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映画「天国は待ってくれる」について

※本テキストは、この映画のネタバレを含みます。

映画」を愛するか?「映画」に愛されるか?

2024年5月、DVDレンタル(DMM)にて鑑賞。
ルビッチ作品は、数多く観ており、この映画もかつて観た記憶があるが、内容はほぼ忘れていたので、あらためて観た次第。
1943年公開のエルンスト・ルビッチの晩年に近い作品。
といっても1947年に55歳で亡くなっており、51歳頃の作品となる。
ということは、撮影時は、既にワタシより年下である。
それなのに、それなのに、この円熟した味わいは何たることか!!!
多くのルビッチ作品は、その展開に度肝を抜かれること多いのだが、この映画は、全体的に緩やかにストーリーが進行する。
これといった展開のトリックなどはほぼない。
わずかに、はじめての二人の出会う書店で、マーサが探していた(のちに購入した)本が、最終盤、再度登場するところは、素直に心揺さぶられる。
気になるのはただ一点、マーサのヘンリーへの本当の感情である。
もともとは、ヘンリーのいとこのアルバートと結婚予定であったが、ヘンリーに心変わりする。
その10年後に、突如、「何かの理由」で、家を出る。
そして、カンザスの故郷に実家になぜかアルバートと戻るが、迎えに来たヘンリー親子にあっさりと付いて行ってしまう。
このあたりのマーサの心情は、よくわからない。
詳細は、多く語られないのだが、おそらくはヘンリーの女たらしぶりに辟易し、10年を機に家を出たようだ。
ヘンリーは自身の過ちを恥じ、映画の冒頭で、閻魔大王に地獄行きが妥当と思い、対面している。
だが、結局は、マーサは幸せだったのではないか?というのが、閻魔大王の判断であった。
いわば、この映画は、全体として、どうでもよいようなストーリーなのである。
楽観性に貫かれていると言ってよい。
しかし、これこそ映画の至福というような時間を感じることができる映画が他にあるだろうか?
それは、なぜか?
ワタシがそう思える理由は、好きな映画に対して寛容であるからではなかろうか?
つまりは、エルンスト・ルビッチに心射抜かれているのだ。
逆に、受け入れられぬ映画には、ひどく冷たくあしらってしまう。
まさに、この映画でのヘンリーの好き嫌いの激しい「女好み」と同じである。
映画を観ることの至福とは、ルビッチの映画を観る行為のことを指す。
同様にヘンリーにとっての恋愛は、マーサをおいて他になかった。
ひどく楽観的に展開するこの映画は、映画にある種の癖愛的な何かを持つ者のための映画だとも言える。
最近「悪は存在しない」という題名の映画があるらしいが、映画を愛する者、もしくは、映画に愛される者は、「天国は待ってくれる(Heaven Can Wait)」を観た方が幸せになるのではなかろうか?

2024年5月24日UP
※このテキストは、筆者がYahoo!検索(旧Yahoo!映画)に投稿したものを転載したものです。

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