産業DXを加速する「Marketplace as a Service」企業へ
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産業DXを加速する「Marketplace as a Service」企業へ

遠藤 崇史 / Takafumi Endo

ROUTE06(ルートシックス)は今月末で2期目が締まり、来月から第3期に入る。初年度は創業準備期間であったが、今年は法人として本格スタートした年だった。まだまだ小規模の組織ではあるものの、去年の今頃に比べて社員数も倍増し、具体的な案件のプレスリリースを出すなど、大手企業との取り組み事例もいくつか公表することができた。

創業前に思い描いていた姿よりも、仕事の機会もチームメンバーも多様で面白く、会社は順調に立ち上がったといえる状態かもしれない。売上高や営業利益などの財務面でも確かな実績を示すことができたと思う。

一方で、エンタープライズ・ソフトウェア市場全体を俯瞰してみると、まだほんの一部の機会にしかリーチできていない。会社のポテンシャルをまだまだ活かしきれていないと反省することも多い。ただこんな小さい会社であっても上記のDX案件に参画できるなど、市場は機会に溢れている。

そのような状況を踏まえ、この記事ではROUTE06のこれまでを少し振り返りながらも、これから目指す方向性と来年リリース予定の自社プロダクトの概要などついて、簡単に紹介していきたい。

多様な案件のシンプルな共通項

ROUTE06ではこれまで大手企業を中心に様々なDX案件を支援してきた。主な事業内容は、デジタルプロダクトの立ち上げに必要なサービス企画/デザイン/ソフトウェア開発及びその提供であり、リリース後はデータ基盤の提供をはじめとしたグロース支援も行なっている。

率直にいえば、良くも悪くもその事業の成功のために必要なことは何でもやってきた。ステコミや役員会向けに戦略コンサルフォーマットのスライドで説明することもあれば、規約/契約内容や経理処理なども一緒に検討することもあるし、コンテンツ作成やツール選定/設定などのマーケティング支援もするし、取引先候補の紹介や営業への同席など様々である。具体例を挙げるとキリがない。

プロダクトマネジメント/UXデザイン/データ解析など、SNSなどで話題になりやすい業務も当然やるのだが、大手企業のDXの現場では上記のような泥臭さや柔軟性も求められる。理屈や権威では動かないもの/予算では埋められない余白などをどうにかしていくことも我々の「プロフェッショナルサービス」の大事な価値である。

一見すると業界・業種・機能などに一貫性がなく、何でもやっているように思えるかもしれないが、実はどの案件にもシンプルに一つの共通点がある。立ち上げるプロダクトが「マーケットプレイス型」であることだ。

One-sided/Two-sided Marketplace Model

あらゆる産業で「マーケットプレイス」を創出

ひとことに「マーケットプレイス」と言っても多種多様である。主体別:B2C/B2B/C2C、商材別:消費財/産業財/コンテンツ/サービス、構造別:One-sided/Two-sidedなど類型も様々だ。

例えば、事例としてご紹介したそごう・西武のメディア型OMOストアCHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)は、リアルストアとオンラインストアが一体となっているが、消費財や日用品を扱うB2Cマーケットプレイスとしては分かりやすく、多数のD2Cブランドと多様な消費者とのマッチングを実現するものだ。

CHOOSEBASE SHIBUYA: OMO Store and Multi-Vendor

また三菱マテリアルのE-Scrap取引プラットフォームMEX(メックス)では、買い手が個社に固定されてはいるもの、E-Scrap(廃電子基盤)の売り手となる取引先も、その商材の取引単位も、国内外で広く分散している。特殊な商材を扱っているので、少しイメージしにくいかもしれないが、これも一つのB2Bマーケットプレイスである。

MEX: Global Trading Platform and Single-Buyer Model

プレスリリースなどで公表はしていないが、もう少しシンプルに分かりやすい食品のECモールであったり、部品などの産業財の取引マッチングサービスなど、ROUTE06ではその他も様々な「マーケットプレイス」を手掛けてきた。

toCでもtoBでも、システム的には商品カタログ/ベンダーマネジメント/在庫管理/物流/決済/アフターサポート/基幹連携など汎用化可能なモジュールがあり、ビジネス視点でも意外と異なる業界でも共通点が多いと感じることがある。

特定業界の既存業務については、我々がどれだけインプットと経験を積み上げたとしても、当たり前だが顧客企業の方が圧倒的に詳しい。我々の強みの一つは、ドメイン知識のキャッチアップを前提としながらそれ以上に顧客企業に他業界の先進事例などの知見を共有できることだと考えている。様々な業界・商材の「マーケットプレイス」の立ち上げを通して、業界を跨いだ幅広い知見を獲得してきたことが価値になりつつある。

これからはじまる大手企業の「攻めのDX」

ここ数年でデジタル・トランスフォーメーションは一気にバズワード化し、ほとんどのIT関連サービスに「DX」のタグがつけられるようになってきたが、それだけ需要側も供給側も盛り上がり続けている証左でもある。

SMB(Small and Medium Business)の領域では、国内外のHorizontal SaaSの普及が本格している。コスト効率化の手段は一気に増えてきた反面、SaaSに業務を合わせる意思決定や自社/自部署に合うプロダクトを選定する目利き力などが求められている。

エンタープライズの領域では、相変わらずグローバル企業のプロダクトが主役のままである。SalesforceやMicrosoftなどの製品に加え、ServiceNowやOutSystemsなど$10Bを超える時価総額がついた新しいエンタープライズ・ソフトウェア企業のプロダクトを目にすることも増えてきた。

業界/業務/規模などで差はあれど、既存業務の簡便化/コスト効率化を目的とした「守りのDX」は着実に進捗している。それに対して、デジタル化によって新しい売上を創出したり、既存の商取引をより活性化するような「攻めのDX」はまだまだこれからといった状況だ。

NTTデータ経営研究所によれば「攻めのDX」は、「顧客を中心としたステークホルダーや自社だけでなくエコシステムをも巻き込むテーマ」であり、単発のSaaS導入だけで実現するものではない。売上を伸ばす手段としてあげられるCRMやインサイドセールも、あくまで既存手段の効率化の延長線上であるため「守りのDX」とも言える。

出所:株式会社NTTデータ経営研究所
「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報
 

業界業種に関わらず、これから数年間で「攻めのDX」が本格化していく流れを日々感じている。その「攻めのDX」の一丁目一番地とも言えるのが商取引のマーケットプレイス化だ。一般的に議論されるDXの型は複数存在するが、その多くのものがマーケットプレイス型に区分/包含される。詳しくは弊社の投資家でもあるジェネシア・ベンチャーズの相良さんの記事が分かりやすい。

大手企業グループの既存商取引エコシステムは、現時点で既にアナログなマーケットプレイス群によって形成されている状態でもある。単純にそれらの商流がデジタル化/オンライン化していくというのは必然の流れだ。今後は新規事業としても、既存事業DXとしても、マーケットプレイス型プラットフォームの立ち上げを推進する大手企業が増えてくるだろう。

マーケットプレイスの基盤となる「SaaS」

そのような状況のなかで、ROUTE06ではあらゆる産業のマーケットプレイス化を促進することで、新たに数兆円単位のGMV及びGDPの創出に貢献したいと考えている。その実現のために第一歩として、来年度に自社プロダクトとして新しいSaaSをリリース予定だ。内容的にはPlatform as a Serviceと表現する方が適切かもしれない。

自社プロダクトに関しては創業前からリリースすることは決めていた。足元の業務を優先させた結果、少し予定よりも後ろ倒しになってしまったが、これまでの2年間で得た実績/知見/ソフトウェアなどの資産を活かし、ようやく本格的に着手できる状況になってきた。

そのプロダクトとは、toC/toBに関わらず、あらゆる産業でのマーケットプレイスの垂直立ち上げを可能にするエンタープライズ特化の「SaaS」である。具体的なプロダクトの内容については改めて紹介したいのだが、マーケットプレイス立ち上げに必要なデータ基盤やAPI群を有するプロダクトであり、現時点でも一部ソフトウェアサービスとして提供している。

現在は小売業、総合商社、製造業などの日系の大手企業を中心にサービス提供をしているが、不動産、物流、金融、その他サービス業においても実績/事例を公表できる日もそう遠くないだろう。新しい自社「SaaS」をフックに、そのスピードを加速させていきたい。

マーケットプレイスの立ち上げ対象となる業界(一部)

前述のServiceNowやOutSystemsのようにエンタープライズ特化の「SaaS」であるため、当面は自社のプロフェッショナルサービスとの組み合わせにより、マーケットプレイス型の事業をより素早く、柔軟に立ち上げられる体制を強化していく方針だ。

事業のKSFや優先順位などは各社・各業界で異なり、現在も顧客企業とディスカッションしながら、機能の強化/改善に濃淡をつけている状況だ。UIはフルスクラッチでデザイン及び実装が前提になるし、プロダクトに合わせた業務設計なども求められるため、プロフェッショナルサービスの質もその事業の成否に大きく影響することにもなる。

プロフェッショナルサービスとエンタープライズSaaSのバランスについては諸説あるが、あくまで顧客企業のマーケットプレイス型事業の垂直立ち上げのためにベストなサービス提供を目指したい。前述の通りDXのプロジェクトでは、どんな正論や権威でも、どれだけ予算があったとしても、解決しない問題がたくさんある。あくまで顧客企業の事業のトップラインを伸ばすために、我々のできる最善を尽くしたいと考えている。

産業DXの「プラットフォーム企業」を目指して

ROUTE06は「リアルとデジタルが滑らかにつながる社会をつくる」をミッションとして掲げ、次世代のシステムインテグレータとなるべく創業した会社である。次のステージでは、この2年で培ってきた知見や資産をさらに進化させ、あらゆる産業のデジタルマーケットプレイス化を実現する「プラットフォーム企業」を目指す。

海外では類似の領域にチャレンジしているソフトウェア企業が出始めているが、国内でエンタープライズ特化のSaaS/PaaSを開発・運用しているスタートアップはまだまだ少ない。エンタープライズ領域では、プロダクトの開発も運用も、セールス&マーケティングも一筋縄ではいかない。相応のセキュリティレベルや安定性も求められるし、B2Bサービスの場合は多言語化やグローバル対応も当然に必要になるなど、総じて難易度は高い。

ただその分、成し遂げたときに世の中に与えるインパクトは大きい。例えば産業材の領域では一回の取引規模が大きい一方で(数千万単位から億単位まで)、未だにメールや電話などで図面やカタログをやり取りしているケースが大半であり、それがデジタルマーケットプレイス化されるだけでも相当な効果が期待できる。

この高い山を登り切り、マーケットプレイス及び周辺領域での事業立ち上げを通して数兆円単位の商取引を支える「プラットフォーム企業」を目指していきたい。また自社を海外エンタープライズSaaS企業のように$10B以上の時価総額で評価してもらえるように成長し続けることで、新しい富の創出と再配分を実現したいと考えている。

そのため、来年度もやることが山積みの状態である。エンジニア、デザイナー、PdM、BizDevなどの職種に限らず、コーポレートも全方位で仲間を募集しているし、CFOをはじめとしたCxOクラスも増やしていきたい。また会社としては黒字であるものの、自社プロダクトの開発や人材採用・育成に全力で投資していきたいと考えている。年明けから資金調達にも動く予定だ。

ROUTE06に関心のある方々へ

  1. 弊社で働くことに関心のある方々(特にエンタープライズSaaSの開発に興味がある方)

  2. 弊社のサービス/プロダクトに関心のある大手企業の方々

  3. 次回ラウンドでの弊社への投資に関心のあるベンチャーキャピタルの方々

  4. 弊社との情報交換や協業などに関心のある企業の方々

お気軽にお問い合わせください。ROUTE06の周辺では他にはない事業機会が溢れています。一緒に新しい産業創造にチャレンジしていきましょう。


補足)
前述のエンタープライズSaaSの開発については、取締役の小西がプロダクトオーナーとしてリードしてくれている。シリアルアントレプレナーであり、デザイナーであり、エンジニアリングもわかるPOと一緒にエンタープライズど真ん中のプロダクトを作り上げるチャレンジは間違いなく面白いと思う。


その他参考記事)


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遠藤 崇史 / Takafumi Endo
CEO@ROUTE06(ルートシックス)。経歴:日本政策投資銀行、ドリームインキュベータ、スマービー(Founder&CEO, acquired by stripe-intl)、ストライプデパートメント(取締役 CPO&CMO)、デライトベンチャーズ(EIR) 。東北大院卒。