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【あと一歩】Jリーグ第14節 大分トリニータvs.サガン鳥栖

湘南相手に何もできずに終ったショッキングな敗戦から1週間が立ち、大分は鳥栖をホームに迎えた。鳥栖は、現在3位でまさに絶好調。明輝監督のもと、若い選手が躍動し、アグレッシブなサッカーで、センセーションを起こしている。
バトルオブ九州。両者の意地とプライドが懸かった試合で、大分はあと一歩のところで勝点3を逃した。鳥栖に先制を許すも、後半に息を吹き返し、ペナルティで勝ち点3を取り逃した。あれが入っていればとたらればを言っても仕方がないし、自分でとったペナルティを自分で蹴った藤本の勇気を私は讃えたい。
ロベルトバッジョの言葉を借りると、
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持ったものだけだ。」である。

勇者になれ、藤本。

試合結果

大分トリニータ1-1サガン鳥栖
【得点者】
サガン鳥栖
11’山下
大分トリニータ
82’長沢
【選手交代】
大分トリニータ
70’高澤→長沢
83'香川→高畑
83’羽田→藤本
90’三竿→エンリケ
サガン鳥栖
70’中野嘉→小屋松
70’林→本田
81’仙頭→大畑
86’山下→ドゥンガ
86’松岡→相良

スタメン

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スタメンは上図の通り。
大分は、前節から3人変更。福森、長沢に代わって、香川、高澤を先発に。そして、小林裕はベンチにも入っておらず、代わりを務めるには羽田。弓馬がリーグ戦で初めてメンバー入り。
対する鳥栖は、前節から1人変更。小屋松に代わって中野嘉が先発に入った。

白熱したダービー

大分が、立ち位置で優位性を得ながら開始からボールを握り、主導権を握りかけるところで、鳥栖の速攻カウンターを受け、その流れから先制を許してしまった。鳥栖のカウンターは、鋭利でゴール前まであっという間に持っていってしまう速さと正確さで、みていて気持ちの良いプレミアを思わせるような見事なカウンターだった。

下田のクロスキャッチした朴一圭が素早い判断で、仙頭の足元へボールを送り、松岡、中野嘉へと高速で繋いで、中野嘉から、山下へ縦のスルーパスが通ると、鳥栖は山下、林、樋口の3人が駆け上がり、大分の最終ラインは坂1人で対応し、最後は林にシュートを打たれてしまうがポープがストップした。
難は逃れたかと思いきや、その流れから、エドゥアルドに縦パスを差し込まれ、仙頭へのパスはズレるも、林が潰れ、最終的に山下へボールが渡ってしまい、ゴール左隅に冷静に決められて、鳥栖が先制した。一瞬の隙を逃さない山下は流石だなと。

ただ、トランジションのところで若干遅れた大分。
ああいうところが上位との差なんだなと。鳥栖は朴がボールを持った瞬間に、スイッチが入り、全体で同じ絵を共有できていて。林のシュートをストップした後の守備も、曖昧で簡単に縦に差し込まれてしまったのは、無視できない問題だろう。

大分も鳥栖も、ボール非保持では互いにプレスで睨みを効かせ、インテンシティの高い守備で互いに中々チャンスをつくれない展開が続くも、大分は失点後の14分にプレスから絶好のチャンスを生み出す。朴のミスキックが、直接高澤にわたり、すかさず高澤が、無人のゴールに技ありのループシュートを狙うも、枠の外に外れてしまう。互いに相手のミスから決定機をつくり、鳥栖はチャンスをものにし、大分は、ものにできなかった。シュチュエーションこそ違うが、現在リーグ戦7ゴールの山下とノーゴールの高澤。ワンチャンスをものにできるかできないかの差は大きい。高澤優也の覚醒が待たれる。

この試合の大分は、トップの高澤をうまく使いながら、前進するシーンが目立つ。高澤にあてて、シャドーが拾って、サイドから崩す攻撃には再現性があった。鳥栖の守備も中々嵌らずに、大分はうまく交わしながら前進ができていて。
鳥栖は、山下と林が、相当に微調整しながらプレスをかけるシーンは印象的だったが、大分は、下田が手の届かない痒い位置に流動的に顔をだしながら、うまくズレを生み出していた。CBの坂、三竿の足元は言わずもがなだが、ポープの足元には成長を感じられる。特に、41分のシーンでは、鳥栖が前からきていることを察知し、ライン間の町田へ通したフィードは絶妙だった。
ポープが11人目のフィールドプレイヤーとして機能し、鳥栖のプレスを無力化していたのは嬉しい誤算だった。

互いに、堅守で鳥栖が1点のリードを保ったまま時計の針は進み、やはり大分は、ラスト30メートルまでは素晴らしいがそれ以降のクオリティは相変わらずで、まだまだ改善の余地がある。
そんな中でも、大分は攻守にアグレッシブでホームの後押しをうけ、波状攻撃を仕掛る。プレスからミスを誘い、高い位置でボールを奪ってショートカウンターも、高澤のヘディングは枠の外に外れる。あと少しなのだが、そのあと少しが遠く、ゴールを割るにいたらない。まるで、勝負の神様が試練を与えているのだと思いたくなるほど。

鳥栖も1点をリードはしてはいるものの、追加点を狙う姿勢をみせる。55分に右サイドを崩し、飯野が折り返すと、中野嘉が合わせるも、大分のDF陣の身体を張った守備で、ゴールを割らせない。ブロックしてこぼれたボールをもう1度中野嘉がシュートをするもゴール前をしっかりと固め壁のように聳え立ち、再びブロックし、こぼれたボールを今度は樋口に拾われてシュートを打たれるも、シュートコースをきった守備でシュートは枠の外へ飛んだ。崩されても、ゴール前で身体を張って守った大分の守備陣の対応は素晴らしかった。

大分も鳥栖も、流れを変えるべく選手を交代した。大分は、高澤にかえて高さのある長沢。鳥栖は、中野嘉と林にかえて小屋松と本田を投入した。
試合後のコメントで金明輝監督は、交代した意図について尋ねられ、もう1点とりにいくための交代だったとコメントしている。

交代によって流れを引き寄せたのは、大分だった。82分に左サイドで三竿からボールを受けた下田は右足に持ちかえて、アーリークロスをあげると、長沢が中野の前に入って余裕を持って競ると見事に頭で合わせて、同点に追いついた。その数分前にも似たようなシーンがあり、それが伏線になって決まったゴールだったことは下田のコメントからうかがえる。

下田「その前にも1本右足でクロスを上げたとき、僕の感じ的に(長沢)駿くんはファーに動いたのだが、ファーではなく相手の1個前に入ったので、次は相手の前に入るんだろうなと思って前に上げたら、うまく合った。」

長沢と下田の質的優位性でとった素晴らしいゴール。大分は、同点に追いつき、スタジアムの雰囲気は手拍子と太鼓の打楽器でスタジアム全体に一体感が生まれ最高潮に。

すると、得点直後に入った、藤本がいきなり魅せた。ボックス内でボールを受けると、ファンソッコに倒され、PKを獲得。自らが獲得したPKを自ら蹴るという男気をみせ、それも決まれば逆転というサッカー漫画のワンシーンに在りそうなチャンスが訪れるも、名手朴一圭にコースを読まれてしまった。

PKって、簡単に思われがちだが、相当にメチャクチャに難しいもの。蹴るものにしか分からないプレッシャーとGKとの心理戦に打ち勝つメンタルとボールを狙ったところに正確に早く蹴る技術が必要なのだ。冒頭でも述べたが、藤本の勇気を讃えたい。勇者になれ、藤本。

試合は、1-1のドローに終わり、九州ダービーは勝ち点1を分け合う形で、幕を閉じた。

終わりに

正直に言えば、勝てた試合であり勝ちたかったが、現在3位の鳥栖から勝ち点1をとれただけでも十分だろう。試合自体とても面白く、ダービーらしい試合だったと思う。
ただ、早急に解決してほしい点が1点ある。今シーズン2本のPKをゲットして、2本とも決めれていないのはやはり無視できない問題だろう。あまり過去の過ちを深掘りはしたくないのだが、レイソル戦で決めていれば、勝ち点0が1になっていて、今回の鳥栖戦も決めていれば勝ち点3をゲットしていた。合計すると大分は、PKによって勝ち点4を失っているのだ。
やはり、PKキッカーを決めていないのが問題でだと思うので、PKのキッカーは決めるべきだと思う。欧州のビッククラブでもやっていることだ。

チームは少しずつではあるが上向きつつある。残留するには、引き分けでも、泥臭く勝ち点を積み上げていくしかない。





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