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情緒への超合理性、佐藤可士和展からみるプロフェッショナルサービスの真髄

最近ラクスルの創業者である松本さんのこのTweetを拝見したことから、佐藤可士和展に興味を持ち、先日国立新美術館を訪れてみた。

私自身はクリエイティブの世界に明るいわけでもないのだが、展覧会で実際にそのアウトプットとプロセスの一部を目の当たりにし、大いに刺激を受けてきた。

今のDX支援の仕事にも繋がる重要なエッセンスを得られたと感じており、自分なりに感想をまとめてみようと思う。

1. 「想いの輪郭」をデザインする

佐藤可士和氏の作品は、事前情報がなくても「その企業らしさ」「そのプロダクトらしさ」が自然と感じ取れるものが多い。なぜこういうコピーになっているのか、こういうデザイン構成になっているのか、素人の自分であっても作品を眺めて考察してみると、仮説がクリアに浮かんで来るのだから面白い。

クリエイティブワークにおいて、顧客及びエンドユーザーなどステークホルダーにとっての本質な価値を突き詰めるプロセスを最も重視しているからこそではないだろうか。

佐藤可士和氏による創作のプロセスは、必ず対話による顧客理解から始まっており、彼の書籍等では昔から「問診力」の重要性が説かれている。ユニクロのクリエイティブを担当するようになってから、ファーストリテイリングの柳生さんとの長期の1on1エピソードは有名である。

" ニューヨークにユニクロが世界初のグローバル旗艦店をオープンしたのは2006年。そこからの快進撃の陰には、最初に出会ってから15年間毎週早朝から始まる、ふたりのOne to Oneの時間がありました。"

課題の本質の「種」はすでに顧客のなかに存在しているが、気づいていない/言語化されていないことも多い。対話を通して、ときには仮説をぶつけ合うことで、顧客の想いを整理し、デザインでかたちにする。展覧会でも「ふじようちえん」のプロジェクトで、そのプロセスなどが丁寧に解説されているので、ぜひご覧いただきたいと思う。


2. 「最上の長所」を引き出す

展覧会にはさまざまな作品が展示されているが、そのなかでもセブンイレブンのプライベートブランドのデザインは圧巻だった。当時で既に1,000を超えるアイテムが存在するなか、佐藤可士和氏はその全てのロゴやパッケージデザインとフォーマット作りを手がけており、そのサンプルが展覧会で公開されている。

数千を超える詳細なデザインパターンだけでも驚きなのだが、商品撮影などのオペレーションにかかるレギュレーションまで作成されている。普通の企業ではこのルールを守るだけで疲弊してしまい、デザインの良さを活かせないと思うのだが、詳細なオペレーションを大規模に、徹底的にやり切ることこそ、セブンアンドアイグループの真骨頂であるはずだ。

その企業の強み/カルチャー/現場の担当者の仕事ぶりなど、リアリティを持って想像できていなければ、セブンアンドアイグループでなければ、このようなアウトプットになっていないのではないか。少なくともそう感じられる作品群だった。

また今治タオルなどは、より分かりやすく、クリエイティブによってプロダクトの唯一無二の長所を際立たせることができた案件だ。「安心・安全・高品質」で「吸水性がいい」という長所に対して、クリエイティブを「白」に統一することで、ユーザー目線で直感的に理解できるものに刷新することに成功している。


3. 「自分らしさ」に芯を通す

展示作品の解説などを見聞きする限りでは、徹底的な顧客本位を貫かれている印象を受けるが、具体的なデザインでは「自分らしさ」を最大限表現されている。今回の展覧会のコンセプトにもなっているが、「LINES」と「FLOW」は佐藤可士和氏のワートワークにおけるアイコンでもあるらしい。

この2つ(「LINES」と「FLOW」)に関するコンセプトムービー/アートが展示されているエリアがあるが、そこを見た後にもう一度展示作品を振り返って見てみると、どの作品も直線群とその時間/状態遷移を表すような表現が散りばめられていることに気づく。

直線は自然界に存在しない概念である「LINES」と、当たり前で自然な概念である「FLOW」という一見異なるものを同じクリエイティブで表現することに彼なりの理由があるのかもしれない。そういったこだわりが作品間での一貫性をもたらす軸になっており、彼のオリジナリティの核にもなっているのだと思う。


プロフェッショナルサービスのあり方

佐藤可士和展からクリエイティブワークに関して、3つのエッセンスを感じ取ることができたのだが、これはシンプルに「情緒への超合理性」の追究なのではないかと思う。

1. 「想いの輪郭」をデザインする
2. 「最上の長所」を引き出す
3. 「自分らしさ」に芯を通す

また戦略コンサルティングでも、システム開発でも、プロフェッショナルサービスであれば、本質的には似ている。文字にすると当たり前のことなのだけれど、具体的に実践して結果を出すのは本当に難しい。

どんなプロダクトを作ることが最も顧客の価値になるのか、組織としてその問いの答えを追求し続けると、明確な指針と思想が重要になると日々感じている。たとえ顧客の要望すべてを完璧にかなえたとしても、ビジネスとしてうまくいくとも限らない。

佐藤可士和展に訪れ、彼の書籍などを読み漁った結果、その一つの答えを見せてもらったような感覚になり、自社ではどうあるべきか、改めて深く考える良い機会になった。

佐藤可士和さんやSAMURAIの方々には、ぜひいつかお会いしてみたいところ。

" アートディレクションというと、クライアントの持ち味に関係なく、虚偽のイメージを作り上げるのでは、と思われることも良くありますが、そうではないのです。クライアントと綿密にコミュニケーションを重ねることで、答えが見つかる。それを的確に表現することで、商品と世の中もスムーズにコミュニケートできるようになるのです。"

" 完成した広告やシンボルマークに対して、クライアントからはよくこういう言葉をいただきます。「自社のブランドや商品に、こんな魅力があったとは気づかなかった。」"

佐藤可士和の超整理術より抜粋

注)トップ画像は佐藤可士和展にて筆者が撮影

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CEO@ROUTE06(ルートシックス)。経歴:日本政策投資銀行、ドリームインキュベータ、スマービー(Founder&CEO, acquired by stripe-intl)、ストライプデパートメント(取締役 CPO&CMO)、デライトベンチャーズ(EIR) 。東北大院卒。