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ノベル集 #2 この世界に2人

舞衣、ちょっと目を閉じてくれる?と千紘が照れ臭そうに言った。

(3年目のクリスマスだからサプライズかな?)と少しだけ期待をして目を閉じる。

何かごそごそと音がして、左手に千紘がそっと触れた。

もう目を開けていいよ。
目を開けると、薬指にリング。それも明らかにドラマに出てくるようなエンゲージリング。

どうしたのこれ?と思わず言いそうになるけれど、ひとまず千紘が話す言葉を待ってみる。

舞衣、3年間ありがとう。って言ったら何だけど、これからもずっと一緒にいてください。えっと。。。結婚してください。

真っ赤になって千紘が言う。

舞衣自身は軽くパニックになっていた。

婚約ってこと?

と訳のわからないことを口走ってしまう。自分で婚約指輪意外に見えないでしょ。と心の中

突っ込みながら。

千紘は相変わらず、照れ笑いを浮かべて

プロポーズの予行演習だと思っておいて。

予行演習ってなに?と舞衣が吹き出すと

指輪そんなに高いものじゃないから。俺が就職したらね。もっといいものを渡したいから。

何言ってるの!もったいないくらい綺麗だよ。

と言いながら嬉しくて泣き出してしまい、その後の記憶があまりなかった。



千紘は研究のため、大学に残っているのであと数年私を待たせるのが申し訳なくて、奮発してくれたんだろうな。

とその夜、隣で眠る千紘を見ながら思った。

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出会いは7年前。高校に入学した時だった。

彼は中学からの内部進学生で、面倒見が良くクラスのリーダーのような存在だった。いつも周りに人がいて、キラキラしてる。
イケメンというだけならもちろん、他にも校内にはいるけれど、話してみるとなぜみんなが彼の周りに集まるのか、わかる気がした。

なんでも知っていて、それをひけらかす事がない。どんな相手でもいいところを見つけて、接してくれる。

実際彼の友達は、いわゆるパリピのようなタイプから、おとなしい世間では陰キャと言われるタイプまで幅広くて、彼を中心にして普通なら絶対に交わることのないタイプが仲良くしていた。

そんなところに舞衣は惹かれた。

ただ、問題点があった。当然彼女がいた。

それも中学から付き合っている同じ学校のクラスメイト。

意地悪言うと、彼が惚れ込むほどの美人というわけでもない。話してみると、不思議な女の子。という印象だった。

不思議ってズルい。と思う。

自分ははしっかりしなくてはならない家庭環境だったから。モラハラぎみの父親。それに反論しない母親。

母を守るために強くなろうと思っていた。弟妹と協力して父に対抗しようとした。

そんな強い私を表に出すと、きっと誰も近寄らなくなるから。。。

中学時代は精一杯愛想良くしていた。すると今度は男子の前だけ態度が違うと陰で呼ばれるようになった。

そしてそれは高校生になった今でも言われていることはわかっている。男子が好きなんじゃない。父親のせいで男性がちょっと怖い。だから精一杯愛想良くしてるだけ。

でも、愛想のいい表面上の私は千尋には通用しない気がした。

いつも笑っているけれど、心を見透かしてくるような千紘の目がたまらなく好きだった。
長期戦でいかなきゃ。と心に誓った16歳の春。

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千紘が少し離れた大学に進学することになり、受験の直前に彼女と別れたということは聞いていた。

だから、遠くに行ってしまう前に気持ちを伝えた。今度は絶対に自分のものにしたかった。

でも、千紘の答えははかばかしくなく

元カノを引きずっている状態で、舞衣と付き合うのは舞衣に申し訳ないから、という理由だった。

私、待ってるよ。と伝えた。

千紘は信じてるのかどうか曖昧な笑顔で答えてくれた。

それからも、友達としてこまめに連絡を取り合って、高校の同窓会をしようという話になった。

その帰り、千紘は 改めて俺と付き合ってください。と告白してくれた。

4年越しの恋が実った瞬間だった。

しばらく遠距離になっちゃうけどね。と千紘は申し訳なさそうに言うけど、そんなこと気にならなかった。

距離が離れてても心がつながっていれば大丈夫。

月に一度はお互いに行き来するようにしていた。

舞衣は長期休みになって実家にいるストレスをなくすため、千紘の部屋で年越しをするようになっていた。

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時々些細な喧嘩もしつつ、3年目。。。

千紘からのプロポーズ。

舞衣は自分の実家に頼ることができないから、結婚式やエンゲージリング、ウエディングドレスも興味がなかった。

と言うよりも本当は、一度くらい着てみたい。でも千紘に負担が大きくなることは避けたい。

千紘は言った。 俺は舞衣にドレスを着てほしいし、これから二人で生活すると、苦労もあるだろうから、一生に一度くらいお姫様になってほしい。

そうして自分達と、千紘の家族の協力もあって準備も進められている。

Two of us  

この世界に二人

おばあちゃんになっても、あなたのそばにいたい。
強そうに見えて、繊細な千紘の心を守ってあげたい。

私は両親とは違う。二人で幸せを作る。
7年かけてやっと掴んだものだから。


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