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鬼滅の刃で中学英語#44~実は奥が深い「This is ○○」~

割と基本なのにこれまでまったく取り上げなかった「this」についてお話しします。

一生使わない英語として有名な「This is a pen.」のやつですね。

ペンなんて、見りゃわかるじゃないかと。

何が「これはペンです」だ、と。

それでも、

「実際に『This is a pen.』を使ったよ!」

というツイートが一時期話題になりました。

まあ、これはかなりのレアケースですが、説明不要の「this is」を取り上げたのは、『鬼滅の刃』英語版でも使われているからですね。

「this」には二つの役割がある

ここで取り上げている、鬼滅英語版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』は、英語ネイティブによる翻訳本です。

ですから、教科書英語ではない、スラング的な表現も入った、全編英語の吹き出しになっています。

その中にもちゃんと、「This」を使った表現があります。
(もちろんペンじゃないです)

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.2』/原作『鬼滅の刃』第2巻

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This is a Nichirin Sword.
これが日輪刀
I forge this blade.
(俺が打った刀だ)
〈英文訳〉この刃は俺が打った
※forge=刀を鍛える、という動詞(発音
※blade=刃、ブレード(発音

こちらは最終選別試験に合格し、晴れて鬼殺隊士となった炭治郎のために、刀のことしか考えていない変人刀鍛冶・鋼鐵塚(はがねづか)さんが、日輪刀を持って来たシーン。

一つ目の「this」を使った文「This is a Nichirin Sword.」は、

this=これは
is~=~です

と、わかりやすくお手本のような使い方をされていますね。be動詞の前にある、「主語」になるから「名詞(代名詞)」ですね。

では、二つ目の文「I forge this blade.」の、「this」は何かというと、実はこれ、代名詞じゃなくて、「形容詞」なんです。

this=この

という感じで、主語になるような名詞でもないので、「~は」もつかないんです。

あくまでも、後ろに続く名詞「blade」を修飾しているんですね。

「This=これは」とは限らない

このように、主語にも使えるし、形容詞にもなる便利な「this」。

どちらにも共通するのは、まさに今、目の前にある特定のものを示す時に使うということですね。

これはなにも、ものに限ったことではありません。

「this=これは、この」と習いますが、それは昔の話。

今は、電話口での挨拶は「This is Taro.」と言うと習いますし、
他の人の紹介も「This is ○○=こちらは○○です」を使います。

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.』/原作『鬼滅の刃』第巻)

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This is Nezuko, my-
禰豆子は俺の……
〈英文訳〉これは禰豆子、俺の……

「This is a Nichirin Sword」と同じく、Thisが代名詞の主語になっており、物だけでなく、人に対しても「This」を使えるわけですね。

それでは、鋼鐵塚さんのセリフ、「I forge this blade.」のように、「this」を人に対しても形容詞のように使えるのでしょうか?

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.2』/原作『鬼滅の刃』第2巻)

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My name is Tamayo. This boy is Yushiro.
(私は“珠世”と申します その子は愈史郎)

使えますね。後ろの「boy」という主語を修飾するために、「this」が使われています。

つまり、

this〔名詞〕=これは、それは、こちらは
this〔形容詞〕=これ、それ、この、その

というように色んな訳語として使えるわけですね。

だから、「this=これ、この」とただ丸暗記するのではなく、目の前の身近な物や人を指すのに「this」を使う、ということを理解しておくことが大切です。

「This is a pen.」はなぜ使われる?

よく、「教科書にThis is a pen.なんて書いているようじゃダメだ」という批判がありますが、本当にそんな英語の教科書があるのでしょうか?

少なくとも今の教科書には書いてないし、私の記憶では、私の父がそんなようなことを言っていた記憶はあるが、私が使っていた教科書にそんな例文が載っていた記憶はありません(「Do you have a pen?」はあった)。

批判の多い「ゆとり教育」の時も、「円周率を3と教えている」と批判する人が多かったが、実際にそんな風に教えている教師などいなかったらしいし、教科書にもそんなことは一言も書いていなかったし、実際は計算を簡略化するために「3として計算してよい」としたのが、尾ひれがついて、「3と教える」と誤解されたように、「This is a pen.」も何か誤解されているのではないかと。

冷静に考えてみて、今は確かにペンが百円以下で買える世の中ですが、

そもそも、昔の日本には当然「ペン」はなかったわけでしょう?

だったら、昔の英語の教科書に「This is a pen.」が入っていてもなんらおかしくはない。

しかも、私の親世代が習ったということであれば、「ジスイズアッペーン」とか「掘った芋いじるな(What time is it now?)」などと、単語ではなく文章としての発音を習うための文でしょう?

その辺、どこにも情報がないなと思っていたら、noteに専門家からそのことを説明してもらったという話(と素晴らしい解説)があったので、ご紹介しておきます。

「This is a pen.」は英語ならではのいい例文

さて、「This is a pen.」問題は上記の記事をご覧頂くとして、なぜこれがいい例文なのかというと、「a pen」になっているからです。

察しのよい方は気づいていただけたかと思うのですが、我々は通常、英語を教科書の順に学ぶときに、「単数」から学び始めますよね?

だから、「This is a pen.」が、必要かそうでないかという視点で見がちですが、これはまぎれもなく、目の前にあるペンが1本」であることが前提になった文だということです*。

*正確にいうと、ペンというものは世の中にたくさんあって、その中の1本という意味。まさにそれしかないものなら「the」を使います。
参考:英語教師のための情報サイト「This is a pen.をバカにしない」

実際、これがペンが複数だったらなんと言うか?

「They are pens.」ですか?

不正解です。

確かに、「this=これ」「they=これら」という意味があるので、「they」を使うのは一見、正しく見えます。

しかし、「they」は「this」の複数形ではないですし、そもそも「they」は「he」や「she」「it」の仲間(というか複数形です)で、それが何であるかを事前に示しておかないと使えない代名詞(人称代名詞)なので、使い方も異なります。(詳しくはまた別途解説します)

かたや「this」は、同じ代名詞とはいえ「指示代名詞」というもので、先の禰豆子やら愈史郎やら、特定の人や物を表し、だから、先の例文のように、はじめましての場合は「this」を使います

「This is a pen.」がなぜおかしいのかというと、英語を習い始める日本人にとって、ペンがはじめましてという人はいないだろう、という前提の元にある批判です。

でもこれが、幼児が通うインターナショナル幼稚園だったらどうでしょう?

十分にありえますよね。

日本語で考えるからおかしくなる「this」

では、そんな「This is a pen.」を複数にした場合は本当にどう言うか?

These are pens.」もしくは「These are the pens.」です。

実際には、「These are two pens.」のように言うの方が一般的かと思いますが、それより大事なのは、「this」の複数形は「these」というところです

発音が「s」をつけた感じなので本来は覚えやすいですが、「they」とか「their」とか「there」とか、なんだか似たようなものをたくさん習うし使うので、結構「these」を忘れがちな人が多いです。

「This is ○○.=これは○○です」と丸暗記していると、後でたくさん出てくる「これら=they」の方が正しく感じ、「This is a pen.」を正しく複数形にすることすらできないわけですね。

日本語訳を前提に考えると、こういった間違いをしがちです。

大事なのは、日本語よりも、「何を表す言葉なのか」ということ。

あくまでも、「this」の意味を理解しつつ、扱う対象物の数により、

単数の時⇒this(ðəs)
複数の時⇒these(ðiːz)

と使い分けることを忘れないようにしましょう。


これを「これ=this」「これら=these」と覚えようとすると、同じ日本語訳になる「これら=they」でも置き換え可能になるような気がして失敗しがちですが、置き換えは出来ませんから注意して下さいね!。

まぁ、学校英語で、「this」と「these」を一緒に覚えさせないからいけないんですが。

絵を見せながら、「This is an apple.」「These are two apples.」とやってれば、そんなミスは絶対に起こりませんけどねぇ。英会話ではやりますけど。

英語で英語を覚えるって大事なことです。

本日のまとめ
・「this」は主語になるような名詞と、主語を修飾する形容詞がある
・「this」の代名詞は「これは、それは、こちらは」
・「this」の形容詞は「この、その、これ」
「this」の複数形は「these」で代名詞にも形容詞にもなる(theyではない)

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