鬼滅の刃で中学英語#24~この訳ヘンだよ『鬼滅の刃』英語版~
こんにちは、緊急事態宣言を受けて、バタバタしてきた田中聖斗です。
今回は、ちょっと趣向を変えて、ここがヘンだよ『鬼滅の刃』英語版!をお送りしたいなと思います。
タイトルはおかしくない
英語版タイトルが、『鬼滅の刃』→『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』になったことについて、「おかしい!」「ヘン!」と言う人もいますが、実はこういう意図なんだよ、ということを別の記事で紹介していますので、そちらをご覧くださいませ。
➡#11 鬼滅英単語①『鬼滅の刃』はどう訳された?
簡単に言うと、英語圏には「Doragon Slayer」という、「ドラゴン退治物語」・「ドラゴンを倒す英雄」「ドラゴンを倒す聖なる武器」を意味する言葉があるので、それに沿ったということですね。
逆に、「Edge of Demon Destruction」みたいに直訳した方がヘンだったでしょうねぇ。
岩の呼吸がおかしいよね?
#19でご紹介した、呼吸法。
なぜか「岩の呼吸」の「岩=stone(石)」がヘンだよとお話ししました。
やはり、どうやって頑張って考えても、調べても、「岩=stone」にならない・・・。
同じジャンプで連載している『Dr.STONE』のstoneだけど、あれはメディーサによって石に固められたような状態だから、stoneで正解だけど、岩の呼吸は違うでしょと。
何か考えがあって、この英語版では「岩=stone」にしているんだ、と思うじゃないですか?
でも、下の、「岩」が登場するシーンでは、
If you can split this boulder, I will approve you for final selection.
(この岩を斬れたら“最終選別”に行くことを許可する)
訳:『鬼滅の刃』第1巻
「if」「can」「will」を使った非常にシンプルな文なので、中2の子なら読めると思いますが、ここで出てきた「岩」はどれかって、「boulder(発音)」です。
ingをつけると、あの、岩山を登る「bouldering(ボルダリング)」になることから、「boulder=岩」というのがわかります。
まぁ、見たまんま「岩」ですよね。
実際に「boulder」は、岩の中で特に大きなものを指すそうで、一般的な「岩」といえば、よく知られている「rock」が正解です。
なのに!
なぜか、
「岩柱=Stone Hashira」
「岩の呼吸=Stone Breathing」。
辞書などで調べると、「rock」がゴツゴツとした「岩」、「stone」は水などに削られてツルツルになった「石」になるのだという話ばかり。
ネイティブの人も同じような感じ。
・・・たしかに、「岩の呼吸」の登場時には、まったく岩の呼吸の技がないから、日本人みたいに「岩=ゴツゴツしたもの=マッチョな悲鳴嶼さん」だから当然「rock」、もしくは「boulder」じゃないかと思うハズなんだけど、なんでか、「stone」。
悲鳴嶼さんが手を合わせているし、手に仏教っぽい数珠を持っているし、服にも南無阿弥陀仏って書いてあるから、仏教に関わる岩=ツルツルのstoneとでも考えたのでしょうか?
(下記はイメージです)
極めてナゾだなぁ・・・と思って、「岩柱」の登場以降の次の巻を見てたら、こんなシーンが。
(Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.7)
岩=STONE、灰色=GRAY!
岩って灰色じゃないよな?? 茶色っぽくない?
・・・ということで、灰色の岩=石だろ!?・・・ってな感じで「stone」を採用したのでは・・・ないかと・・・いやいや。
もっとおかしい「お館様」
鬼滅の刃の主人公・炭治郎も属する、鬼を殲滅するための部隊「鬼殺隊」。
そしてその鬼殺隊士をまとめる若きリーダーが、産屋敷耀哉こと「お館様」ですね。
では、そのお館様は、鬼滅英語版でどう訳されているのか、「お館様」というワードの登場シーンから見ていきましょう(以下すべて同じ巻)。
Uh... I'm not sure about this.
あのぉ でも疑問があるんですけど…
The Master of the Mansion must be aware of this...
お館様がこのことを把握してないとは思えないです
(訳:『鬼滅の刃』第6巻)
※master=主(あるじ)、支配者(発音)
The Master of the Mansion!?
「mansion(発音)」は、日本語の「マンション」の語源ですが、英語での本来の意味は「大邸宅、館」という意味です。
だから、「お館様=館の主=The Master of the Mansion」となったのでしょうが、ナンカチガウ感・・・。
じゃぁ、そもそも「お館様」って何って話ですが、
「館」(広辞苑 第七版より)
①貴人・官吏などの宿泊する官舎。
②貴人の邸宅。やかた。
③貴人や豪族の宿所または邸宅。
④貴人の敬称。また、中世の大名の敬称。
なわけで、基本的には「殿(との)」みたいな意味ですよね。
確かに、鬼殺隊の総本山(本部みたいなもの)である大邸宅の主だから、「The Master of the Mansion」でも意味としては間違っていないんだけど、「お館様」は一番偉い人のことを指す、敬称なんですよね。
そもそも、「柱=Hashira」「隠=Kakushi」「日輪刀=Nichirin sword」としているのに、なぜ、「お館様=Oyakata-sama」とか、「主、君主」という意味のある敬称「lord(発音)」を使わずに、あえて「The Master of the Mansion」??
ナゾです・・・。
むしろ上記のように、「Master」だけじゃダメなのかと思うのですが・・・それだと英語的に「なんの?」ってなるからダメなんでしょう。だったら「lord」で良かったと思うのですが・・・。
いやぁ、難しいですね。
誰か分かったら教えていただきたいところです。
ちなみに、このシーンもフルで叫ばれています。
The master of the mansion has arrived.
お館様のお成りです
Welcome... My dear Demon Slayers.
よく来たね 私のかわいい剣士(こども)たち
(訳:『鬼滅の刃』第6巻)
漢字で考えると間違えやすい「お成りです」を、正しく、現在完了形の「has arrived(ただいま到着した)」にできているので、ちゃんと日本文化を理解した翻訳家なはずです。
なにせ、その後の、「よく来たね 私のかわいい剣士(こども)たち」を、「My dear Demon Slayers.(私の大切なデーモンスレイヤーたち)」と、「(鬼殺の)剣士たち=Demon Slayers」と#11 で紹介したように、英語圏の人にわかりやすいようちゃんと訳せているので、なにか、「The master of the mansion」である理由があって、こうしているわけがあるのでしょう。
たぶん。
本日のまとめ
・翻訳版は、たまにヘンなことがある
・でもそれが、本当にミスなのか、現地人は理解できる内容なのかはわからないこともある
・しかしそれも楽しもう
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