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【エッセイ】なめ茸の先のディストピア

 3COINSで400円のなめ茸を買った。めちゃめちゃ良いなめ茸に違いない。こういう細やかな贅沢が、限界社畜高倉を生かしている。最近職場の人間が嫌いすぎてストレス性鼻水が止まらなくなったけれど、お陰様でまだ生きている。

 ところで、なめ茸って何でできているのだろうか。なめ「茸」と言うくらいだから、少なともキノコではあるのだろう。なめこの親戚とかだろうか。わざわざ瓶詰にして売っているのだから、なめ茸をなめ茸にするには漬けこむ過程が必須なのだろうけれど、「なめ茸」という名前のキノコを何かしらの手法で漬けこんでいるのか、一般的なキノコを何かしらの手法で漬けこんで「なめ茸」にしているのか分からない。
 そもそもなめ茸、作り方が謎だ。なめ茸の味の殆どはキノコ本来の味ではなくて、調味料の味だということは分かる。ただどんな調味料で漬けているのかさっぱり分からない。これ、何の味なんだ……独特すぎて「なめ茸味」としか形容できない。それもこれも「なめ茸」っていうネーミングが不親切だからいけないのだ。「柴漬け」を見習ってほしい。

 困ったときのGoogle先生である。三秒で答えに辿り着きました。

一般的には、えのき茸の若い状態のものを、醤油で煮付けたものを指して「なめたけ」という場合が多いです。甘辛く煮てあり、とろみをつけてあることが多いです。繊維やビタミンなどが豊富でカロリーも低くヘルシーなところも嬉しい一品です。

日本のおいしい名物料理様より抜粋

 なめ茸、おまえ、えのき茸だったのか……!!
 全然わからなかった。言われてみれば、瓶の中で輝く白い筋は確かに細いえのき茸だ。インターネット曰く、若いえのきを煮詰めると出るぬめりが、あのなめ茸の独特の食感になるらしい。煮たえのき茸がぬめぬめするなんて知らなかった。
 それにしても、なめ茸の正体はえのき茸なのに商品名に「えのき」が一文字も入っていないのは如何なものだろう……。その上、なめこを思わせる「なめ」が入っている。紛らわしい。広告の紛らわしいは駄目だってJAROも言っているし、今からでも「えのきの醤油甘辛煮」とかに改名したほうがいいのでは。

 なめ茸に限らず、世間にはその正体が分かりにくいものが結構ある。高倉はラーメンに乗っているメンマが何でできているのか知らないし、カレーに入っている辣韭が何の植物のどこの部位なのか知らない。福神漬けって一体どこの神様を漬けたものなんだろうか。
 しかし、特に問題はない。なめ茸やメンマを作ろうとするなら材料と製法は知っておく必要があるが、高倉は食べる専門だ。食べるにおいては、例え正体が分からなくたって美味しければそれでいい。寧ろ、謎は謎のままにしておく方が味を損なわないかもしれない。カップヌードルの謎肉だって謎肉のままで美味しいし。

 嗚呼、こういう思考停止の先に、SF世界のディストピア飯があるのかもしれない。

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