「脱成長」文明への移行と、最近の「風の時代」ムーブメントに関して

あけましておめでとうございます。TKです。新年ということで、最近至るところで耳にする「風の時代」というムーブメントについて考えてみました。結論から言うと、このムーブメントが何かを「予見」しているわけではないと思いますが、環境危機に対する有用な「きっかけ」として活用していけばよいのではないかと思っています。

「風の時代ムーブメント」とは

元々の発端は、主に西洋占星術の考え方に基づいて、下記の星の配置が天体上で実現されることが、「時代の変わり目になるのではないか」と色々な界隈で話されていることです。

・木星と土星が接近(コンジャンクション)すること
・その接近が、「風の星座」とされる水瓶座の中で発生し、それが200年ぶりであること

西洋占星術の考え方では星座を4元素(火・地・風・水)に区切っており、その元素毎に意味するものが違います(下記引用参照)。上記の「コンジャンクション」は20年周期で起こる現象なのですが、それが「どの元素の星座」で起きたかが重要とされています。過去200年は主に「土」を象徴する星座(牡牛座・乙女座・山羊座)で起きていたものが、今後はしばらく「風」を象徴する星座(双子座・天秤座・水瓶座)で発生する為(下記図参照。引用)、「時代が移行するのではないか」と言われているようです。

〇 火:活動的・行動力・熱意
〇 地:安定感・基盤・経済活動・現実
〇 風:知的・理論・対話と交流
〇 水:感情的・心・共感力

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(「コンジャンクション」が発生する星座。
赤字が「火」、茶字が「土」、緑字が「風」)

占星術に関して

そもそも占星術とは紀元前のバビロニアで発祥した理論であり、元々は星の動きや配置を研究する天文学と不可分でした。一方、徐々に占星術は「人間の性格・運勢、国家の未来を占う」という目的の性質を強め、天文学は「科学的に宇宙を解明する」、という目的に変わりました。今回のムーブメントも、星の配置(=コンジャンクションが起きる星座)により今後の社会を予見するという流れになっています。

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天文学者でもある占星術師でもあったケプラー

次の時代の予見として言われていること

「風の時代」への移行による社会の変化として、巷で言われているのは、下記図のような変化です(これが全てでは当然ありません)。上述の通り、地のエレメントが持つ「安定感・基盤・経済活動・現実」といった要素が、風がもつ「知的・理論・対話と交流」といったものに移行し、それが「現代風に"解釈"」されて具体的な社会の変化につながると言われていることです。

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ここで大事だと思うのが、「風の時代に起こること」と言われていることは、既に社会的には事象として長い時間をかけて起こってきていることであるということです。つまり、占星術は何かを予見しているわけではなく、星の配置に付与されている「(抽象度の高い)意味合い」に、人々が「こうなってほしい」という解釈を付与していると言えると思います。今回「風の時代のムーブメント」が盛り上がっているのは、人々が「こうなってほしい」と願望することと、「風の時代」が持つエレメントが、内容的に非常にオーバーラップした為納得感を生み、大きな反響を呼んだのではないかと思います

このムーブメントに何を期待するか?

上記の通り、「風の時代」は、ある種人々が潜在的に思っていた方向性を、更に助長する「きっかけ」を与えているという構図なのではないかと思います。私としては、今地球規模で発生している地球環境や文明の危機に、この「きっかけ」をうまく使ったら良いのではないかと思います。

ジャレドダイアモンド:「文明崩壊」

「土の時代から風の時代へ」というメッセージをうまく使うとすると、私が最も有意義であると考えるのが、「土の時代」を文明や経済の基盤づくりや経済的な繁栄をもたらす時代だとして、一方で「風の時代」をその転換点とする文脈です。

ご案内の通りですが、過去200年は産業資本主義が発展し、指数関数的な経済成長を記録した期間です。この間に人々は文明を繁栄させた一方、地球の許容量以上に人間が地球に負荷を与え、地球の「プラネタリー・バウンダリー」を超えて活動を行ってます。これに対し、多くの場所でその問題が指摘され文明の転換が叫ばれている一方、なかなか日々の生活実感に結び付かず、行動変容が促されていないのが現状です。

この構図について考える度に、私の頭に浮かぶのが、カリフォルニア大学の教授であるジャレドダイアモンドの「文明崩壊」という本です。この本は、過去の世界史の中で勃興した様々な文明が、高度に繁栄しつつ「なぜ崩壊していったか」ということを分析しています。この中で引き合いに出されているのが、イースター島の事例です。モアイに象徴されるイースター島は、高度な文明が築かれた一方、同島内の民族闘争の為に、相手に対する強さの象徴であるモアイを作るために木を伐採していった結果、環境負荷と内部闘争で文明が崩壊しました。

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「風の時代」をうまく使えばいい

現代の地球文明が「十分に繁栄している」状態に近づきつつあるとすれば、その先にどのように「安定した繁栄状態」を作るのかが現代の文明に突き付けられた大きなテーマであると思います(こうした「脱成長」論は「人新世の資本論」等多くの場所で語られています)。一方、現代の経済の仕組みは無限成長を前提としたシステムであり、成長がないことを是としません。しかし、この変革はかつて様々な文明が失敗して崩壊したように、並大抵な変化ではないと思います。

「土の時代」は「成長や基盤づくり」とされており、一方で風の時代が合理性等を通じた「変革の時代」で、かつ今が200年ぶりの転換点だとすると、偶然かもしれないとは言え奇妙に一致しているこの事象を以て、「風の時代」を正当性としてこの変革の一助とすることは、意味があることなのではないかと思います。特に、行動変容を促す上で、ある種の精神性をベースとした論拠は、強い心理的な説得力を持つと思います。

結論

以上、今起きている「風の時代」ムーブメントの概要を私なりに分析した上で、一方でこの動きを現代が直面している最大の危機である環境・文明危機にうまく応用すれば良いのではないか、というのが今回の結論です。現代の環境問題には技術的・制度的・社会的な複合要因で対処していかないと思いますが、その根底にある人々のマインドを変えることは、非常に大きな要素であると思います。今回のムーブメントは、「スピリチュアリティ」と呼ばれる分野から発生したもので、それを忌避する人は多いと思いますが、このムーブメント全体が意味することに、より耳が傾けられて良いのではないかと思います。


画像出典

Amazon.co.jp
Wired.jp
Wikipedia






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