上ノ郷谷 太一
プロトタイプは問いかけ
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プロトタイプは問いかけ

上ノ郷谷 太一

なにかを作るときに、プロトタイプ (この記事では試作品として機能するものを指します) を用意しない人はいないと思います。わたしはデザイナーという職業柄、プロトタイプを利用する機会が多いです。たとえばわたしの場合は、デジタルプロダクトに限らず資料やブログなどの文章もプロトタイプを作成する対象です。よくプロトタイプを利用する一方で、それをうまく使えているのかという点ではまだまだ学ぶ機会が多いなと感じています。

プロトタイプへの期待

開発しているプロダクトのプロトタイプをチームとのミーティングなどで共有したところ、いまいち盛り上がらなかった…。よいフィードバックを得られず「なんか良さそう」といった反応は悪くはないんだけど自分はモヤっとした状態になってしまうシーンをわたしは何度も経験してきました。そうなってしまったのは準備不足が原因であるのは間違いないのですが、どんな準備が足りなかったのかもつかめず何度も振り返った記憶があります。

振り返りを通して、そもそもプロトタイプを通して自分がなにを得ようとしているのかをわたし自身がわかっていなかったと気づきました。ただ考えたものを具現化して「どうですか?」としかできておらず、仕事になっていなかったのだと感じました。たんにすばやく具現化するのが目的ではなく、あるていどの「目当て」を持ってスピードと手数を重要視できている状態を求められているのだなと考えました。

プロトタイプを利用する目的

それからはわたしはプロトタイプを利用する目的を「よりよい成果につなげるために必要な情報を得ること」と考えるようになりました。わたしにとってプロトタイプは次の判断や決断を行うために情報を得るための議論を発生させる「問いかけ」です。なので、まず自分自身が決めて進めるためにどんな情報が必要なのかの仮説を立てておく必要があります。例えば仮説を検証する目的でも、プロトタイプを使って何を得られれば検証できたといえるのかがはっきりしていないと、中途半端な情報しか得られず余計にわらならくなる可能性もあります。

その決めて進めるために必要な情報の仮説を立てる目的で、プロトタイプを利用する場合もあります。これは単純に Figma などのツールでたくさんのアウトプットをしてみる状態を指します。最近はとくに手数の多さを重要視していて、考えてひとつ作るよりも、頭のなかにあるものを具現化して視覚でとらえなおす機会を増やしています。

問いかける対象と問いかけ方

プロトタイプは「問いかけである」としましたが、問いかける対象は自分自身だったり、デザイナー仲間やプロジェクトメンバーだったりとさまざまです。わたしが対象と目的をどうとらえているか書き出してみました。

  • 自分自身 (頭のなかにあるものを具現化して視覚でとらえなおす)

  • デザイナー仲間からのレビューによる視点の獲得

  • 家族や友人などの身近な人からの客観的な視点の獲得

  • プロジェクトメンバーとの議論

  • ステークホルダーとのコンセプトの認識合わせ

  • ターゲットユーザイメージに近い人に協力いただくテスト

問いかける対象は、やはりなにを得たいのかによると考えます。たとえば細かい表示や実現可能なのかを問いたいわけではないのに、そういった観点でいつも的確なフィードバックをくれる方に問いかけても、必要な情報を得られないかもしれません。同じ目的に対し、知識や認知の違う人からの視点を獲得する「レビュー」という観点では、プロトタイプの目的をあきらかに示す必要もあります。

あわせて問いかけ方、つまりプロトタイプとしてどのようなアウトプットにするのか、どのようにプレゼンテーションするのかも大切だと思います。情報設計の評価や検証、フィードバックを得る目的なら、たとえば手書きのペーパープロトタイプで作成したワイヤーフレームが適切かもしれません。

ペーパープロトタイプ (手書き) のサンプル。ミーティング中に認識を合わせて議論をすすめたり、受けたフィードバックと受けとめた内容のズレを解消したり、その場で提案したりと用途はさまざま。
複数枚の写真を撮影してから任意の写真を送信する方法について話している時に「こんな感じでやるのはどうでしょう?」と用意したもの。正解である必要はなく見えると議論が発生したり、フィードバックが増える。これもプロトタイプだと思っている。こういうときにデザインの観察、分解でも書いた瞬発力が求められる。

ターゲットユーザに近い人に協力いただいてインタラクションデザインの評価、検証、フィードバックを得たいなら機能や UI がしっかり実装された状態に近いモックアップが適切かもしれません。

画面上の優先度等を含めた情報設計の確認や、エンジニアとの会話、ユーザ調査などでより詳細な議論やフィードバックを得たい場合は、詳細なプロトタイプを用意。どのようなアウトプットにするのかも、どんな情報が必要かに合わせて設計する「問いかけ方」のひとつ。

この他にも、ターゲットユーザイメージやユーザシナリオもプロトタイプとして機能できると思っています。コミュニケーション面ではプロトタイプを通して発生した議論の場でも視点のかたよりや策略のない、忌憚なく意見を言える環境をつくるスキル (ファシリテーション) も求められるでしょう。そうした方法の選択や場づくりも「問いかけ」の一部だと思います。


今回はわたし自身がデザイナーとしてプロジェクトに関わるとき意識している役割の観点から、デザイナーがプロジェクトを決めて進めるために利用するプロトタイプについて書いてみました。チームのメンバーとはプロジェクトの進め方の意見交換などでこうした話をよくしています。

そんな私たち Da Vinci Studio ではデザイナー、エンジニアともに積極採用中です。どうぞよろしくお願いします!

この記事も含まれている「カケルデザインマガジン」は、私たち Da Vinci Studio のデザイン部にはどんなメンバーがいるのかを知ってもらおう。と考えて運営しているマガジンです。自分が読みたいものを書こうとテーマを設定して、日々の発見や考え、気づきなどを肩肘張らず発信しています。ぜひチェックしてみてください!


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上ノ郷谷 太一
デザイナー。事業会社でプロダクト開発、CI/VI、デザインチーム構築・マネジメント、経営メンバーとして組織の運営に携わってきました。