【書評】『競争力が持続する戦略 技術、イノベーション、知財、そして会計』

本日は最近読んだ本をご紹介します。

『競争力が持続する戦略 技術、イノベーション、知財、そして会計』
著者 安彦 元

『会計』、『技術』、『イノベーション』、『知財』を一気通貫した本はこの本以外はなかなかないと思います。また、マトリックス型のフレームワークを使い、それぞれの戦略を連結させて解説しているところもこの本の特徴です。

本全体の構成としては、会計の知識等についても触れられていますが、ここでは本書の中核をなしている技術経営(本書第2章)、イノベーション経営(本書第3章)、知財経営(本書第4章)の部分について取り上げます。

------<以下、概要>----------------------------

本書における技術経営の目的は、企業が持続的な競争優位力を持つこととしている。持続的な競争優位力を持つためには、「他者との差異を作り出す」ことが重要。
この「他者との差異を作り出す」ためには、MP(マーケティングポジショニング)とRC(経営資源の戦略的強み)が大きな要素となる。

MP(マーケティングポジショニング)は外部環境分析と内部環境分析によって、企業が顧客に提供する提供価値を定める。外部環境分析とは、顧客ニーズの調査に当たる。
内部環境分析とは、後述するRC(経営資源の戦略的強み)を元に自社の「強み」(コア・コンピテンス)を特定する分析となる。

RC(経営資源の戦略的強み)は提供するサービス、製品の「独自性」と「専有性」から成り立っている。このうち「独自性」についてはイノベーション経営戦略、「専有性」については知財経営戦略によってそれぞれ創出される。

イノベーション経営戦略では、まず提供価値を行うための必要技術を表出し、自社保有の知的財産がどれだけ充足できているかの棚卸を行う。これによって明確になった未調達の技術領域については、研究開発によって自社技術を増強することや他社が既に関連技術を保有していればアウトサイド・インのオープンイノベーションによって調達を行い、獲得していく。このプロセスを通ることによって「強みの差別化要素」が生まれ、RC(経営資源の戦略的強み)の「独自性」が創出される。

知財経営戦略では、イノベーション経営戦略で創出された「強みの差別化要素」(独自性)を形式知とすることで、「専有性」を創出していく。「専有性」を確保した「強みの差別化要素」については、「知的財産権」として公開するのか、または「秘匿化」して自社内でのみとするのか管理を行う。また将来的な事業戦略での提供価値に基づいて、知財ポートフォリオを構築していく。

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