

また、浦和の後方でのビルドアップに対しては、前からガンガンプレスをかけて積極的な姿勢も見せた。浦和は、CB +ダブルボランチのどちらかを最終ラインに落として、3枚でビルドアップする形が基本だった。

大分のプレスを開始する基準点みたいなものを定めていたのかは分からなかったが、浦和のCBはビルドアップ能力が高くないので、そこに対して積極手にアプローチすることは明確に狙いがあったように思えた。

大分は、狙い通り浦和にボールを持たせ、序盤から高い位置で奪ってショートカウンターで浦和陣地内へと攻め入る。また、前節までは奪ってからも、全体的に流動的に動けずに、相手にセットされてしまうことが多くみられたが、今節は、奪ってからチーム全体で同じ絵を共有できていて。奪ったら、人数かけて高速のショートカウンターを仕掛けるシーンはこれまでみられなかったものであり、観ていてワクワクさせるものだった。

そして、大分がハイプレスからのショートカウンターで先制点を奪うことに成功する。西川から、西へのふわりと浮かせたパスを西が頭で繋ごうとするも、三竿が鋭い読みからインターセプトし、成豪が左サイドから左足で折り返し、ボックス内長沢の背後のスペースにポジショニングした町田が、頭で見事に合わせて、浦和のゴールネットを揺らした。まさに、狙い通りのゴールといった感じで入った瞬間には鳥肌が立った。
前線からのプレスでコースを限定したからこそ、三竿があのポジションでインターセプトできて、それから奪ってからのカウンターが素晴らしい。長沢がニヤで囮として機能することにより、浦和の選手を引きつけその背後のスペースに、町田が飛び込むというお約束の形。

そして、大分ペースで時計の針は進み、立て続けにハイプレスから相手のミスを誘発して奪ってショートカウンターで浦和ゴールを脅かした。ボールの支配率は3割程だったが、守備から主導権を握る形で、浦和に好きなようにはやらせずに、前半は浦和のシュート数は一本のみだ。
あまりにも、大分の策がハマりすぎていた前半だった。

後半に入ると、早速浦和が動いた。柴戸に変えて杉本を投入し、4231から442へとシステムを変更した。柴戸の位置に、小泉を一列をおとした。
小泉がボランチに入り、浦和の攻撃に厚みがでるようになる。前半の、柴戸、伊藤のコンビだと、低めのポジショニングでうまく前線の選手と絡むようなシーンはなかったが、柴戸を小泉にかえることにより、伊藤がバランスをとりながら、小泉が前線の選手と絡み、前半とは違い田中達也が大外をとり、左サイドから何度も崩され、冷や汗をかくような危ないシーンを何度もつくられてしまっていて。また、途中から入った杉本がポテンシャルの高さをみせつけ、リカルドの修正力がえぐいなと。前半とは別のチームのようで、各々の役割がクリアになったように思える。

大分は、前半ほどプレスにいくようなシーンは少なくなったが、守備の集中力が凄まじく、後半は浦和に何度もシュートをうたれてしまうが、身体を張って紙一重のところで凌ぐ。そして、70分に伊佐を投入し、システムを5-3-2へと変更し、5-3-2で構えつつカウンターを虎視眈々と狙う時間が続き、羽田と、締めの刀根の兄貴を投入するという必勝パターンで前半の1点を守りきり、勝ち点3ゲット。負の連鎖を断ち切ることに成功し、攻守にアグレッシブにアップデートした戦いぶりは、カタノサッカー2.0と言ってもいいのではないだろうか。

終わりに

11人全員が、同じ絵を共有できていて、相性もあるだろうが、素晴らしい戦いぶりだった。新戦力の井上、上夷はフィットしてきていて、そして不調気味だった長谷川、成豪は調子があがってきていて、ポジティブに溢れた勝利だった。井上は、足の速さを生かした突破と守備に加え、クロスの精度に向上が見られ、個で違いが生み出せる選手へと進化を遂げたし、上夷もここまで目まぐるしい活躍はなかったが、汰木をストップした対人能力は特筆すべき部分で、井上との連携も悪くない。上夷に関しては、J1でやれるポテンシャルをようやく見ることができたなと。これからの成長に期待だ。
エンリケも試合を重ねるごとに良くなっていて、ユンカーを完封してしまった化け物っぷりは日本中に知れ渡ったかもしれない。何としてでも、完全でとってほしい。何としてでも。絶対に。

また、Jリーグは五輪の影響で中断に入る。まだまだ降格圏内であることには変わりないが、今節のエモーショナルな試合の余韻に浸り、新たな新戦力が加入することに期待を抱いて、中断後の試合を楽しみに待ちたいと思う。

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