鬼滅の刃で中学英語#45~「this」と「that」の違いと使い方~
前回「this」をご紹介しましたが、
今回は「that」です。
「that=あれ」なんで、カンタンじゃん!と言われてしまいそうですが、では、「that」の複数形はなんですか?
すぐ出てきますか?
「this」と「that」の本当の違い
その前に、改めて「this」と「that」の違いを見ていきましょう。
これは英語が苦手な子でもほぼわかる違いですね。
this=これ
that=あれ
と訳されますから、「あ、距離で違うんだ」というのがすぐわかります。
でも、日本語ではなく、英語の概念で理解してほしいですね。
というのも、これを日本語で理解していると、「this」と「that」の違いはわかっても、「it」との違いがわからない、説明できないからです。
「this」と「that」はともに指示代名詞で、その名の通り、何かを指し示す役割を持つ語です。
そして、「this」と「that」は反対の意味を持つことから、それぞれ違う範囲の物を指し示すわけですね。ここ重要です。
それをイメージ図にするとこんな感じです。
左側の人間が自分で、黄色く塗られた範囲が「this」の範囲、
それ以外の緑色に塗られた部分が「that」の範囲になります。
つまり、「this」の範囲じゃなかったら「that」なんです。
そして、「this」は自分の手に届く範囲のことを指し示すので、自分の手に届かない範囲だったら「that」になるので、
That is my bike.=あれ/それは私の自転車です
That is Mt. Fuji.=あれは富士山です。
というように、近くの自転車から遠くの富士山まで「that」を使って表すことが出来ます。
ちなみに、「that」には「それ」という意味もあるので、実際には、
this=これ、この
that=あれ、それ、あの、その
という訳になるのが正解ですね。
このように、「that」には、「あれ」以外にも「それ」、「あの」以外にも「その」の意味があり、ここに、英語と日本語のややこしい違いが隠されていることはあまり知られていません。
「これ」「それ」「あれ」
国語の授業で
「こ・そ・あ・ど」
という言葉を聞いたことはありますか?
「これ・それ・あれ・どれ」(代名詞)
「この・その・あの・どの」(連体詞)
「こう・そう・ああ・どう」(副詞)
「こんな・そんな・あんな・どんな」(形容動詞)
で表現される指示語の集まりの略です。
日本人は無意識に使っているので、とりあえずここでは細かい所は覚える必要はありませんが、それぞれ意味が違う、というところはわかっていただけるかなと思います。
たとえば、
この自転車(これ)
その自転車(それ)
あの自転車(あの)
という言葉を比べると、それぞれ意味が違うのはわかりますよね?
品詞が違っても、「こ・そ・あ」については、それぞれ同じものを表しているんです。
これをイメージ図にしたのがこちら。
自分に近いものが「これ」、
相手に近いものが「それ」、
どちらでもない遠いものが「あれ」
なんです。
(「どれ」は、複数を指すので排除)
「これいいでしょ?」なら自分の物の話だし、
「それいいね」と言えば相手の物を指すし、
「あれなんだっけ」と言えば、自分でも相手でもないもの(の中の相手側にあるもの)を指します。
ようするに「距離」なんですね。
実際、辞書などで調べても、
「これ(近距離)」
「それ(中距離)」
「あれ(遠距離)」
と書かれており、それぞれ別の漢字が割り当てられています。
(これ=此、それ=其、あれ=彼➡#25で解説しています)
普段我々は無意識に使っていますが、日本語はこうなんです。
英語の「これ」「それ」「あれ」
では英語では?
最初に紹介したイメージ図をもう一度見てみましょう。
・・・気づきましたか?
英語には、日本語の「それ」にあたる相手の範囲にある物を指し示す語がなく、「自分の範囲=this」「自分以外の範囲=that」で表しているんですね。
だから、「this」には「これ」「この」と、「こそあど」の「こ」だけ割り当てられているのですが、「that」には「あれ」「あの」だけでなく、「それ」「その」も割り当てられているのです。
これはネイティブの『鬼滅英語』版でもきちんとそれを反映しています。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻)
S-sister... she's my ... little sister!
(妹だ 俺の 妹なんだ)
That is your little sister?
(それが妹か?)
※little sister=妹
ここで冨岡さんは、鬼になった禰豆子のことを「それ=that」としていますね。
前回#44でお話ししたように、「this」が物にも人にも使うように、「that」も物だけでなく、人にも使えます。
ただ、この場合は、原作では「それ」に傍点(・)がついていたので、まさに、物扱いの意味で「that」を使っているというのも、日本語の「それ」と同じですね(英語版は傍点じゃなくて斜体になっています)。
なお、「that」を使った疑問文は通常、「Is that~?」となりますが、ここは丁寧に聞く疑問文ではないため、通常の語順のまま最後に「?」をつけた疑問文になっています。
(詳しくは#33「肯定文なのに疑問文?英文法と英会話の違い」)
ただ、そうなると「it」ってなに?「それ=it」じゃないの?
・・・そう思った人も多いと思います。
その辺はまた次回お話ししますね。
「that」で大事なのは、距離感
冒頭の「thatの複数形は?」という問いの答えですが、
「that」の複数形は、
「those」
が正解です。
実際に使われているシーンをご紹介しましょう。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.8』/原作『鬼滅の刃』第8巻)
I know those earrings.
(その耳飾りを俺は知っている)
※earring=イヤリング、耳飾り
炭治郎の耳飾りは両耳についていますので、複数である「those」にしなければならないという良い例です。
これが、炭治郎の耳飾りを触っていれば「this」の複数形「these」でもよいのですが、指を指して言ってますから、離れていますよね?
だから、「that」か「those」。
炭治郎の耳飾りは2つつけているので、「those」を使うのが正解なんです。
「this」の複数形は「these」なので、形も似ていてわかりやすいですよね。
この関係をまとめると、
単数/複数
近い:this(これ)/these(これら)
遠い:that(あれ)/those(あれら)
イメージ図にすると、
こんな感じですね。
とにかく、
単数で「this」じゃなかったら「that」
複数で「these」じゃなかったら「those」
という感覚を持っていれば、「itだったっけ?」「thatだったけ?」と悩む必要はありません。
この辺はまた次回ご紹介しますね。
本日のまとめ
・近い人・物を指すのは、単数なら「this」、複数なら「these」
・遠い人・物を指すのは、単数なら「that」、複数なら「those」
・「that/those」は、日本語と英語の範囲の違いから、「あれ/あれら」「それ/それら」の二つの意味を持つ