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【読書記録】Hurt people hurt people.

「誰でも、いつでも、どこからでも鋼の自己肯定感を育てることができる。そしてその自己肯定感は、一度高めたら、二度と下がらない」

鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない"方法

 鋼の自己肯定感を得られる本がAmazon Prime 会員読み放題対象になっていたので読んでみた。世の中、自己肯定感は高い方が何かと過ごしやすいらしい。無料で鋼の強度にできるならば、それに越したことはないだろう。

 自己肯定感とは、自己の有様を肯定できる力。自分の好きな部分も嫌いな部分も、すべて愛するべき自分なのだと受け入れること。何があっても一番に自分を愛することこそが、状況に左右されない、鋼の自己肯定感を手に入れるということなのである。
 という論に、この本は終始する。具体的な手段や思考方法を順序だてて説明してくれていて、明日からも自己肯定感を鍛え始めることができそうな気になる。親切な手順書だ。

 この本を読んで分かったのだが、高倉はどうやら結構自己肯定感が高い。鋼とまではいかないが、チタンくらいの強度はある気がする。
 そもそも、毎日文章を書いてnoteに公開し続けるなんてことは、自己肯定感が高い人間じゃないとできないのではないだろうか。発信したものが評価されないのが怖い、誤りを笑われたら怖い、反論されたら怖い。自己肯定感の低い人間はアウトプットに臆病なのだと、本の第一章にも書いてある。
 高倉は自分の評価を他人に委ねない。自分の価値は自分で決める、そして自分は最高ながら発展途上なのだと自覚している。

 しかし、他人に評価を求めなくても、高倉を評価しなかった人を傷つけてやりたいと願ってしまったことがある。

 英語で「Hurt people hurt people」という言葉がある。傷ついている人が、人を傷つけるという意味だ。

鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない"方法

 高倉は基本的に誰も傷つけたくないが、元恋人との関係を解消してからというもの凄まじい破壊衝動に苛まれていた。ゴミ箱は蹴り倒したし机の上のものもぶちまけた。元恋人をぶん殴りたかったし、完膚なきまでに傷付けたかったし、二度と立ち直れなくなって欲しいとさえ思った。ちょっと具体的な計画を立てるまでした。そうでもしないと腹の虫が収まらなかった。大事にしてくれると期待したのに、そうしてくれなかったことが許せなかった。
 この本のこの一文を読んで、そして続く一章を読んで、高倉はあの時傷付いていたのだとやっと自覚した。傷付いていたから、傷付けたくなっていたのだ。可哀想な人間だ。
 幸い高倉は暴力にも策謀にも走らず、罵詈雑言を交えない比較的穏やかな話し合いでもって溜飲を下げることができた。今のところ良好な縁を保つことができているが、話し合いの中で若干の嫌味を言ってしまったことをいまだに悔いている。此処でもしも報復に移っていたら自分を許せなかっただろうし、自己肯定感なんか地に落ちていたことだろう。
 その章は、こんな一文で終わっている。

 これを読んだ今日から、今から、これからあなたが傷つくようなことを言ったりしたりする人に出会ったら、それはあなたの落ち度では一切なく、その相手が単に傷ついているからだという気持ちで相手を見てほしい。かわいそうなのはあなたではなく、相手のほうなのだ。あなたはそのままで素晴らしく価値があるのだから、誰がなんと言おうと、あなたが傷つく必要は一切ない。

鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない"方法

 そうだよな、と胸に鋼の愛を抱く。願わくばあの子も、あの時の高倉は可哀想な化け物だったのだと断じてくれますように。

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