記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「華氏451」について

※本テキストは、この映画のネタバレを含みます。

これはSF「映画」と言えるのだろうか?

2024年4月、DVDレンタル(DMM)で鑑賞。
トリュフォーの作品は、数多く観ているのだが、この作品は、未見だったため鑑賞した。
まず、何も予備知識を持たず、単に観ていなかったという理由で観たため、内容がSFということで驚いた。
未来という設定で、吊り下げ式のモノレールやら、薄型テレビなど出てくるのだが、現実に存在する2024年に観てしまうとなんとも滑稽に見えてしまうのは致し方ない。
ただ、薄型テレビの大きさや佇まいは、極めてリアルであった。
だが、映画の内容に話を移せば、極めてチープと言わざるを得ない。
同じようなSF映画「アルファヴィル」を撮ったゴダールがトリュフォーと疎遠になったというのも、この映画を観れば、充分に理解できるというものだ。
おそらく予算がかなり少ないはずの「アルファヴィル」が見事な映画として成立されているのに対し、「華氏451」は脆く崩れそうな崩壊寸前の映画のように見えた。
「アメリカの夜」のように豊潤な映画愛に満ちた映画を撮った監督と同じ監督が撮った映画とはとても信じがたい。
ただ、個人的には、トリュフォーのいくつかの映画は、まったく受け入れがたいため、本作品もそのひとつということだろう。
いくつかの映画とは「大人はわかってくれない」「突然炎のごとく」なのだが、逆に、「ピアニストを撃て」「アメリカの夜」「隣の女」などは大好きな映画であり、当たり外れが激しいのが、ワタシにとってのトリュフォーなのだ。

ただ、この映画は、トリュフォーの作品歴の中でも初期の1966年に制作されている点に注目すべきである。
評伝などによれば、「華氏451」「柔らかい肌」の時期は、トリュフォーにとって困難な時期であったらしい。
時代を経て、DVDというメディアで観ている観客からすれば、そんなことは理由にならない。
何が問題なのか、ことさら細かく指摘するまでもなく、これは「映画」になっていないとさえ思えるのである。
学生映画の延長かというふうにも見える。
ただ、同じく評伝によると、書籍「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」が制作されたのもこの頃であることも興味深い。

トリュフォーの映画監督としての本領が発揮されるのは、この時期を経てからかと思われる。

2024年5月30日UP
※このテキストは、筆者がYahoo!検索(旧Yahoo!映画)に投稿したものを転載したものです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?