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【読書記録】正義のヒロインの矜持を

 正直にお話しします。美少女戦士が傷ついて悶え苦しむ様に興奮します。
 あれは確かセーラーマーキュリーでした。鏡の中に対象を取り込んで魔物を生み出すタイプの悪の幹部に捉えられ、鏡に張り付けにされて、悪のエネルギーのような電流のような何かを通電され、痛みのあまり悲鳴を上げる。幼い頃に見たそのシーンが、そうなった経緯どころか物語のあらすじも殆ど忘れた今も尚、文脈から独立して、ずっと高倉の記憶の底にいます。
 セーラー戦士は正義の味方で、悪に絶対屈しません。自分が信じる正義を貫き、立ち上がり続けるのです。だからこそ視聴者は安心して、美少女と悪の組織が戦う様子を鑑賞することができるのかもしれません。何があっても、例えどんなにぼろぼろになっても、セーラー戦士は負けないのです。
 高倉は、立ち上がれない程ぼろぼろになっても尚、歯を食いしばって、降参も屈服も選択肢に挙げず、現状突破の為に頭を回し続ける正義のヒロインが本当に好きです。興奮します。

 幼少期にそんな性癖に目覚めてしまったものですから、ちょっとエロ本か動画でも探そうか、というときもついついそういうものを検索してしまいます。魔法少女が悪の組織にいてこまされている系です。
 世の中には強いヒロインが大好きな層が、やはり一定数いるようで、検索すると結構な量がヒットします。ヒット、そう、ヒットはしてくれるのです。
 ヒットはしてくれるのですが、それらに高倉が求める「ぼろぼろになっても尚歯を食いしばるヒロイン」が描かれるかと言うと、必ずしもそうではありません。ヒロインを拉致し、監禁し、あんなことやこんなことをするという内容。
 日曜朝のアニメであれば、ヒロインが劇的な復活を遂げて、悪を殴り飛ばして終わり。しかしエロとなると、そういうわけにはいかないのです。ヒロインは悪に屈し、時にはアヘ顔をさらして、悪の組織が寄越す快楽に溺れる。そうする方が、フィニッシュにたどり着きやすいのでしょう。

 エロとしての都合は分からなくないですが、それでもちょっと納得がいきません。悪に屈したヒロインなんて性的でも何でもありません。ヒロインの矜持を忘れないヒロインにあんなことやこんなことをして、そしてぼろぼろになったヒロインが矜持だけをよすがに立ち上がろうとするのがいいんじゃないですか。快楽堕ちしてエロいこと言いながら腰を振る正義のヒロインなんて、媚薬や洗脳でアヘ顔晒す正義のヒロインなんて、そんなの全然えっちじゃないです。興奮しません。そういうことじゃないんです、正義のヒロインって。

 漫画「魔法少女にあこがれて」は、そうした高倉のめんどくさい性癖を見事に満たしてくれる、素晴らしい物語でした。

 ひょんなことから(この表現ほんと便利ですよね)悪の組織の総帥になった女の子、柊うてなちゃんが、立ちはだかる魔法少女たちにあんなことやこんなことをするきゃっきゃうふふ漫画。可愛い絵柄とは裏腹に、これがどうしてR18指定じゃないんだろう、と首を傾げたくなるほど濃厚でアブノーマルな性的加虐シーンが続きます。
 柊うてなちゃんが魔法少女ガチオタなお陰で、魔法少女たちの信条を折ったり、悪堕ちを勧めたりということは一切ありません。魔法少女たちが傷ついて苦しんでそれでも折れない様を、安心してえへえへしながら眺めていることができます。これこれ、こういうのが見たかったんです。
 裸に剥かれてもエロいことをされても、絶対に矜持を捨てないヒロイン。諦めないで打開策を探し続けるヒロイン。歯を食いしばって立ち上がるヒロイン。素晴らしい。どんなエロよりエロいです。

 高倉は正義のヒロインではないので、あっさり性癖に屈します。現在11巻まで刊行されているのですが、うっかり全巻買っちゃいました。そしてあっという間に読破して、もっと読みたくて悶えています。辛い。苦しい。どこの悪の組織に魂を売ったら、この続きが読めますか?

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