tkEzaki

東大先端研特任講師 兼 株式会社infonerv Co-founder / Presi…

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東大先端研特任講師 兼 株式会社infonerv Co-founder / President ←JSTさきがけ/Stanford客員研究員←NII←UT航空。数理データ解析の専門家です。『データ分析のための数理モデル入門』,『分析者のためのデータ解釈学入門』(ソシム)。

最近の記事

PERFECT DAYS ー自分の「世界」に閉じこもる葛藤

先日、遅ればせながら映画『PERFECT DAYS』を観に行って来た。カンヌ国際映画主演男優賞を受賞するなど評価の高い映画だ。期待に違わぬ素晴らしい作品だったので、自分なりにどういう作品だったか整理してみたい。(以下ネタバレとなるので要注意) 安住の地としての平山の「世界」主人公の平山は都内に住む初老の独身男性である。ボロアパートに暮らし、公衆トイレの清掃員の仕事を生業としている。清貧な生活を送る平山だが、悲壮感は全くなく、寧ろ充実した日々の様子が生き生きと描かれる。毎朝決

    • ビジネス書を出版するという夢が叶った話

      出版この度、一般向けビジネス書『数理モデル思考で紐解くRULE DESIGNー組織と人の行動を科学する』を上梓することができた。 この本について語りたいことは山ほどある。本作は私の著作としては3作目だが、今までの2作はいわゆる技術書だったから、ビジネス書としては1作目である。実は、それだけでなく、本作の内容は10年ほど前から私が温めつづけてきたもので、真の意味での1作目なのだ。今でこそ、本を書く機会を頂けるようになったが、10年前、本を書く実力も知識もなく、知名度も皆無の学

      • Wordの音声読み上げ機能で校正したらすごく良かった話

        文章に誤字脱字はつきものだ。書いているのが短い記事であれば、丁寧に読み直せば大抵の間違いは排除できる。しかし、これが10万字を超えるような文章になってくると(少なくとも私にとっては)話が違ってくる。 分量が多いので、まず集中力がもたない。読み直している途中に精度高くチェックできている部分とそうでない部分が生じ、後者において誤字脱字や違和感のある表現が生き残る。そうするとまた何度も全体を読み直さなければいけなくなるのである。 自分で音読するのも一つの手だが、それでも問題を完

        • 自分の論文と同じテーマの捏造論文を見つけたので通報してみた

          ある日、google scholarから気になるタイトルの論文がオススメされてきた。タイトルを見る限り、私が学生の頃に書いた論文に非常に近い話のようだ。 この論文は、とある確率モデルの振る舞いについて計算したものだ。この分野では、厳密に計算できるモデルは限られているので、解けることが知られていない(現実的に意味のある)モデルを提案して解くと、研究成果として認められるという文脈がある。 似ている内容 さて、この論文で提示されているモデルだが、私の論文で昔提示したものと酷似

        PERFECT DAYS ー自分の「世界」に閉じこもる葛藤

        • ビジネス書を出版するという夢が叶った話

        • Wordの音声読み上げ機能で校正したらすごく良かった話

        • 自分の論文と同じテーマの捏造論文を見つけたので通報してみた

          あたりまえのタスクプランニングをしたら想像以上に良かった話

          やったこと最近タスクが色々な方向に増えてきたので下記のようなプランニングを始めてみました(特段すごい方法とかではなくて、至って普通の内容です)。これについて簡単にシェアしたいと思います。 1. 半年分くらいの予定をざっくり決める まず半年分くらい、今やることが決まってるプロジェクトとか、やりたい目標とかを決めて、大体いつやるかを書き出します。この時点で詰めすぎると想定外のタスクが入ってきたら(絶対入ってくる)詰むので気をつけます。 2. 月初にその月の予定を決める 毎

          あたりまえのタスクプランニングをしたら想像以上に良かった話

          データ解釈学本を書いた話

          こんにちは、江崎です。大変ありがたいことにご好評いただいている、『分析者のためのデータ解釈学入門』(ソシム)の著者です。今回は、この本ができあがった経緯、どういうことを考えて作られた本なのかを紹介してみたいと思います。ただ、思いつくままに言いたいことを取り留めもなく書くだけですので、その点ご容赦頂ければ幸いです。 ちなみに、前作『データ分析のための数理モデル入門』(ソシム)の執筆に関する裏話やこだわりポイントは以前書いていますのでよろしければこちらもどうぞ: 本書を書くこ

          データ解釈学本を書いた話

          株式会社infonervを設立した話

          この度、情報技術で社会を変革する会社、株式会社infonerv(読み:インフォナーヴ)を設立しました。 この記事では、どういう考えで会社設立に至ったのか、私がこれから何をしたいのか、といったことについて現在書ける範囲で記録しておきたいと思います。 私についてこの記事をわざわざ読んでくださっている方はある程度ご存知かもしれませんが、私は現在(も引き続き)東京大学先端科学技術研究センターの先端物流科学寄付研究部門というところで特任講師をやっている、数理データ解析を専門とする研

          株式会社infonervを設立した話

          数理モデル本を書いた話

          こんにちは、江崎です。大変ありがたいことにご好評いただいている、『データ分析のための数理モデル入門』(ソシム)の著者です。この本、結構こだわりと実験的な仕掛けを散りばめて作ってあるのですが、このタイミングで種明かしというか、どういうことを考えて作られた本なのかを紹介してみたいと思います。 この本を書くことになった経緯ある日、私の元にソシムの編集の方からメールが届きました。なんでも「数理モデル」というテーマで本を書けないかとのこと。なぜ当時(今も別に無名ですが、今より)無名だ

          数理モデル本を書いた話