見出し画像

俺のCD棚 第16回

今回は、tofubeats 【lost decade】

tofubeatsは、兵庫県出身のトラックメイカー兼DJ。10代の頃から作曲活動を始め、当時は珍しかった、インターネット上にてフリーダウンロードで作品を発表する形態を取っており、今では当たり前にある、サウンドクラウド等での配信の先駆けとなった存在である。その後、数々のアーティストへの楽曲提供や客演で森高千里を迎えたりと、今や「日本を代表する」といっても過言ではない活躍をしている。(最近は、地元の後輩を巻き込んだ動画企画「TTHW」が個人的にツボ)

このCDは彼名義の1stアルバムで、PUNPEEやSKY-HI等の豪華な客演を迎えた、EP集のような位置付けのものである。

全体的な流れは、前半はパーティーチューンが中心に据えられた、わかりやすく盛り上がる感じ。後半は聴かせる歌ものがメインとなっていて、昔のカセットテープで例えるとA面とB面のような構成となっている。この辺りに彼の音楽ガジェットマニアな側面が垣間見えて面白い。小難しい事は考えないで、週末(特に金曜日)に聴くのに合っている。正直、今ほど洗練されたアレンジとは言えず、アマチュア上がりな感じは否めないが、そんな荒々しさもまた一興である。

画像1

初めて彼の楽曲に触れたのは、15曲目に収録されている「水星」である。当時、FM802でもかなり話題に上がり、そのサンプリングネタも面白かったので、興味本位でアルバムを購入。実は、アレンンジにTowa Tei が参加しており、他の曲と比べても群を抜いて完成度が高い。最後の方にチルな雰囲気のこの曲を持ってくるあたりにセンスを感じる。

一曲挙げるなら、6曲目「m3mt1on2u」。数あるパーティーチューンの中でも一番音数の多い、EDMとトラップがミックスされたような曲で、オノマトペ大臣のラップや掛け声が盛り上がりに拍車をかける、彼にしては珍しくド直球な曲。せわしなくDJプレイする姿が目に浮かぶ。

ジャケットは、レコードを重ねたようにレイアウトされた、シンプルなデザイン。ここでも、EP集のようなコンセプトが投影されているように思う。  自主製作盤らしく、分かりやすく金がかかってない感じが、潔くて良し。

画像2

尚、タイトルの「lost decade」という名義のDJセットでのライブが何度も開かれたおり、キャリアを重ねた今でも彼の根幹にあるのだろう。     ※直訳が「失われた10年」というのも意味深で、当時の日本の経済不況になぞらえた意味合いが含まれると同時に、日本の音楽業界が少しずつ低迷し、CDが売れなくなってきた現代、更にはその「失われた10年」と呼ばれた時代を生きているtofubeatsという存在を表現しているとも言われている。

自分にとっては、ポップがインターネットを経由した先にある、新しい音楽の始まりを予感させてくれたアルバムである。

以上、第16回でした。次回は、もはやEDM業界ではレジェンドの二人組、DAFT PUNKのアルバムを紹介します。

それでは、また。

いただいたサポートは活動費として使わせていただきます。