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Do the right thing in USA

映画『Do the right thing』ラスト近くの暴動シーン。主要な舞台であるイタリア人のピザ屋が破壊され、火が放たれた。次のターゲットは、ピザ屋の向かいにある韓国人の雑貨店。店主が拙い英語で「オレ白人じゃない!オレ黒人!君たちと同じだ!」と必死に訴えかける。「お前が黒人?ふざけるなよ」と更に険悪な雰囲気になるが、「やめておこう」と一人の男性がその場をおさめた。友好のあかしとして差し伸べた店主の手を、黒人たちが握り返すことはなかった。
韓国人店主はなぜ「同じだ!」と言えたのだろうか。黒人たちはなぜ、ためらいながらもそれを受け入れたのだろうか。
ずっと頭の片隅に残っていた疑問が、BTSについて一章割かれている『アメリカ音楽の新しい地図』(大和田俊之/著・筑摩書房)を読んで、少しだけ解けた。
アフリカ系と韓国系という、アメリカにおけるマイノリティ同士の複雑な関係を解きほぐしながら、K-POPがブラックミュージックに強い影響を受けている理由と、アメリカで受け入れられていく過程が書かれている。2010年以降のアメリカ音楽シーンとそれを取り巻く社会の変化を記した本書では、他にも多数のアーティストが取り上げられている。プレスリーのものまねでハワイの人気者だった少年が、今はブルーノ・マーズと名乗り世界を熱狂させているのは、アメリカの歴史そのものだ。テイラー・スウィフトが、長らく控えてきた「政治的な発言」をするようになったことにも、変化の兆しが見える。
時代とともにあるポップスターの存在と、様々な問題を乗り越えていこうとするアメリカへの興味は尽きない。

日本で圧倒的なポップスターである星野源の『いのちの車窓から』(角川文庫)は、大きな手術を経験し自己を見つめ直したエッセイ集。いつも通りユーモアたっぷりにつづられているのは、独りではないことを知ったうえで、ちゃんとひとりで立つ大切さ。そしてそれは彼の音楽からだけではなく、BTSを始めとしたK-POPのアーティストやアメリカのラッパーたちからも聴き取れる。

「ひとりで来れてよかったなあ、って いるみんなそう思っていそうでいいライブ」
同じ思いを、歌ではなくこの短歌からも感じ取った。『音楽』(岡野大嗣/著・ナナロク社)は、シンガーソングライターが憂いと切実さをぎゅっとつめこんで作ったアルバムのような歌集だ。「忘れたくないものを忘れても平気になるために」(あとがきより)作られた短歌が、感傷的になりすぎない言葉が、たくさんの情景を浮かび上がらせる。

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