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街と人と社会構造

まちづくりや地方再生に関する議論は、コミュニティや人と人とのつながりを出発点とすることが多いですが、満薗勇さんの『商店街はいま必要なのか』(講談社現代新書)は商品流通の観点からその歴史と展望を解いています。
歩いていける距離で・必要なものがひと通り買えて・安売りはしないコンビニが、商店街の役割だったはずの部分のいくつかをカバーしているのではないか、という指摘は、とても興味深いのではないでしょうか。最後の章でコンビニの労働問題にも触れ、問題提起しています。
「商店街では買い物はしないが、なくなるのは良くない・さみしい」という、意地悪く言えば自分勝手な思いは何なのか…

但し、商店街としてどうすべきかの前に、個々の商店がまず商売として成立しているか、が大切です。利益を生むことにとことんこだわって活動してきた木下斉さんの『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)は、痛快すぎてぐうの音も出ません。
不動産オーナーが中心となって、民間主導でまちづくりを行うアメリカの取り組みを紹介し、自分たちが実践してきたやり方を、失敗例も含めてしっかりと語っています。「補助金は麻薬」「誰かが無理をする仕組みは、必ず破たんする」「必要なのはカリスマでなく、地域に再投資できるシステム」「行政と民間との間に必要なのは、緊張感のある連携」など、実践者としての力強い言葉にみなぎった本。評論家はいらない、当事者意識を持ってやるべきことをやる覚悟はあるか、と読者に問うています。

筒井淳也さんの『仕事と家族』(中公新書)は、社会学と統計学の手法を駆使し、副題になっている「日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか」に答えた好著。個々の価値観や倫理観からいったん離れ、制度や社会構造を他国と比較して日本的な働き方を探り、それが少子化・未婚化へと繋がっていく過程を、論理的に検証しています。そしてこの著者もまた、「お金を稼ぐことが社会にとって持つ意味をもっと積極的に考え、それを子供たちに伝えることは極めて重要」だと、語っています。


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