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【エッセイ】おはぎも沢山持っていく

 たまたま聴いていたラジオ番組は盆休みの話をしていた。なんとなく聞き続けているうちに話はどんどん派生して、子供時代に友人の家へ遊びに行く時に持参した菓子折りの話になった。
 「煎餅が一般的?」「おしゃれなお菓子のがええやろ、エクレアとか」「エクレアはなんか違う」「おはぎとかの方がテンション上がります」「はぁー?おはぎなんか持ってったら二学期からあだ名『法事』になるで」
 確かにおはぎは、こう、喉に詰まらせる可能性的なところから子供に持たせる茶菓子にはあまり適していないのではと思わなくはないが、それにしても「法事」は言い過ぎだ。

 そもそも、友達の家に遊びに行く時って菓子折りが必要なんですか……?高倉には友人がほとんど居なかったので、友人の家に遊びに行った経験がほぼ無い。幼馴染の家に数回行ったことはあるが、赤子の頃からの家族を巻き込んだ付き合いだ、菓子折りなんて他人行儀なやりとりは(もしや高倉が知らないところで父母が手を回していたのかもしれないが)したことがない。
 しかしよく考えれば、他人様の子供をお迎えするおうちにはそれ相当の負担がある。子供の安全に気を配る精神的な負担は勿論、場所の提供、喉が渇くであろう子供のためのジュース、クーラーをつけるなら電気代、ゲームをするなら電気代と、最近は通信費も勘定に入れるべきか?結構な負担だ。菓子折りで相殺できるか怪しい。
 となると、高倉は幼馴染一家に結構な非礼を働いていたのではないか……?他人の家に気紛れに遊びに行ってはいけないし、行くなら行くでおはぎの一つも持って行くべきだったのかもしれない……。

 幼馴染、元気にしているだろうか。引っ越してからは年賀状を送りあったり送り合わなかったりするくらいで、何処で何をしているのかも知らない。元気で生きていてくれたら嬉しい。
 そしていつか再会できたなら、十数年越しの菓子折りを渡そうと思う。

 

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