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【映画記録】デブは戻らない

 巷で何かと話題の映画「"それ"がいる森」を観ました。以下、映画の本筋には触れませんが、若干のネタバレがあります。

 ストーリーは予告の通り、近所の森に「それ」がいる話。B級パニックホラー映画、もっと限定するとサメ映画を履修したことがある人が観る場合、展開は想像の範疇を出ません。実質サメ映画と言っても過言ではないかもしれない。いやぁ……、まさかあの相葉雅紀大先生主演の映画様に、こんなにちゃんとサメ映画の文脈をなぞって頂けるなんて……恐悦至極すぎて震え上がっています。先生はもっとお仕事選んだ方がよかったんじゃないでしょうか。
 一般的なB級パニックホラーと違うのは、グロテスクな演出が殆ど無い点でしょうか。パニックホラーは内臓を出せば出すほど、ゴアをゴアればゴアるほど良いという傾向がありますが、「"それ"がいる森」に関してはそんなこともなく、ストーリー上最低限の血しか出てきません。
 手指では足りない人数が殺され、子供に関しては遺体すら戻らないという目も当てられない悲劇の筈なのですが、台詞回しの陳腐さ、緊迫感を削ぐ映像演出、シャカシャカシャカシャカシャカ移動する「それ」、相葉雅紀先生から滲む緩さなど、ありとあらゆる手段を使って、事態の深刻さを感じさせない仕立てになっています。エンディングもそれはそれは牧歌的です。「それ」のファンサもあります。「"それ"がいる森」は、角を丸めたB級パニックホラー映画、と言えるでしょう。

 一つ言い添えるとしたら、これは「令和のデビルマン」に相当する映画ではないと思います。世間は大型シネコンにクソ映画が登場するたびに「実写版デビルマン」を引き合いに出す傾向がありますし、映画「大怪獣のあとしまつ」に関してはその揶揄も致し方ないとは思っていますが、「"それ"がいる森」に関しては言い過ぎだと思います。優しさでできたこの映画を、あんな下品と同列に並べてはいけません。
 映画「"それ"がいる森」は角の丸いホラー映画です。ホラー映画の入門編として、お子さんと一緒に観るにはうってつけの一本だと、眞木高倉は思います。


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