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映画分析ノック⑦『デーヴ』(1993)

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『デーヴ』構成表

○ホワイトハウス・前   【起】
上空からヘリが着陸。
取り囲む報道陣。
降りてくる大統領と夫人。
手を繋ぎながら、報道陣に笑顔。

○ホワイトハウス・廊下
報道陣から見えなくなった瞬間に、大統領と夫人は手を離し、一切目を合わせないで別れる。
広報官のボブとアラン、大統領にスケジュールを伝える。
大統領、替え玉探しの進捗を尋ねる。順調だと答える側近。
大統領と秘書の女、目を合わせ意味深な雰囲気。

○カーショップ・外
車のPRイベント会場。
豚に跨った主人公・デーヴが大統領として登場。
偽物だと分かっている観客、拍手喝采。
車のPRをする。
そこへ大統領のボディーガード・スティーヴが観に来る。
「(似てる…)」と。

○ホワイトハウス・会議室
予算会議。
大統領、保育園や給食、ホームレス問題への予算を潰したいと話す。
困っている閣僚たち。
このホームレス問題は、夫人の意見もあると言う。
嫌な顔をする大統領。

○派遣会社・外観
街の小さな派遣事務所。
自転車でご機嫌に入ってくるデーヴ。

○派遣会社・中
事務の女性に、イベントが好評だったと話すデーヴ。
その派遣会社には、あまり働くことに向いていなさそうな人が集まっており…。
各々問題を抱えてすぐ辞めてしまっていた。
そのうちの1人、中年女性がデーヴに泣きつく。

○会計事務所・中
デーヴ、友人の会計士・マーリーに、中年女性を雇うように説得する。
渋るマーリーだったが、デーヴに押し切られ雇うことにする。

○デーヴ宅・外〜中
デーヴ、自転車で颯爽と帰宅し、中に入る。
と、そこには政府関係者であるスティーヴらがいる。
大統領の替え玉を探している、と話すスティーヴ。
笑顔になるデーヴ。

○演説会場・外(夜)
議員や報道陣、関係者が多数。

○演説会場・控室(夜)
デーヴ、髪を切って整えている。
理髪師もお墨付きのそっくり具合。
そこへやってくる広報官のボブ、デーヴに「手を振るだけ」と念押し。
デーヴは物足りなさそう。

○演説会場・ホール(夜)
大統領が登場。湧く会場。
饒舌に演説する大統領。
だがプロンプターがある。
その文章を話しているだけなのだ。
(以下、控室とカットバック)
×   ×   ×
控室。
モニター越しに大統領の演説を見ているデーヴ。
ソワソワと落ち着かない。
×   ×   ×
ホール。
大統領のアツい演説に会場がスタンディングオベーション。
×   ×   ×
控室。
ウォーミングアップするデーヴ。
怪訝な顔で見ているスティーヴ。
×   ×   ×
廊下。
会場を後にする大統領。
×   ×   ×
控室。
デーヴのところに大統領がやってくる。
大統領、デーヴのソックリ具合に唖然。
デーヴ、大統領の代わりに、出てゆく。

○演説会場・点描(夜)
デーヴ、関係者たちを引き連れて歩く。
なんだか落ち着かない。

○演説会場・エントランス(夜)
出口に向かう長い道。
両脇にはホールにいた観衆が拍手で見送っている。
デーヴ、観衆に応えながら、道を歩く。
徐々に楽しくなってしまい、最後はパフォーマンス。
盛り上がる観衆。いらんことしやがって、と関係者ら。

○リムジン・車内(夜)
デーヴ、興奮冷めやらぬ様子。
冷めた目で見ているスティーヴ。
デーヴ「本物は何か重要な用事があるんだよね?」と確認。
答えないスティーヴ。

○ホワイトハウス・寝室(夜)
大統領、秘書の女と寝ている。
が、当然動かなくなって…。
×   ×   ×
出動する救急隊。
広報官・ボブとアランが話している。
大統領は植物状態になるようだ。
アラン、副大統領に連絡をしようとするが、ボブがそれを止める。
ボブは大統領の陰で主導権を握っていたのだ。
副大統領に連絡せず、ごまかし切ると言う。

○リムジン・車内(夜)
電話がかかってくる。
スティーヴ、唖然とした表情になって…。
「官邸に戻れ」と運転手に伝える。
Uターンするリムジン。

○地下通路(夜)
大統領、呼吸器をつけ担架で運ばれている。
後ろをついていくボブとアラン、メディアをごまかす打ち合わせしている。

○リムジン・車内(夜)
デーヴ、どこにいくか不安そうな表情。
ふと窓の外を見ると、ホワイトハウスが見える。
驚くデーヴ。

○ホワイトハウス・執務室(夜)   【承】
デーヴ、椅子に座っている。
ボブとアランが静かに恐喝するように話し始める。
テーヴ、調子に乗ったパフォーマンスを怒られると思っている。
が、ボブはそうじゃないと否定し、契約延長だと言う。
アラン、デーヴを大統領の椅子に座らせる。
状況を理解し、逃げ出そうとするデーヴだったが、説得されて…。

○ホワイトハウス・居住部(夜)
ボブとアランに案内されているデーヴ。
夫人の存在を気にするも、大統領と夫人は全く話をしない、と聞かされる。

○ホワイトハウス・寝室(夜)
案内し終えて去っていくボブとアラン。
豪華な寝室を探検するデーヴ。
まだ大統領(の替わり)になったという実感が湧かない…。

○ホワイトハウス・記者会見場
アラン、報道陣を前に、大統領の症状は軽度で執務能力は損なわれていない、と説明。

○ホワイトハウス・広報官の事務室
TVでキャスターが大統領の症状は軽度だと伝えている。
それを見ながら満足げなボブ。
一方、会見をしたアランは少し参っている。
ボブ「法律を破っても、気にするな」とアランを諭す。
ボブ、副大統領がアフリカ訪問をしている期間中にスキャンダルをあぶり出し、辞職に追い込むと言う。
その後デーヴに後任を(自分に)指名させる、と青写真を話す。

○ホワイトハウス・病室
デーヴ、主治医の診察を受けている。
主治医、あまりの回復に驚きを隠せない。

○ホワイトハウス・廊下
デーヴ、ボブとアランを従えて歩いている。
復帰後初の公務に向かうところのようだ。
ボブに顔と名前が一致したか尋ねられるデーヴ、大丈夫だと答える。
デーヴ、自信満々に部屋に入っていく。
次々と職員たちに挨拶。職員たちも全く大統領が偽物のデーヴだとは気が付かない。
大統領の秘書が熱烈アピールしてくる。
事情を知らないデーヴは戸惑う。
が、無事にバレずに済んだ。

○ホワイトハウス・執務室
ボブ、派遣会社に電話して「恋人ができ旅に出るから1ヶ月留守にする」と言えと指示する。
従うデーヴ、恐る恐る電話。
(適宜カットバック)
派遣会社の女性、寂しそうに祝福する。

○ニュース・点描
キャスター、大統領の全快を伝える。
主治医、むしろ健康になっていた!と話す。

○デーヴ・点描
(公務再開のニュースを伝えるキャスターの声に被せて)
議会について学ぶデーヴ。
議員のパネルを作り、顔と名前を覚えるデーヴ。
(キャスター、ニュースを締めくくる)

○ホワイトハウス・記者会見場
記者会見場を見学するデーヴ。
アランが大統領のクセをレクチャーしようとするが、それを遥かに凌駕するクオリティの物真似を披露するデーヴ。
呆気にとられるボブとアラン。
「(ものすごく似てる…)」と。

○ホワイトハウス・外/2階バルコニー
外に記者が集まっている。
バルコニーでは、デーヴがソワソワと緊張の面持ちで夫人を待っている。
夫人が来る。
挨拶しようとしたデーヴに、夫人「あっさり死ねばよかったのに」。
夫人は大統領と秘書の浮気にも気付いていた。
ギスギスする夫人とデーヴ。
そのままバルコニー(報道陣たちの前)へ
ニコニコと仲良さげに振舞う夫人。
デーヴは報道陣の質問に答える。
夫人、先に帰ってしまう。

○デーヴ・点描
大統領の公務をこなしていくデーヴ。
前向きで意欲的な大統領の姿に、周囲の人々は見直し始める。
(そこに重なるニュース・点描)
大統領がまるで別人だと評価する者、けなす者、様々で…。
それでも大統領になったデーヴの勢いは続いて。
×   ×   ×
大統領の活躍を伝えるニュースを見る夫人「…」となって。

○ホワイトハウス・バルコニー(夜)
夜風に当たるデーヴ。
と、隣の部屋の灯が気になり、窓から中を覗く。
そこには夫人がいて、読書中。
見ているデーヴ、気配に気付かれそうになって、逃げる。

○ホワイトハウス・調理場(朝)
サンドウィッチを自分で作っているデーヴ。
スティーヴに、夫人と大統領との関係悪化の理由を尋ねる。
が、答えないスティーヴ。
スティーヴは大統領のためなら銃弾に身を晒すと言うのだ。
それを聞いたデーヴ「じゃあ僕のためにも(死ねる)?」
スティーヴ「…」となって。

○ホワイトハウス・広報官の事務室
アラン、夫人とデーヴでホームレスの子の孤児院に訪問すると言う。
それを聞いていないボブ、ホームレス施策に反対する。
が、アランは夫人の要望も聞くべきだと言い、意見が対立。
しかし、副大統領を蹴落とす作戦については、いまだに共謀関係で。
アラン、副大統領に汚職を擦りつける作戦を話す。

○走るリムジン・車内
夫人、デーヴに「ホームレス問題に関心を示さなかったアナタがなぜ?」と尋ねる。
しらを切るデーヴ、夫人の足をチラ見。
夫人、その視線が気になって…。

○シェルター「救いの家」
夫妻が入ると、子供たちが歓迎する。
ホームレスの子供たちのシェルターなのだ。
デーヴ、子供たちのゲームの輪に混ざろうとしない少年を見つけ、話しかける。
そんなデーヴの姿を見る夫人、見直す。

○ホワイトハウス・執務室
ボブ、秘書から福祉法案の書類を受け取る。
勝手に大統領の名前で「法案拒否」にサインするボブ。

○ホワイトハウス・シャワールーム(夜)
歌いながらシャワーを浴びているデーヴ。
そこへ物凄い剣幕で入ってくる夫人。
夫人、デーヴに「福祉法案を拒否するなんて信じられない」と吐き捨てる。
心当たりのないデーヴ。
ボブとアランを呼び出す。

○ホワイトハウス・寝室(夜)
デーヴのもとにやってくるボブとアラン。
デーヴ、ボブに法案拒否の新聞を見せて、怒る。
ボブ、自分で6億5千万円捻り出して施設運営しろと言う。
言い返せないデーヴ。

○ホワイトハウス・門
友人の会計士・マーリーが車で入ってくる。
門番に「大統領に呼ばれた」と話す。

○ホワイトハウス・執務室
マーリー、大統領の部屋に驚きを隠せない。
デーヴ、6億5千万円の予算削減をするための助言を依頼する。
呆気に取られるマーリー。
デーヴ、マーリーのために好物のソーセージを注文。
渋々承諾するマーリー。
×   ×   ×
外はすっかり夜である。
ポテチを食いながら、予算案を見て考えているマーリーとデーヴ。
マーリーが提示した何かのアイディアに、デーヴは「僕がやってみる」と。

○ホワイトハウス・会議室
ボブ、始まる前の会議室にやってくる。
持っている新聞には「副大統領、汚職に関与か」の見出し。
ニヤリとするボブ(手を回したのはアラン)。
そこへデーヴがやってきて、閣僚たちも着席。会議が始まる。
デーヴ、唐突に会議の予定を変更して、まず予算についての議論を始める。
6億5千万円の予算削減を進めるデーヴ。
異論を唱えるボブだったが、デーヴは強気に押し切る。
×   ×   ×
各領域の閣僚と交渉し、なんとか予算を集め切った。
そのデーヴの姿に、会議室の全員が拍手を送る。ボブ以外。
会議が終わる。出ていく閣僚たち。
×   ×   ×
側近の1人、夫人に大統領がホームレスのための予算を捻出した!と伝える。
×   ×   ×
誰もいなくなった会議室。
そこにボブとアラン。
ボブ、怒り新党でデーヴを批判する。
しかし、アランは君が予算を捻出しろと彼に言ったんだ、とデーヴを擁護。
仲間割れとなる。

○ホワイトハウス・外(夕)
デーヴ、車で帰ろうとしているマーリーを見送っている。
感謝を伝えるデーヴに、マリーは「早くここから出ろ」と諭す。
曖昧に笑うデーヴ。

○ホワイトハウス・執務室(夜)
デーヴ、競馬のボードゲームで遊んでいる。
そこへ入ってくる夫人。
ホームレスの予算削減の件を称賛する。
同時に、大統領の経歴にない話をして、デーヴに鎌かける。
デーヴ、偽物であることがバレる。
夫人、デーヴに本物がどうなっているのか、事情を知りたいと言う。

○ホワイトハウス・秘密のエレベータ〜秘密の医務室(夜)
エレベーターに乗り込む夫人とデーヴ(スティーヴが案内)。
地下に到着すると、そこは厳重に警備された扉があって…。
開けると医務室があり、チューブに繋がれた大統領の姿が。
脳卒中であり、もう意識は戻らないであろうことが、夫人に伝えられる。
夫人、呆然として。

○ホワイトハウス・夫人の部屋(夜)
夫人、荷造りしている。
デーヴも、夫人を傷つけてしまったと、荷物をまとめていた。
夫人、静かに想い溢れて泣く。
ハンカチを差し出すデーヴ。

○ホワイトハウス・秘密の地下通路(夜)
狭い地下通路を歩くデーヴと夫人。
扉を開けると、そこはホワイトハウスの外に繋がっていた。
驚く夫人。

○走る車・車内(夜)
デーヴ、運転している。助手席に夫人。
デーヴ、いつ偽物だと分かったのか尋ねる。
夫人、リムジンの中でデーヴが足をチラ見した時だと答える。
と、走る車の後ろをパトカーが追いかけてくる。
サイレンが鳴る。車を止めるデーヴ。まずい…。

○街中(夜)
車を止め、警官と話すデーヴ。
左折禁止だったようだ。
車を下ろされるデーヴと夫人。
警官、もしや…⁉︎と気付く。
それを察知したデーヴ、とっさにモノマネ夫婦だと話す。
モノマネっぽくネタを披露。それに乗っかる夫人。
周りの人々からの拍手が起きて、警官は違反を多めに見てくれた。
無事、ことなきを得る2人。
×   ×   ×
夜の公園にシートを敷いて座るデーヴ。
サンドウィッチの材料を買って、手作りしたサンドウィッチを夫人に振舞うデーヴ。
デーヴ、普段は派遣会社の事務員をしていると話す。
夫人、大統領より立派な仕事だと言う。
デーヴ、大統領の仕事としてホームレスの人たちを救えたのは興奮した、と語る。
しかし「いつまでも騙し通せるわけではない」と…。

○ホワイトハウス・門の外(夜)
車で門まで入ってくるデーヴと夫人。
門番、驚く。

○ホワイトハウス・廊下(夜)
互いを称賛しあって別れるデーヴと夫人。

○ホワイトハウス・執務室      【転】
憤慨した様子のボブが、早足でデーヴの執務室へやってくる。
デーヴ、勝手に報道陣を読んで記者会見を開くことにしたようだ。
怒るボブに、デーヴはクビを伝える。
ボブ、お前がクビだと応戦するが、それならば真実を話すと言われ、ぐぬぬとなる。
そこへ夫人がやってきて、すでに記者が集まっていることを伝える。

○ホワイトハウス・記者会見場
記者たちが集まっている。
デーヴ、登壇する。
・ボブをクビにしたこと
・前失業者に雇用を約束する完全雇用政策を進めること
の2つを発表する。
記者たち、どよめきながらも好反応だ。

○ニュース・点描
専門家たちが完全雇用政策について意見している。
賛成・反対・懐疑・称賛…様々である。

○ホワイトハウス・夫人の部屋(夜)
夫人、どうやら誰かを想ってしまい眠れないようだ。

○ホワイトハウス・執務室
秘書、デーヴに副大統領のナンスが来ていると話す。
部屋に入ると、ナンスがアフリカ諸国からの土産品を持って来ていた。
ナンス、デーヴに汚職などしていないと抗議。
それを知ったデーヴ、私に任せて、と諭す。
×   ×   ×
アランとデーヴの2人。
アラン、ボブに言われて仕方なく副大統領に汚職をなすりつけたと話す。

○どこかの記者会見場
ボブ、報道陣に囲まれて記者会見に望む。
実は副大統領だけでなく、大統領も汚職に関わっていた!と告発するボブ。
どよめく会場。

○ホワイトハウス・執務室
その会見の様子を見るデーヴ、夫人、アラン。
デーヴ、今度は大統領にまで…と呆れるが、アランがそれを否定。
本物の大統領が汚職をしていたのは事実なのだった。

○走るリムジン・車内
乗っているデーヴ、夫人、アラン。
向かう先には、無数の報道陣と人だかり。
アランは外に出るべきでない!と言うが、デーヴは隠れても無駄だと話す。
デーヴ、外に出ると、多くの人に詰め寄られる。

○どこかの会議室
デーヴ、閣僚たちと議論している。
汚職はなんとかかわせても、新制作をこのまま押し進めるのは…と批判も。
それでも決意が変わらない様子のデーヴ。

○ホワイトハウス・居住スペース(夜)
デーヴの元に副大統領がやって来る。
副大統領、デーヴの新政策は素晴らしいと言う。
座って話をするデーヴと副大統領。
副大統領は、自分が政治家になった経緯を語る。
(靴屋に勤めてた時に妻の後押しをうけ、昼休みに歯医者に行くと嘘をついて立候補登録に行った)
デーヴ、その背景に感心する。

○ホワイトハウス・バルコニー(夜)
デーヴと夫人が夜空を眺めている。
デーヴ、副大統領は良い人だ、と話す。
同意する夫人、離れたくない、とデーヴに伝える。
夜は更けていく。

○ニュース番組
キャスター、大統領が上院と下院を召集して汚職事件に関する説明を行うと発表した、と伝える。

○ホワイトハウス・大会議室・裏手
準備をしているデーヴ。
落ち着かない様子のアラン。
デーヴ、アランを落ち着かせる。

○ボブの家・中
ボブが自身の後援会のメンバーとともに釈明会見の中継を楽しみに見ている。
メンバーが持っているボードには『ボブを大統領に』の文字。

○ホワイトハウス・大会議室
集まっている大勢の議員たち。着席する。
緊張の面持ちで入場するデーヴ。
デーヴ、汚職事件に関して事実だと認めて謝罪。
しかし、この汚職事件はボブが発起人であり、副大統領は無実だと逆告発。
どよめく会場。

○ボブの家・中
ボブ、呆然。
後援会のメンバーが帰っていく。

○ホワイトハウス・大会議室
デーヴ、国民に雇われている身である大統領が契約不履行で申し訳ない、と謝罪。
本来の大統領のあるべき姿を語る。
その途中、デーヴは言葉が詰まり、そして気を失って倒れてしまう。
騒然となる議会。救急車を呼べ!と叫ぶスティーヴ。

○ホワイトハウス・外(夕)
運ばれるデーヴ。
救急車に乗せられる。

○大病院・前       【結】
担架が救急車から病院内部へと運ばれていく。
報道陣、その担架を追って揉みくちゃになっている。
スティーヴ、担架を見送って、救急車の運転席に戻る。
…と、そこにいたのは、救急隊員の変装をしたデーヴだった!
デーヴ、スティーヴと握手を交わす。
スティーヴ、デーブに「君のためなら死ねる」と言う。
車を降りて、帰っていくデーヴ。
夫人も現場に到着し、デーヴの背中を遠くから見送る。

○ニュース・点描
発作が非常に重いというニュース。
×   ×   ×
意識不明から5ヶ月、大統領の死を伝えるニュース。
×   ×   ×
副大統領・ナンスが、新大統領になったニュース。
×   ×   ×
ボブが起訴されたニュース。
×   ×   ×
前大統領の完全雇用法案が可決されたニュース。

○派遣会社・中
派遣会社にいるデーヴ。
雇用がままならなかった人々が働いている様子。
そこへやって来る夫人。デーヴを訪ねて来たのだ。
デーヴはなんと政治家に立候補したようだ。
デーヴ、個室のオフィスに入り、夫人とアツいキスを交わす。
その個室のドアの前に、スティーヴが立って…。



映画『デーヴ』分析

▽主人公は誰で、どこから登場しているか
大統領にそっくりな派遣会社事務員・デーヴ。

1シーン目で、大統領本人が登場し、
2シーン目で、車のPRイベント会場に大統領のモノマネとして主人公・デーヴが登場。

大統領が「替え玉」を探している、という情報を振った上で、
いかにも大統領が出演しなさそうなPRイベントに偽物として主人公が登場する。
👉替え玉なんだ!と分かる。

▽二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
大統領の夫人。
1シーン目で、大統領と手を繋ぎながら和やかに登場し、ホワイトハウスに入った途端にスッと別れる。
・大統領の夫人であること
・大統領とは険悪な冷戦状態であること
が1発目で分かる。
👉意外性のパンチ/ドラマの予感 で1発目から惹きつけられる。

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▽主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
大統領の替え玉として臨時で呼ばれたデーヴだったが、
秘書と寝ていた大統領が倒れたことにより、リムジンを引き返してホワイトハウスへ。
ボブとアランに説得されて、大統領の代わりを務めることになったシーン。

その物語は…
大統領にそっくりな普通のサラリーマンが、病に倒れた大統領の代わりに大統領となり、ドタバタしつつも政治を正しく導いていく物語。

👉大統領になってからをメインで描くため、大統領になるまでは10分くらいでスムーズに描かれる。


▽物語が大きく転換しているのはどこか
要職をクビにされたボブが記者会見を開き、実は副大統領だけでなく大統領も汚職に関わっていた!と告発するシーン。

これを機にデーヴは、
・大統領(本物の大統領)の過ちを国民に説明し謝罪すること
・謀反を起こしたボブに仕返しすること
・無実の副大統領ナンスを守ること
・バレないように普通のサラリーマンに戻ること
を求められる。
👉クライマックスに向かって「障壁が多く&大きく」なっていく。

▽クライマックスはどこか
デーヴが上院下院を集めて、国民に汚職事件の全貌を説明するシーン。
・自分の過ちを謝罪
・全てはボブの陰謀であることを逆告発
・副大統領のナンスは無実だと擁護
・あるべき大統領の姿を語る
・演説中に倒れる(入れ替わるための演技)

悪役であるボブに対して勧善懲悪の展開。
👉視聴者はスカッとする!

あるべき大統領の姿を語る展開。
👉この作品のテーマであり、主人公デーヴの成長が見えるシーンでもある。

倒れるデーヴ
👉この後どうなってしまうんだ⁉︎⁉︎、とまだまだ視聴者を惹きつける!困らせまくる!最後の最後まで困らせる!

▽主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
大統領の替え玉に抜擢されることで…
・絶対に自分が偽物であることが周囲にバレてはいけない…。
・名前や仕事を覚えなくてはならない
・夫人にめちゃくちゃ嫌われている
・ホームレスの施設を作るために6億5千万円を捻出しなくてはならない
・副大統領を救い、ボブを懲らしめなくてはならない
・気付かれないように、元の一般サラリーマンに戻らなくてはならない

デーヴが大統領になってからは、
①公務に慣れるまでのドタバタ(イントロ)
②夫人との軋轢(メイン)
③ホームレス問題(サブ1)
④副大統領問題(サブ2)
⑤元のサラリーマンに戻る(オチ)

という感覚で描かれている。

👉メインは「夫人とのラブロマンス」であり、そのキッカケとして「①ホームレス問題」と「②副大統領問題」の2つが順番に描かれている。


▽逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・デーヴの姿勢が議員やメディア、国民の反応をポジティブに変えていく
・険悪だった夫人との関係が、デーヴの人柄に触れて解消されていく
・それどころか夫人とイイ感じになる
・ホームレス施設の予算が集まる
・副大統領が良い人だということが分かる
・ボブが最終的に懲らしめられる
・デーヴが最終的に普通のサラリーマンに戻れる
・アランやスティーヴが、デーヴの味方になってゆく

👉次々と困難を与えることで困らせて、次々と困難を乗り越えさせることでホッとさせている。

▽起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起:大統領と夫人、マスコミ前にヘリで登場 〜 デーヴが替え玉として通路を歩き終えた一方、本物が倒れる!
承:説得されたデーヴ、本物の大統領に⁉︎ 〜 夫人と夜の街に繰り出し、打ち解けて帰ってくる
転:ボブをクビにして、完全雇用政策を発表 〜 国民への演説中に倒れるデーヴ
結:変装していたデーヴ、普通の人へ戻る 〜 夫人がデーヴの派遣会社を訪ねて、キスする。

▽三幕だとするとどこが分かれ目か
①:大統領と夫人、マスコミ前にヘリで登場 〜 デーヴが替え玉として通路を歩き終えた一方、本物が倒れる!
②:説得されたデーヴ、本物の大統領に⁉︎ 〜 夫人と夜の街に繰り出し、打ち解けて帰ってくる
③:ボブをクビにして、完全雇用政策を発表 〜 夫人がデーヴの派遣会社を訪ねて、キスする。

▽このストーリーを3行で言うとどうなるか
大統領にそっくりな派遣会社のサラリーマン・デーヴは、大統領が病に倒れたことをキッカケに替え玉として大統領にさせされてしまう。
戸惑うデーヴだったが、ホームレス施設の予算を捻出したり、副大統領の無実を証明したりと、前向きに政治を動かしてゆく。
そんなデーヴの姿が、周りの議員や国民、そして大統領と冷戦状態だった夫人の心を動かしていく物語。

▽このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか
・報道陣の前に現れた大統領と夫人は、裏では冷戦状態であった。
・派遣会社のサラリーマン・デーヴは大統領に瓜二つで、よく大統領のモノマネをしている陽気な男。
・ある日、広報官にスカウトされたデーヴは、大統領の替え玉となって国会の廊下を歩く。
・替え玉は臨時の役目だったのだが、大統領が病に倒れたことから、デーヴはそのまま大統領の代わりを務めることに。
・戸惑いながらも公務にあたるデーヴだったが、夫人は大統領を死ぬほど嫌っており、デーヴにも辛く当たる。
・デーヴ、夫人と共にホームレス施設を視察し、ホームレスの子供たちの現状に心を痛める。
・しかし、広報官ボブが勝手にホームレス施設の予算を棄却し、それを大統領の行いだと思った夫人はデーヴにブチ切れ。
・ボブに自分で予算を作れと言われたデーヴは、会計士の友人マーリーの協力の元、予算を捻り出すことに成功。
・デーヴを見直した夫人は、デーヴが偽物であることに気付き、実際の大統領が重篤であることを知る。
・傷心した夫人と共に、デーヴは夜の街にドライブで繰り出し、お互いのことを語り合う中でやるべきことを再確認する。
・デーヴ、記者会見を開き、広報官のボブをクビにしたこと、完全雇用政策を実施することを発表。
・憤慨したボブは副大統領に汚職を擦りつけ、さらにその責任を大統領に着せた。
・副大統領ナンスと語り合ったデーヴは、副大統領は無実であること、そして汚職はボブの陰謀であることを国会で証明する。
・大統領のあるべき姿を語る演説の最中、デーヴは気を失って倒れ、救急車で運ばれる。
・その救急車の隊員に変装していたデーヴ、うまく本物の大統領と入れ替わることに成功し、普通のサラリーマンに戻ってゆく。
・数ヶ月後、夫人はデーヴを訪ねて派遣会社を訪問すると、そこには雇用された沢山の人々。デーヴと夫人、キスをする。



面白いと感じたポイント


□セリフ

○広報官らがデーヴに、大統領の替え玉になるよう説得しているシーン。

デーヴ「それ(替え玉)って法律違反じゃ?」
広報官「君は誰もいない道で信号無視をしたことはある?」
デーヴ「…」
広報官「例えば重病な母を乗せて病院へ急いでいたら?」
デーヴ「するかもね」
広報官「今アメリカ全体が車の中にある」
デーヴ「車の中?」
広報官「そう、車の中」
デーヴ「分かりやすい」
広報官「国は重病だ」
広報官「病院へ急げ」
デーヴ「…(納得せざるを得ない空気)」

👉屁理屈で説き伏せるやりとりは面白い。
面白いセリフは基本的に「たとえ話」を多く使っている!

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○デーヴが、台所で側近のスティーヴにサンドウィッチを振舞うシーン。
デーヴ「君は大統領のためなら銃弾にも身を晒す?」
スティーヴ「そのつもりだ」
デーヴ「じゃあ、僕の代わりにも?」
スティーヴ「……」

→ここからラストシーンへ。デーヴの人柄を好きになったスティーヴが、
スティーヴ「君のためなら死ねる」

👉セリフの伏線。
投げかけた問いに上手く答えられないシーンを作り、
その問いにラストで答えることで「変化/成長」を描ける!

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□キャラクター(面白かったキャラクターの特徴は?)

広報官・ボブ:
・ひたすら悪役である。
・一度落とされただけでは怯まず、必ず復讐をしてきて、主人公を窮地に追いやる。
・最後は必ず勧善懲悪で負ける(視聴者スッキリ!)

広報官・アラン:
・最初はボブとタッグで悪役だったが、良心の呵責があった。
・デーヴの実直さに触れて、ボブとの悪い行いに嫌気がさす。
・悪役から味方に回る「葛藤」が短時間でしっかり描かれており、サブキャラだけどキャラ立ちしてる。

会計士・マーリー:
・消極的でリスクを嫌う性格である。
・だがこういうキャラに限って、陽気な主人公に振り回されて、断れずに渋々巻き込まれていくのだ。
・陽気なデーヴの頼みに巻き込まれて、ネガティブながらも協力させられるキャラは憎めなくて面白い。


□ストーリー/構成

困難1→解決→困難2→解決→困難3→解決…
…というように、必ず1つの困難を解決してから、次の困難がぶつかる、わかりやすい構成になっている!
→困難が解決されるたびに、人間関係が動き、その動いた関係が新たな困難を作る。
👉「困難」と「解決」の順序は分かりやすいが、それが「因果関係で繋がっていくこと」が面白さの条件!

※言葉を変えれば「こっちが立てば、あっちが立たず」
👉「こっちが立ったからこそ、あっちが立たなくなってしまう」という因果関係で繋がって、連鎖していく困難。

水面下でボブの陰謀がある、という構成
→主人公であるデーヴが「バレない」という枷を持っているが、そんな主人公にも知らない「陰謀」の存在がある
👉裏で何かを動かすと「視聴者だけが知っている」という状態が増えて、そのぶん面白さが増す。


□シーン

冒頭、にこやかに手を繋いで報道陣の前に現れた大統領夫妻が、次のシーン(裏)では冷戦状態。
👉掴みが完璧「パンチのある意外性」「ドラマの予感」がある掴みが面白い。

運転していると警官のパトカーに交通違反を切られるシーン。
→このままでは大統領と夫人であることがバレてしまう…!とハラハラドキドキさせる。
👉「なりすましもの」には、必ず「バレそうになる」瞬間が必要!

クライマックス、演説中に倒れたデーヴが搬送先の病院に担ぎ込まれると、その車両を運転している救急隊員に変装していた!
→デーヴは病に倒れている本物の大統領と再度入れ替わるために、演技で倒れて運ばれたのだ。
→本当にデーヴを心配している視聴者を(良い意味で)「裏切る」。その次に「なるほど!」と思わせる。
👉「裏切る」+「なるほど!」=「予想を上回るオチ」は、驚きと感動が同時に押し寄せる。

□小道具

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