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【英日対訳】米ブルームバーグ片沼記者による #ウーマノミクス の功罪に関するスレッド翻訳| Translation of @MarikaKatanuma's take on #Womanomics (2020.9.22)

はじめに

2020年9月22日、常日頃日本社会における女性の立場について記事を書いてきた米経済誌「ブルームバーグ」の 片沼麻里加記者が、個人の呟きとして「安倍政権下におけるウーマノミクス の功罪」を冷徹に評価するファクトをまとめたスレッドをツイッターの個人アカウントに英文で呟きました。

①メインのスレッド(9月作成)

→日本語化したメインスレッド

②スレッド中で参照されたサブスレッド(1月作成)

→日本語化したサブスレッド

このスレッド①はスレッドの中でもう一つの②サブスレッドに繋がる二部構成となっていました。片沼氏が一人のジャーナリストとして、重要なファクトを選択してまとめ、わかりやすく伝えるために構成されたこの素晴らしいスレッドを、この問題の最大のステイクホルダーである日本の女性たちに届けるべく、ご本人に事前の許諾をいただいた上で、この①②全てを少しずつツイート翻訳しました。翻訳作業は当初、手動翻訳で進めていましたが、工数の関係上、途中からDeepLを用いた翻訳校正を併用する形で進めました。

スレッド中の図表は日本語化されているものについてはそのまま流用させていただき、日本語版記事が既出である場合はその中の引用は原文ママとました。参照資料についても、日本語版を見つけることができたものについてはツイート内のリンクや外部参照を日本語版のそれと差し替えました。以上の対応についてはすべて片沼氏に事前にご了承いただいています。

以下は、これら翻訳スレッドをあらためてnote用に整理したものです。

本編①2020年9月のツイート

メインスレッド

→日本語化スレッド

イントロダクション

”安倍晋三前首相は,働く女性の数を増やそうとしました。実際にその数は増え,女性就業者人口は過去最高の3000万人に達し,労働力に占める割合は米国や欧州を超え71%に至りました。では安倍氏は「よりジェンダー平等な日本」を残したといえるのか。その判断はみなさんに委ねます。
以下スレッドです。”

スレッド本編

1/28 "安倍氏は,日本の縮小する労働人口への答を,労働者として扱われなかったり活躍の機会に恵まれなかったりする女性たちに見出しました。「アベノミクスはウーマノミクス」と宣言した安倍氏は,女性が仕事と家庭を両立できるよう,支援策を盛り込みこれを推進しました。”
2/28 "ジェンダー平等化を推進する安倍氏の幾つもの施策は女性に対する労働市場の開放に大いに貢献しました。8年近い任期中,労働力に占める女性の割合は全ての年齢層で10%以上増えました。”
3/28 "しかしながら,新たに労働力として加わった女性就業者の多くが得た仕事は,パートを含む低賃金の非正規雇用でした。第二次安倍内閣以降,新たに就業人口に加わった女性就業者330万人の内,実に66%が非正規雇用者でした。“
4/28 “19年時点では,パート雇用の男性就業者の割合が若干22.8%なのに比べ,女性就業者の割合は56%にも及びました。”
5/28 "女性の正規雇用者の割合を詳しく見てみましょう。若い年齢層の女性を正規に雇用することが若干増えているのに対して,より高い年齢層の女性を非正規で雇用することが増えているのがわかります。”
6/28 "これは05年から18年の間に他の先進国で見られたものとは真逆の傾向です。”
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7/28 "しかも,非正規雇用の女性は,正規雇用の女性や男性よりも収入が少なくなります。”
8/28”より詳しく見てみます。非正規雇用女性の44%が年100万以下の収入しか得られないのに対して,正規雇用女性ではわずか4.1%にとどまります。”
9/28 "前出のチャートに非正規・正規雇用男性を加えるとこうなります。日本の男女間の収入格差はOECD諸国の中では韓国に次いで2番目に大きく,女性の収入は男性の74.3%に留まっています。この格差は安倍政権下では3.4ポイントしか縮まっていません(12年時点で70.9%)。"
10/28 "日本では男性は生涯を通じて賃金が上昇し続け,50~60代でピークを迎えます。女性は業種にかかわらず同じ賃金の成長を享受できません。(IT分野で65~70代の女性の収入が急増しているのは興味深い傾向ですが…!)”
11/28 ”パートタイムで働くというということは,福利厚生や雇用の安定性,昇進の機会が失われるということでもあり,新型コロナが引き起こしたパンデミックはこの脆さを浮き彫りにしました。” 

[関連記事]※日本語版記事

12/28 "[今年] 4月の非正規雇用者の離職者数は97万人でしたが,女性が7割以上を占め,2012年以来初めて,女性就業者数の減少が見られました。”
13/28 "さらに心配なのは,ジェンダー不平等と新型コロナ不況の両方の影響が相まって、例年よりも多くの女性が自殺により亡くなるかもしれないことです。[今年] 8月には,女性の自殺は19年の同月から40%も跳ね上がりました。これは,過去4年間の平均よりも23%も高い数値です。”
14/28 "このような苦境の中、なぜ多くの日本人女性がフルタイムではなく、将来性に乏しいパートの仕事を選んでいるのでしょうか?

いくつかの注目すべき理由を発見し,昨年この記事を書きました。明らかな要因が1つあります。"

[関連記事]※日本語版記事

15/28 "それは日本の労働契約の硬直性にあります。正規雇用と非正規雇用の中間に当たるものが存在せず,長時間の融通の利かない労働を余儀なくされることが,家事や育児におけるジェンダー不平等の原因により、男性よりも女性を直撃するものとなっているのです。”
16/28 "日本の妻は,夫の6倍の時間を育児や家事に費やしています。これはアメリカの割合の2倍に当たります。"
17/28 "週末でさえ,妻は夫よりも子供と一緒にいる時間が多いことがわかっています。(夫は一体どこに消えたのでしょう???) "
18/28 ご本人による訂正:’M’ curve became an 'L' curve.は正確にはMは女性の就業率全体、Lは女性の正社員雇用率を表しているため,二つは別物であり「M字カーブは解消しつつあるものの、L字カーブという正社員雇用率が20代後半から下がり続ける新たな問題提起がされています」とするのが正しい文でした。改めて訂正いたします。
19/28 "ここで大切なのは、仮にM字カーブが解消されたとしても,それが必ずしも女性の離職率を減らす訳ではないことを理解することです。18年にリクルートがまとめたデータによると,第一子出産時に離職したり長期間休職することになった働く母親(=ワーキングマザー)は全体の44.2%に及びます。”
20/28 "またワーキングマザーの中でも非正規雇用のワーキングマザーの離職率が高いことがわかっています。” ※"accounting for 64.1%"以降の文については片沼さん本人から以下留意事項がありますのでご参照ください。

※上記の「第一子妊娠判明時の雇用形態別、職種別の出産離職率」に関するツイート20/28では、離職率全体のうち非正規が占める割合なのか、非正規全体のうち離職した方の割合を指しているのかが不明瞭であるため,片沼氏ご自身の依頼により後半部分は翻訳をスキップさせていただきました。

21/28 "つまり、鍵はより多くの女性が正規雇用されるようにすることにある。では、安倍氏は女性の就業促進を本当に支援したと言えるのでしょうか?賛否は分かれますが少なくともそう努力はしました(それが女性のためか経済のためかは別として)。しかしその努力は、まだ実を結んだとは言えません。”
22/28 "「働き方」の柔軟性を高めることを目的に、安倍氏は仕事と家庭の両立を目指す母親を主な対象として、「限定正社員」という選択肢を設けました。しかし、昨年取材した多くの女性は正社員の場合と同じような仕事量に直面し、それが機能していないことに気が付かされました。"
23/28 ”保育園の待機児童解消も注目すべき改革の一つでした。安倍氏は当初の公約を守り17年までに40万人分の定員を追加で拡大しましたが,一方で需要も加速度的に増加しました。厚労省によると、2020年4月現在の待機児童は1万2,439人となっています。”
24/28 "ゴールドマン・サックスが19年に公表したその他ウーマノミクスKPI(主要実績評価指標)の評価では,「日本は女性リーダーの輩出に関する目標達成にはまだほど遠いが他の分野では前進している 」と指摘されました。詳細はこちら。"
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25/28 "オピニオンライターの @Noahpinion 氏のレポートによると,安倍氏が日本企業の間でジェンダーに関する情報開示を急進的に推し進めた結果,女性の雇用が奨励されたのは事実です。"
26/28 "安倍氏の判断の中で残念だったのは,税制や社会的疎外要因に取り組まないことを選択したことでした。下記の一連のツイートで説明したように,[日本の] 社会制度には,女性を低賃金の非正規雇用に「誘導」してきた歴史があるからです。”
27/28 "最後に…女性は(そして男性も)未だにその姓を巡る戦いを続けています。
28/28 "さて,安倍氏は本当にどのくらい,日本のジェンダー平等性を向上させたといえるのでしょうか?”
各種ソースへのリンク
OECD統計:https://www.oecd.org/els/soc/LMF_1_6_Gender_differences_in_employment_outcomes.pdf
日本の労働力統計:
https://www.stat.go.jp/data/roudou/2.html
日本の賃金構造統計:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html
家事関連時間:
https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou2.pdf
自殺者数:
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html
L字カーブ:
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/chuukan.pdf
リクルートのデータ:
https://www.works-i.com/column/teiten/detail011002.html

本編②2020年1月のツイート

サブスレッド

→日本語化スレッド

イントロダクション

1/10 ”[世界経済フォーラム(WEF)の]試算によると「日本女性の老後資金は平均寿命が尽きる20年前に枯渇する」そうです。その理由が知りたくて取材を重ねました。以下スレッドです。”
2/10 "一見すると,日本女性を取り巻く状況は好転しているように感じるかもしれません。他の先進国に比べて常に遅れていた女性の就業率の経済分野で,71%という過去最高の就業率を達成し,10年前の水準を11ポイントも上回るようになったのですから。”
3/10 "しかし,こうした利点があるなかでも,高齢化や,出生率の低下,時代錯誤的なジェンダーの取扱いなどの要因が複合的に作用して、快適な老後生活を送る見通しが失われようとしています。”
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4/10 "「年金に安心して依存できる時代」は終わりを迎えています。日本の年金制度はその資金不足もあってか,[OECD] 37カ国中31位という位置づけになっています。専門家によれば,企業年金も少しは役立つのですが,次の理由により,女性は投資する資金に乏しくなるそうです。”
5/10 "多くの女性が非正規雇用である。12年以降,新たに350万人の女性が就業しましたが,その3分の2を非正規雇用者が占めます。国際社会で女性の非正規雇用率が低下するなか,日本では真逆の傾向がみられ,「パートだけで老後資金をためるのは難しい」のが現状となっています。”
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6/10 "パート女性の4割以上(44.1%)の年収が100万円以下にとどまっています。労働政策研究・研修機構の周燕飛研究員の試算によると,「40歳からパートで仕事を再開した女性の生涯所得の差額は1~2億円に上る」といわれます。
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※紙面より補足で追加

7/10 "日本の社会保障制度や税金(控除)制度では,低所得の既婚女性には一定の優遇措置がとられます。多くの企業で,配偶者の所得が一定水準以下であるという前提で扶養手当を支給しています。しかし,これによって女性は仕事量を減らすことを余儀なくされます。”
8/ "[扶養手当について] 扶養の範囲内のある主婦の方は「老後の保障よりも今の生活費の足しだと考えている」と私に話してくれました。”
9/ "さらに何よりも,[先進国の中でも] 最悪といわれる日本のジェンダー平等性の問題があります。男女間の収入格差はほとんど全く改善されておらず,女性の収入は男性の73%にとどまっています。『職場で平等に扱われている』と感じる女性はわずか28.4%にとどまり,16年以降0.2%しか増えていません。"
10/ "[職場復帰後に]「新しい業務に手を挙げるのは難しい」二児の母である女性はこう語ります。女性の多くが,仕事における成長や昇進の機会を十分に認められず、底辺に押しやられていると感じています。また多くがフルタイムの仕事に就けないのは夫が家事を手伝わないからだと明かしました。”
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※紙面より補足で追加

"ここまで,非常に長くなってきてしまったので,残りの詳細は最新の記事を御覧ください。ここまでお読みいただきありがとうございました!”

※そうして今年1月に掲載された記事の紹介ツイートが以下になります。

今回は記事が掲載済みということもあり、この記事紹介ツイートの引用や図表部分については正確を期すため記事掲載のまま使わせていただきました。片沼氏の今年始めの評価(本サブスレッド)と安倍前首相退任後の評価スレッド(メインスレッド)での変化点にご注目ください。

以上、今年9月のメインスレッドの中で参照された、今年1月のサブレスレッドの全文翻訳でした。両スレッドを読まれた方に、片沼氏が実施した国際アンケートを日本語化して実施中です。是非多くの方がご参加いただけるよう広くご共有ください。ご精読ありがとうございました。

付録.片沼氏による日本語関連記事※時系列















noteをご覧くださりありがとうございます。基本的に「戦う」ためのnoteですが、私にとって何よりも大切な「戦い」は私たち夫婦のガンとの戦いです。皆さまのサポートが私たちの支えとなります。よろしくお願いいたします。