鬼滅の刃で中学英語#46~「this」と「that」と「it」の違いを完全に理解する法~
今回は「this」と「that」と「it」の違いです。
それぞれ別に見てるだけなら、「this=これ」「that=あれ」「It=それ」だよね?みたいな感じで、そう難しくは感じないかもしれません。
というか、そういう当てはめ方をしがちですよね?
でも、その違いを踏まえた「それ」の使い分けということを考えると、意外と難しかったりするものです。
たとえば、『鬼滅の刃』第1巻第1話にて、炭治郎が冨岡さんからに「なぜ(鬼になった妹を)かばう」と問われた後の下記のシーンの英語版を見てもらいましょう。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻)
S-sister... she's my ... little sister!
(妹だ 俺の 妹なんだ)
That is your little sister?
(それが妹か?)
※little sister=妹
見た目は確かに人間だけど、巨大化し、理性をなくし、人を襲う姿はまさに「妹」とは思えないだろう? という冨岡さんらしい冷静な口ぶりです。
さて、二つめの文に注目していただきたいのですが、日本語で「それ」といえば真っ先に思いつくのが「it」ですが、なぜこの文は「it」じゃなくて、「that」じゃなきゃいけなかったのかわかりますか?
「これ」「それ」「あれ」と「this」「that」
「this」「that」と「it」は、いずれも中学1年で習う内容ではありますが、意外とこの差を知らない人が多く、英語が苦手で、定期テストで40点以下という子はまず間違いなく、この違いがわかりません。
その最も大きな理由は、「this=これ」「it=それ/あれ」「that=あれ」と日本語で覚えたのが頭から離れず、訳にあてはめることをしてしまうからです。
しかし、前回もお話ししましたが、そもそも、日本語の「これ」「それ」「あれ」と、英語の「this」「that」とは、対象とする範囲が違うのです。
「これ」「それ」「あれ」の範囲のイメージ図
「this」「that」の範囲のイメージ図
英語には、日本語とまったく同じ意味での「それ」に相当する範囲を示す言葉がありません。
だから、「that」が、「あれ」だけでなく「それ」の意味も持つんでした。
でもちょっと待てよと。
「it」は「それ」と訳すことがあるけど、それは違うのか?
と思うかもしれません。
結論から言いましょう。
「it」にはたしかに「それ」という意味がありますが、「これ=this」に対しての「それ、あれ=that」のような「それ」ではありません。
まったく違う「それ」なのです。
「it」は違う次元の「それ」
「it」はどういうものかイメージ図でご紹介しましょう。
今までと違いますね?
実は「it」は、「this」や「that」とは違う地平に住む住人なんです。
あくまでも、自分と相手の間の話題にのぼった「それ」を指します。
だから、「this」や「that」をこの中に入れることは出来ません。
そもそも「it」は、同じ代名詞でも「人称代名詞」という、「this」や「that」が属する「指示代名詞」と異なるもので、意味は下記のようなものです。
人称代名詞は、話し手、受け手、および談話の中で指定された人や物を指す代名詞である。(出典:Wikipedia)
わかりやすく言うと、人称代名詞「it」は、「会話の中で出たものを指す」ということです(ネーミングがわかりにくいので改名してほしいですね)。
だから、
Is this your pen?(これはあなたのペンですか?)
-Yes, it is.(はい、そうです)
と、「it」は会話の「中」に登場するわけです。
若者言葉での「それな!」の「それ」が指すものと同じ、と言うとわかりやすいかもしれませんね。
「it」が「それ」の理由
『鬼滅の刃』のネイティブ英語版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』でも、その辺は当然のごとく間違えずに使っています。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.8』/原作『鬼滅の刃』第8巻)
Got it!
(はい!!)
「(I) got it」は「わかった」という定型表現ですが、「it=それ」を「got=得た(getの過去形)」という意味です。この場合の「it」は、「わかりましたか?」的な質問についてで、それ(=it)を心得た、という意味で、「Got it」となるんですね。
だから、「it」のイメージ図が、自分と相手の間の空間にあるもの(会話の内容を含む)を指しており、それを日本語的に理解するために、範囲の近い「それ」という訳をつけただけ、ということを理解しておくことが大切です。
この、日本語と英語の違いを理解してないから、かえってゴッチャになってしまう子が多いわけですね。
学校英語では「it」の存在を忘れて欲しくないので、あえて「it=それ」と訳をつけることが、余計ややこしくしているということもあるでしょう。
ですが、あくまで「it」は「it」で、先ほどの「Yes, it is」や「Got it」のように、実際には「それ」を省略できるケースや、「それ」と訳さずに、「これ」とか「あれ」の方が相応しいケースも実際には出てきます。
この辺はまた、「it」に絞った次回でご紹介していこうと思います。
「it」じゃなく「this」や「That」を選択するとき
たしかに「this」「that」「it」は全部代名詞ですが、「it」は、会話の流れで出てきたことを「それ」と指しているだけなので、使い方は基本的に話の流れの中で使います。
だから基本的に「it」から会話が始まることはありません。
そういった「役割の違い」を理解しておくと、英作文で「ここはthisじゃなくitだよ」と言われて×を受けることもなくなるでしょう。
一度話題に上ったら「it」、
そうでない最初のワードなら「this」or「that」なんです。
上記は単数なので、複数であれば、
一度話題に上ったら「they」、
そうでない最初のワードなら「these」or「those」ですね。
だから、最初の冨岡さんの言葉は「it」じゃなくて、「that」なんです。
炭治郎にとっては禰豆子を言葉に入れていたので「it」と同じ人称代名詞の「she」を使っていますが、冨岡さんにとっては、初めて会話の対象に入れたので「that」なんですね。
日本人は結構間違えがちですが、英語ネイティブの人が使い方を間違えることはありませんから、そういう意味でもネイティブ翻訳版は本当の英語の使い方の勉強になります。
「this」や「that」は主役になれる
そもそも、「this」や「that」は、ある物、ある人を「これ」「あれ」と指し示すために使う代名詞です。
日本語でもそうです。
「これは答えを見てやりましたよね?」
「あれは何でできているんだろう」
のように、「これ」とか「あれ」が指し示すものを強調して注目してもらいたいときに使う言葉ですよね?
なので、英語でも同じように使います。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.7』/原作『鬼滅の刃』第7巻)
Wake up! You're under attack!
(起きろ! 攻撃されてる)
A dream!
(夢だ)
This is a dream!!
(これは夢だ!!)
まさに教科書的な使い方ですね。
夢の中の世界で、夢であることを下の炭治郎が上の炭治郎に、いったん「A dream!=夢だ」として訴えかけているんですが、それをさらに強く言いたいために再度、「This is a dream!!」と、「this」を使って強調しているんですね。
ここで「it」を使わないのは、炭治郎が見ている「This」に注目してほしいからですね。言わば話の主役です。
だからこそここでは「it」は使いません。
「it」はあくまでも、会話の流れで何を指すかわかりやすくするためだけに使う、控えめな代名詞、言わば脇役なんですね。
なので、「Yes, it is.」が「Yes.」だけになっても問題が起こりません。
言わば、主役を張れる「this」と「that」は共に主張が強いが性格は正反対の兄弟、彼らと顔は似てるけど引っ込み思案の「it」はいつも脇役、ということなんですね。
彼らは「代名詞」の一族なので、遠目に見た感じでは「似てるな~」と思われますが、よく知ると「全然違うじゃん」ということです。
このように、日本語と英語で、同じように使える時と、同じように使えない時があるのは、それぞれがちょっとずつ違うからですね。
そういったことを楽しみながら学ぶと、英語がもっと好きになると思いますよ!
本日のまとめ
・「that=(人や物を示す)それ」
・「it=(話題に上った物を示す)それ」
・「this」「that」は目立つ存在にするために主役として使われる
・「it」は話の流れで便宜上使われる、使い勝手がよい名脇役。
ただ、たまに出番がないこともある(Yes, it is.⇒Yes.)
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