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言葉との距離の測り方

物心つく前に、アメリカ人の父と日本人の母に養子として引き取られた、シリア人の女の子。私はなぜここにいられるのか、ここにいても良いのか。恵まれた環境への屈折した感情。家族や友人・恋人、そして自分をも傷つけながら、葛藤を経てたどりついたのは、怒りや悲しみも自身の感情として受け止めそれを肯定すること。それは、わからないことに対してわかったふりをせず、世界の多様性に想いを寄せることでもあります。主人公の名前である『 i(アイ)』(ポプラ文庫)というタイトルには、どんな意味が込められているのでしょうか。
言葉と物語の力を信じて世界と対峙する西加奈子さんの小説に、毎回圧倒されます。

言葉の強さとは何だろうか。そんな思いで吉増剛造さんの『我が詩的自伝』(講談社現代新書)を手に取りました。戦時下の幼少時代から始まり、国内外の著名な芸術家や哲学者・作家にも影響を与える詩人となった現在まで、一気に語られています。「声」へのこだわりや、積極的に他者と交わることで詩を書きあげていくその姿勢を知ることで、引用される先鋭的な詩は、単に抽象的な単語の羅列ではなく、体験に裏打ちされ選び抜かれた言葉の塊なのではないか、と思うに至りました。

仕事でもプライベートでも文章を書くことがよくあるのですが、とにかく毎回苦労します。矛盾はないか、論理的か、伝えたいことにふさわしい文体になっているか。同じ悩みを抱える友人から、Tak.さんという方が書かれた『アウトライナー実践入門』(技術評論社)を教えてもらいました。アウトライナーとはアウトライン(概要)を効率的に編集し、文章を書き考えるためのソフトの総称です。
いきなり筋道の通った文章を書くのは、とてもハードルの高い作業です。まずはメモ書きから始め、項目ごとに分類し足りない部分を確認。考えを整理しながら文章をつなげていく。自分で書いた文章の構造が、視覚的にもわかりやすく表示されるので、仕事で報告書などをつくる機会も多い社会人はもちろん、ノートを取る必要がある学生にもおすすめです。


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