具体と抽象をいかに行き来するか、そして何のためにそれを行うか
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具体と抽象をいかに行き来するか、そして何のためにそれを行うか

「具体と抽象の行き来」は何かは理解が難しい

地頭の良さについて以前ツイッターに書いたとき、そのひとつの重要な要素として「具体と抽象の行き来」を挙げました。しかし、そもそも「具体と抽象の行き来」とは何かという質問をいただきました。確かに、これだけでは分かりにくかったと思います。

このエントリではその意味について、もう少し具体的なイメージができる形で、どういうことを言いたかったのかを書きたいと思います。

具体と抽象の行き来が課題解決への最短距離である

そもそも何のために具体と抽象のあいだを行き来しなくてはいけないのか。それは自社の課題解決に最短距離でたどり着く武器になるです。

例えば、ある企業がマーケティング施策をゼロからスタートして検討する際、どういった形で考えるでしょうか。広告をうってみるのか、Webサイトをリニューアルしてみるのか、リアルイベントを開催するのか、もしくはEXPOに出展するのか。こういった様々な施策をブレストで並べてみて、これかなと思うものから実際にやってみるのでしょうか?でも、そんな感覚的なガチャを回してみても、もし正解が最後にきたらどうなるでしょう。その途中でマーケティング担当者は更迭されるかもしれませんし、スタートアップであれば潰れているかもしれません。

そこで具体と抽象の行き来が便利ですし、これができる人がいれば、最も効率的に課題解決にたどり着くことができると思います。ある程度トレーニングによってこれも可能になると思いますが、この「具体と抽象の行き来」がナチュラルにできる人は、個人的には地頭の良さを感じられます。そして、その人が検討を推進することで、自社が行うべきマーケティング施策に早期にたどり着けることでしょう。

大まかに言うと、以下の1→2→3から2-3を繰り返すことで、最速で自社にあった適切なマーケティング施策にたどり着くことができます。

1. 具体的な事例を集める(具体)
2. 具体的事例を構造的に捉えることによって抽象化する(具体→抽象)
3. 抽象化された方法論を自社に当てはめる(抽象→具体)
4. 2と3のステップをひたすら繰り返す(具体⇆抽象)

ただし、ここでは分かりやすさを重視するため、あえて3ステップのみにすることで簡略化しています。本来はこれを繰り返すことでより精緻な解決法にたどり着くことができます。また、事例などは実際に集めていないので、内容の正確性は保証しません(完全な妄想で作った事例です)。

1. 情報収集:具体的な事例を集める

今回、妄想事例として、「B2Bのツール販売をする自社がどういったマーケティング施策をとるべきか」を考えているとします。

上記で書いたように、自社で様々なマーケ施策を実験し、PDCAを回すことはリスクでしかありません。「車輪の再発明」を行わないように、マーケ担当者は他社の事例を調べることから始めるでしょう。まず、競合や似たモデルの企業のマーケティング施策を探してきます。これは具体のフェーズです。

ここで多くの人は広く情報を集めることでしょう。B2Bだけに絞ったとしても相当多くのケースがあつまるでしょう。ITツールというカテゴリや、SaaSというカテゴリ、そのほか業界別にも様々な情報が集まると思います。

それを眺めてみたとき、「リアルイベントに参加している人も、Web広告を出している人も、コンテンツマーケティングをしている人もいるな。でも結局どれが一番効果的なんだ?」と感じることでしょう。

このまま、「全部います!どれもきっと効果あるんですよ、きっと」とか言ったら終わりです。また、「リアルイベントに参加している企業が90社で、Web広告を出しているのが80社、、だからリアルイベントに出よう!」とか言い出したら脳死した解決策です。なぜ1社=1点でいいんだろう。じゃあ各社の売上高を合算して、「リアルイベントに出ているのが3兆円、Web広告は1兆円だから、、リアルイベントに出よう!」これも脳死しています。お前の頭は飾り物かと上司に叱られてしまうでしょう。

2. 情報整理:具体例を構造的に捉えることによって抽象化する

集めた具体例は様々な会社の様々な施策で、まるで散らばった点のように感じるかもしれません。そこから抽象化する作業が始まります。

ここでいう抽象化とはある種「具体の集合の中から規則性を探す行為」です。規則性を抽出するための軸は様々なことが考えられます。企業の成長フェーズ、予算規模、業界、業種、商材…。

「Webのみで購入・ユーザー獲得までできるツールの販売の場合には、SNS広告からスタートし、リアルイベントはフェーズが後半にならない限りしない」とか、「商材にしめる販売先比率が大企業が高ければ高いほど、リアルイベント出展の比率が高まる」「商材の平均単価が高ければ高いほど、リアルイベント出展の比率が高まる」とか、そういった傾向のような”規則性”を導き出すことが重要になります。

この時、仮説的に「AAという業種の企業であれば、投資金額規模が小さくなる傾向があるのではないか?」であったりとか「XXというフェーズの企業であれば、YYの利用率があがるのではないか?」といった、仮説思考を持って、その傾向が顕著に表れるかどうかを確認しにいくことが必要になります。この仮説のスジが良いか悪いかは経験の賜物でもありますが、地頭の良さだと僕が感じる「幅だし」の能力が高いかどうかにもよってくるかとは思います。

軸は仮説思考で出してみて、様々な事例をその軸に沿ってカテゴライズしてみてください。仮説のスジがよければ、きれいに分かれる軸探しの時間はショートカットできます。

3. 示唆抽出:抽象化された方法論を自社に当てはめる

規則性を探し出すときには実はあらかじめこの第3ステップを意識しておくとよいでしょう。

この第3ステップは「示唆を得る」ことです。示唆を得ることで、自社のアクションに結び付けていくフェーズになります。第2ステップで得られた傾向を自社にあてはめて、自社が次にするべきことを具体化します。

「AAという業種であればBBが多く、CCという業種であればDDが多い」という第2ステップでの結果を受けて、「うちはCCだから、BBではなくDDを中心にマーケティング施策を打とう」という風に落とし込んでいく作業です。自社のポジショニングに合わせた事例から「自社が成功する可能性が高い施策」を見つけます。

ただ、第2ステップでの切り口でみたときに自社がどこなのか曖昧な切り口では、この第3ステップで困るので注意です。また、自社以外のカテゴリについては変に時間を浪費することはありません。自分のカテゴリに合わせて、示唆を抽出するのが大切です。

4. 第2ステップと第3ステップの繰り返しで質をあげる

第2ステップで区切り、第3ステップで自社のカテゴリを選ぶ。さらに、そのカテゴリを第2ステップのように新たな切り口で細分化し、その細分化した中の自社と同じカテゴリを選ぶ。こうして繰り返すことで、施策は精緻化されていくはずです。

例えば以下のような事例が考えられます。

1.様々なマーケ施策とその時の予算規模を多く集める
2−A.B2B/B2C、企業規模の2軸で分けたときに、マーケ手法の分布がきれいに分かれた
3−A.自社の所属するB2B✕企業規模大で見ると、多くがリアルイベントに参加していたので、自社もそれが良さそう
2−B.リアルイベントにでるB2B✕企業規模大の中で、コンテンツエキスポに出ているグループとAIエキスポに出ているグループに分かれた。AIを用いている顧客が直接さわるツールを持つ会社はコンテンツエキスポに出ていて、よりインフラとして機能する(誰かのツールに組み込まれる)AIを販売する会社はAIエキスポに出ている事がわかった。
3−B.自社はインフラとしてのAIではなく、ツールとしてのAIを売っているので、コンテンツエキスポに出ることにした。

この例では2と3のステップを繰り返すことで、一度目は「リアルイベントに出よう」というところから、二度目で「コンテンツエキスポに出よう」というところまで、アイデアが精緻化されました。

2と3のステップという、具体と抽象の行き来を高速に繰り返せるだけ繰り返すことで、アイデアの質は改善させることができます。

日常でも、具体と抽象の行き来で、アイデアを生み、真実をあぶり出すことができる

これはあるマーケティングのケースを考えて、事例としてとりあげたけれど、この事例を集めてそれをパターン認識する、そして再度当てはめるという行為自体は何にでも使えるはずです。

これまでの彼女・彼氏の言動という事例からパターン抽出した結果、帰宅後に今日あったことについて話すときは浮気していて、それを誤魔化すために架空の話をすることが多かった(普段はそもそも今日あったことを話さない)。今回は聞いてもいないのに、今日あったことについて話はじめたので、浮気が確定だ。

恋愛における浮気判定についても、こういった行動を実は自然としている人は多いと思います。この行動を意図的に、自分の興味のないものでも同様に行える人は、地頭がよい人だと思います。

まずはこうした日常で、意識して具体と抽象を行き来して、地頭のトレーニングをしてみてはどうでしょうか?

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AIを活用したマーケティングのDXプラットフォーム「AIアナリスト」を提供するWACULの取締役CFO。仕事術、思考術、ビジネス論、キャリア論などを書きます。京都大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券で証券アナリスト、A.T.カーニーでテクノロジー担当マネージャーを経て、現職。